臨牀透析 34巻2号 (2018年2月)

特集 透析患者のリハビリテーション―訓練と支援

  • 文献概要を表示

透析患者は,高齢化や運動不足に加えて,尿毒症物質の蓄積,アシドーシス,炎症性サイトカインなどのためフレイル・PEW(protein energy wasting)をきたしやすい.運動耐容能の低下やフレイル・PEW は生活の質(QOL)や生命予後に大きな影響を与える.腎臓リハビリテーション(腎臓リハ)は,運動療法,食事療法と水分管理,薬物療法,教育,精神・心理的サポートなどを行う,長期にわたる包括的なプログラムであり,透析患者の筋量増加,栄養状態改善,QOL 向上や生命予後改善をもたらす.さらに,保存期慢性腎臓病(CKD)患者の腎機能を改善させ,透析導入を先延ばしできる可能性が高い.日本腎臓リハビリテーション学会が設立され,診療報酬にも収載された.今後の腎臓リハの普及・発展が期待される.

  • 文献概要を表示

長期透析患者では骨の脆弱性により少ない外力でも骨折を起こしやすく,なかでも大腿骨近位部骨折は,歩行機能の低下によりADL を著しく障害することが多い.透析患者では,術後も全身のアミロイドーシスの沈着に伴う骨癒合の遅延,細胞性免疫の低下による易感染性,易出血性などが問題となることも多く,術後1 年以内の死亡率は高率で,一般と比較して大腿骨近位部骨折の予後が決して良いわけではない.そのため,機能回復を目指すために,合併症のコントロールと同時に術後早期からの適切なリハビリテーションを行うことが重要となる.透析患者における大腿骨近位部骨折後のリハビリテーションについて,骨折予防も含めて概説する.

  • 文献概要を表示

脳卒中後のリハビリテーションにおいて,透析患者に関してもその基本的な内容に変わりはない.しかし,透析患者ならではの注意点,たとえば,透析前後の血圧管理,疲労の程度,訓練時間の調整,シャント保護などには十分注意する必要がある.また,脳卒中リハビリテーションと透析管理がともにできる施設は限られているため転院調整に難渋することがあり,在宅療養する際にも透析施設への通院手段に関して脳卒中後遺症に伴う移動能力低下を踏まえた調整が必要である.

4.心臓リハビリテーション 牧田 茂
  • 文献概要を表示

心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)は,患者教育や運動指導によって運動耐容能の向上や冠危険因子のコントロールを図り,長期的かつ包括的アプローチを実践するチーム医療である.透析患者は身体機能が低下していること,死因として心血管疾患が多いことが知られていることから,運動耐容能を上げ,冠危険因子を減らすことで予後とQOL を改善させることができる.ここに心臓リハビリ導入の重要性がある.本稿では透析患者のリハビリに心臓リハビリを適用する実際について述べる.

  • 文献概要を表示

呼吸器リハビリテーションは呼吸器疾患の進行および合併症の予防を目的とした多職種によってサポートされる包括的チームケアである.その目的は呼吸器症状を緩和し,ADL,QOL を改善し,自立した生活を再び送れるようにすることである.

  • 文献概要を表示

透析患者は末梢動脈疾患(PAD)の合併が多く,重症虚血肢(CLI)に至ると生命予後は不良である.予後改善にはPAD を早期に発見・診断し,治療することが重要である.フットケアはCLI の予防的アプローチとして必須である.足病変の有無とPAD の有無で患者を層別化し,介入間隔・ケア内容を決めて行ったフットケアプログラムは,新規の潰瘍発生を有意に抑制し,早期介入の意義が示唆された.透析患者のPAD に対する運動療法のエビデンスは少ないが,歩行運動の継続で,運動耐容能や認知機能の改善をみた.創傷を伴うCLI では,痛みのコントロールをはかり,適切な範囲での運動療法を行う.下肢切断を行った場合には,関節可動域を維持する訓練や筋力強化訓練を行う.

7.口腔リハビリテーション 田中 彰
  • 文献概要を表示

近年,不良な口腔衛生状態や口腔機能の廃用萎縮が,さまざまな全身合併症や摂食嚥下機能の悪化をもたらし,栄養状態や健康寿命の維持に大きな影響を与えることが判明している.低栄養傾向で,易感染性を有する透析患者にとって,良好な口腔衛生状態と安定した経口摂取を保持することは,QOL の向上と合併症予防に有益である.口腔リハビリテーションは,口腔ケアと口腔機能向上訓練により,口腔の機能と衛生状態を改善することから,栄養状態の改善と誤嚥性肺炎などの感染症対策として重要である.その実施に際しては,医師,看護師,言語聴覚士,管理栄養士,歯科医師,歯科衛生士,薬剤師などの多職種によるチームアプローチが必須である.

  • 文献概要を表示

平成24 年4 月より回復期リハビリテーション病棟での透析患者治療が認められてからさらに積極的なリハビリテーションが可能となった.回復期リハビリテーション病棟では,専門職種がチームを組んで(TDT モデル:相互乗り入れチームモデル),集中的なリハ医療(とくにADL 行為への働きかけを中心として)を実施して改善をはかり,家庭復帰を支援するものである.とりわけ,食事とトイレの自立支援は重要なポイントである.このために,頻回なカンファレンスを開催し,情報共有をはかりコミュニケーションを密とする.安全・安心のためのリスク管理も忘れてはならない.また,本来の疾病以外に廃用症候群をきたしていることも多い.

  • 文献概要を表示

透析患者の高齢化に伴い,筋肉量の減少に加え,筋力の低下や身体能力の低下がみられるサルコペニアが増加している.サルコペニアの予防や改善のために,リハビリテーションのニーズが高まっているが,リハビリテーション対象者は低栄養状態であることが多い.低栄養状態でのリハビリテーションは,筋肉量を減少させてしまい低栄養を助長させてしまう.そこで,個人に合った栄養管理を行うことで低栄養の予防や改善に繫がり,リハビリテーションの効果を上げ,ADL やQOL の向上が期待できる.

  • 文献概要を表示

近年,透析患者の高齢化は加速している.合併症や予期せぬ骨折,脳梗塞や脳出血などの疾患により回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)への入院を希望する透析患者は増加傾向にある.当院は福岡県南西部に透析センターと回復期リハ病床を有する数少ない病院の一つであり,当院が担うべき役割や期待は大きいと考えている.回復期リハ病棟の入院日数制限のなか,在宅復帰を目指しリハビリテーション訓練(以下,リハ訓練)を行っているが,透析日の疲労感や時間制限の観点からリハ訓練時間が制限されている現状が否めない.患者にとって必要な単位数のリハ訓練でADL を低下させずにQOL を保つことが,回復期リハ病棟へ入棟する目的であるが,期限内のリハ訓練を提供できたとしても加齢に伴う身体機能低下は止めることができない.他職種との情報共有や,本人・家族としっかりコミュニケーションをはかることで,退院後の生活についてのビジョンをもちながら,リハ訓練を継続し,在宅復帰ができるよう支援することが重要である.

  • 文献概要を表示

透析患者の高齢化に伴い,在宅療養のための多職種が関わった地域完結型医療が必要である.高齢透析患者では要支援・要介護患者が増加し,療養環境はさまざまである.在宅療養のためには地域包括ケアネットワークの整備が必要である.地域によっては,在宅Dr. ネットを結成し,患者の居住地域の主治医を決め,副主治医との連携で訪問診療や緊急対応を行っている.人生最終段階における医療として,意思決定プロセスに従った事前指示書の提出による患者の意思を尊重した医療を行う必要がある.

OPINION

  • 文献概要を表示

腎臓内科医師として透析治療の現場にはじめて身をおいたのは,1996 年の茨城県の病院勤務時代でした.だいぶ以前のことなので記憶が薄れていますが,「集団治療している」「とても太い針を刺されて痛そう,毎回は大変に違いない」と思ったことを印象的に覚えています.その後,中堅時代には東京や神奈川の大病院や多くのクリニックで透析治療の経験を重ねてきましたが,悪い意味での慣れも出てきてしまったような気がします.ベテランと呼ばれる年齢になった現在は,一人ひとりの患者と話をするとともに,若手医師やコメディカルを通じて患者をみることも多くなったような気がします.若い先生やコメディカルの人たちの様子を見ていると,透析治療中の患者の自宅での生活・家族のこと・将来の不安など,むしろ治療以外のことを当たり前のように話している光景を目にすることが多く,私の透析のイメージも治療から生活の一部へと変化してきました.

  • 文献概要を表示

X-12 年(59 歳)から2 型糖尿病の治療を開始し,X-8 年(63 歳)に糖尿病性腎症と診断された.X-2 年1 月15 日(69 歳),糖尿病性腎症による末期腎不全のため,非カフ型カテーテルを留置し血液透析を開始した.その後,バスキュラーアクセストラブルが頻回であり,自己血管,人工血管内シャント設置術を繰り返した.

  • 文献概要を表示

血液透析患者における死亡原因として,心不全,感染症に次いで,悪性腫瘍は第3 位を占める.悪性腫瘍のなかでも,腎癌は最多である1).腎癌に対しては手術や腎凍結療法が施行されているが,再発や転移例においては,薬物療法を選択することになる.腎癌に対する腎摘除術後の再発・転移性腎癌に対してテムシロリムス投与が有効であった症例を,画像とともに紹介する.

------------

目次

次号予告

編集後記

基本情報

cd34-2_coover.jpg
臨牀透析
34巻2号 (2018年2月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

文献閲覧数ランキング(
6月17日~6月23日
)