臨床雑誌内科 127巻6号 (2021年6月発行)

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特集　頭痛・めまい・しびれ・疼痛―慢性化のメカニズムと治療

特集のねらい城倉　健 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1192-1193

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　頭痛，めまい，しびれ，疼痛はいずれも実臨床できわめて多い症状なので，一般医家向けの臨床雑誌では，すでに何度も特集が組まれている．しかしながら，これまでの特集は，危険な原疾患を見逃さないことを念頭に置いた鑑別診断や，専門機関に送る前にとりあえずしておかなければいけない初期対応に的を絞ったものが多かった．

Overview：commonな症状が慢性化するメカニズムに迫る

脳神経内科医の立場から平田　幸一 , 小林　聡朗 , 五十嵐　晴紀 , 大垣　圭太郎 , 鈴木　圭輔 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1195-1199

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Summary

▪慢性片頭痛患者では中枢神経感作によりめまい，しびれ，疼痛などをきたす場合がある．

▪中枢神経感作の成立には種々の要因が絡んでいることが推察されている．

▪中枢神経感作により通常作動しない疼痛経路が活性化され，アロディニア（異痛症）を生じさせる可能性がある．

▪脳の過活動は三半規管を過剰に刺激し，めまいなどをきたすことも推察される．

脳神経外科医の立場から -疼痛の中枢性感作齋藤　洋一 , 栁澤　琢史 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1201-1204

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Summary

▪慢性疼痛は脳での疼痛認知障害（中枢性感作）である．

▪人工知能（AI）を使って脳情報を解読し，ニューロフィードバックすることで疼痛を制御できる．

▪ニューロフィードバックを継続することで，疼痛を治療できる可能性がある．

整形外科医の立場から山下　敏彦 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1205-1209

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Summary

▪腰痛など運動器の慢性疼痛の有病率は高い．

▪運動器疼痛は，メカニズムから侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に大別される．

▪侵害受容性疼痛は，組織の炎症，不安定性，筋緊張・虚血などにより慢性化する．

▪神経障害性疼痛の慢性化のメカニズムとして，末梢神経における異所性発火や交感神経の関与，脊髄後角における二次ニューロンの受容体活性化，一次ニューロンの終末発芽，グリア細胞の活性化などによる中枢性感作があげられる．

▪心理・社会的要因の関与や脳内鎮痛メカニズムの機能低下などにより，疼痛はさらに難治化する．

心療内科医の立場から中村　祐三 , 上野　孝之 , 柊　未聖 , 端詰　勝敬 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1211-1214

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Summary

▪commonな症状が慢性化している場合，抑うつ状態や過度の不安といった何らかの精神的な症状を伴っている場合が多い．

▪精神的な症状やストレスは中枢神経のグリア細胞に影響を与え，グリア細胞が炎症性サイトカインを放出することでcommonな症状がさらに強化される（中枢性感作）．

▪強化されたcommonな症状は薬物療法だけで対応しようとしても，精神的な症状やストレスが加重しているため症状を軽減しにくく，また薬物療法だけではポリファーマシーになりやすくなる．

▪慢性化したcommonな症状に対しては，患者の「実は体のどこかに異常があるかもしれない」という考えを完全否定せず，「体の何らかの異常に心の問題が上乗せされている」などと取り扱うことで，よい医師-患者関係の構築につながりやすくなる．

頭　痛　《頭痛の一般的病態と慢性化のメカニズム》

片頭痛柴田　護 , 南　和志 , 高橋　洵行 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1215-1220

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Summary

▪片頭痛は頭痛発作を繰り返す慢性神経疾患であり，典型的には中等症以上の頭痛が悪心や光過敏などとともに4～72時間続き，患者の日常生活と社会生活を障害する．

▪頭痛は三叉神経系の異常活性化が原因と考えられ，三叉神経一次ニューロンから放出されるカルシトニン遺伝子関連ペプチドが重要な役割を果たしている．

▪片頭痛では頭痛のみならず，気分変調や食欲の異常といった視床下部障害による症状や大脳皮質機能の異常により前兆とよばれる神経学的徴候が認められるため，中枢神経系の異常の関与も明白である．

▪片頭痛患者の一部は頭痛日数の増加を示し，月に15日以上頭痛を認める場合には慢性片頭痛とよばれる．

緊張型頭痛古和　久典 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1221-1227

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Summary

▪緊張型頭痛の有病率は約22％で，わが国に2,200万人の緊張型頭痛患者がいることを示している．その内訳は反復性緊張型頭痛が約20％，慢性緊張型頭痛が2％前後である．

▪反復性緊張型頭痛に比して慢性緊張型頭痛では，長期化，薬剤有効性の低下による難治化をきたしていることが示唆される．

▪慢性片頭痛と慢性緊張型頭痛との区別が容易ではないことが，慢性緊張型頭痛に関する病態研究の進展を困難にしている．

▪慢性緊張型頭痛では，その病態に末梢性と中枢性の機序が関与すると示唆されているが十分な解明にはいたっていない．

▪慢性緊張型頭痛に対して薬物療法と非薬物療法が試みられている．

薬物乱用頭痛海野　佳子 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1229-1233

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Summary

▪頭痛を治すために使用した薬剤によりかえって頭痛が起こる薬物乱用頭痛（MOH）は，一次性頭痛患者が急性期治療薬を頻回に使用した場合に起こることがある．

▪頭痛で専門外来を受診する患者のなかではまれではなく，MOHによる社会的損失は大きい．

▪MOHは単に心理的問題ではなく，痛みに関わる経路の機能的・器質的異常が背景にあると考えられている．

▪診断は国際頭痛分類（ICHD-3）に基づいて行い，患者に頭痛ダイアリーを記載させる必要がある．

▪治療は乱用薬物の中止と，もとの一次性頭痛への適切な治療を併せて行う．乱用薬物を中止できれば改善することが多いが，再発にも注意する．

▪そもそもMOHに陥らないよう，患者も医療者もMOHに関する正しい知識をもつことが肝要である．

頭　痛　《頭痛の治療》

一般的治療 -一次性頭痛の治療の進め方（片頭痛を中心に）間中　信也 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1235-1241

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Summary

▪片頭痛や緊張型頭痛の診断と治療は「国際頭痛分類第3版」と「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」に準拠して行う．ただし，ガイドラインはあくまで治療法を選択するための参考である．

▪薬物療法には急性期（頓挫）治療と予防療法がある．急性期治療の中核はトリプタン系薬であり，5種類10剤形があるので患者のニーズに合った薬剤を選択する．

▪服薬は片頭痛発作早期が効果的であり，ピーク以降に使用すると効果が劣る．

▪制吐薬は積極的に併用する．

▪トリプタン系薬や鎮痛薬の乱用（月10日以上，3ヵ月間）は乱用性頭痛を招くので避ける．

▪薬物療法に並んで片頭痛の誘因の回避や生活指導など非薬物的対処法も重要である．

片頭痛の特殊治療團野　大介 , 竹島　多賀夫 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1243-1245

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Summary

▪近年，片頭痛の特殊治療として非侵襲的ニューロモデュレーション治療の報告が増加している．

▪主なデバイスにはCEFALY^®，gammaCore^TM，sTMS mini^TMがある．いずれも小型充電式デバイスで片頭痛の急性期治療および予防療法として有効である．

▪重篤な有害事象は報告されておらず比較的安全である．

めまい　《めまいの一般的病態と慢性化のメカニズム》

一側末梢前庭障害北原　糺 , 山中　敏彰 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1249-1252

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Summary

▪一側内耳の前庭障害により生じた前庭系の左右不均衡は，中枢前庭系の神経可塑性，すなわち前庭代償によって是正される．

▪静的前庭代償の初期過程では，前庭神経核間の交連線維や前庭小脳により，健側前庭神経核ニューロンの自発発火が抑制され，左右の前庭神経核ニューロンの活動性の不均衡が是正される．

▪静的前庭代償の後期過程では，低下していた障害側前庭神経核ニューロンの自発発火が回復する．

▪動的前庭代償では，健側前庭神経核ニューロンからの交連線維を介した入力により，障害側前庭神経核ニューロンの回転刺激に対する反応性が回復する．

▪静的代償は速やかに完成されるが，動的代償が不十分な場合は平衡障害が慢性化する．

▪動的前庭代償には健側からの前庭入力が重要であるため，一側前庭障害患者はめまいの急性期を過ぎれば早期に離床し，前庭リハビリテーションを行うことが勧められる．

両側末梢前庭障害室伏　利久 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1253-1257

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Summary

▪両側末梢前庭障害は見逃されやすい．

▪症状と検査の両者により，閉眼で増悪する体平衡障害，両側前庭眼反射の低下・消失を確認することで診断することができる．

▪加齢に伴う両側末梢前庭障害やさまざまなタイプの不全型が存在する．

▪治療には難渋することが多いが，基本は平衡訓練であり，杖の使用も有効である．そのほかに，種々の感覚代行法，電気刺激法，人工前庭器が新しい治療法として研究されている．

脳幹・小脳の変化城倉　健 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1259-1264

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Summary

▪延髄外側梗塞は椎骨動脈ないし後下小脳動脈の閉塞で生じることが多く，急性期にはめまいをきたす．

▪延髄外側梗塞のめまいは，多くの場合は他の神経症状と同様に時間とともに軽減するが，一部の延髄外側梗塞ではめまいが慢性期まで遷延したり慢性期に悪化したりする．

▪延髄外側梗塞のめまい慢性化の機序は，前庭神経核の直接障害ではなく，時間とともに進行する前庭神経核の小脳からの脱抑制である．

大脳皮質の変化八木　千裕 , 堀井　新 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1265-1268

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Summary

▪慢性めまいの病態は，① 急性前庭障害後の前庭代償不全，② 前庭代償完了後も症状が持続する場合，の大きく二つに分けられる．

▪「① 急性前庭障害後の前庭代償不全」では，前庭覚に関与する皮質領域の活動は減少し，視覚や体性感覚に関与する領域の活動は増加する．

▪「② 前庭代償完了後も症状が持続する場合」の代表疾患である持続性知覚性姿勢誘発めまいでは，空間認知に必須の多感覚統合を担う皮質領域の活動性減少や，領域間の機能的結合性減弱を認める．

めまい　《めまいの治療》

一般的治療伊藤　彰紀 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1269-1274

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Summary

▪当科における過去21年間のめまい患者2万2,540名の疾患別内訳は，末梢性疾患が74.9％，中枢性疾患が4.4％，その他（起立性低血圧症，原因不明，ほか）が20.8％であり，末梢前庭障害が圧倒的に多い．

▪薬物治療がめまい疾患の治療の中心であるが，病態に合わせた薬剤の選択が重要となる．また，難治例に対する治療の工夫も要求される．

▪良性発作性頭位めまい症は薬物療法が無効であり，理学療法を行う．

▪前庭神経炎など高度な末梢前庭機能低下に伴う遷延性平衡障害に対しては，前庭小脳による前庭代償を促進させる目的で行う前庭リハビリテーションが有用である．

慢性末梢性めまいの特殊治療 -ノイズ前庭電気刺激岩﨑　真一 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1275-1278

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Summary

▪ノイズ前庭電気刺激（ノイズGVS）は，微弱な電流を耳後部から与えることにより，慢性末梢性めまい患者の静的体平衡機能および動的体平衡機能を改善させることが可能である．

▪ノイズGVSの長期刺激は，健常者および患者において，少なくとも数時間にわたって刺激終了後も効果が持続する，持ち越し効果を有する．

▪ノイズGVSは，慢性末梢性めまい患者の体平衡機能を改善する新たな治療となり得る．

慢性中枢性めまいの特殊治療城倉　健 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1279-1283

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Summary

▪延髄外側梗塞のめまい慢性化の機序は，前庭神経核の直接障害ではなく，時間とともに進行する前庭神経核の小脳からの脱抑制である．

▪反復経頭蓋磁気刺激を用いて小脳を賦活し，前庭神経核を再抑制すれば，延髄外側梗塞後慢性めまいを軽減することができる．

▪小脳賦活により脱抑制した深部神経核を再抑制する治療戦略は，類似した病態の他疾患にも応用できる．

しびれ・疼痛　《しびれ・疼痛の一般的病態と慢性化のメカニズム》

大脳の変化若泉　謙太 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1287-1292

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Summary

▪国際疾病分類に慢性痛の項目が新設され，原因の特定できない慢性痛に対して「一次性慢性痛」という診断ができるようになった．

▪中枢感作の病態を示唆する “nociplastic pain” という用語もつくられた．このような動きの背景には，脳神経の可塑的な変化が痛みの慢性化や重症化に関与することを示す研究成果がある．

▪脳画像研究の発展に伴って慢性痛患者ではペイン・マトリックスやデフォルト・モード・ネットワークとよばれる脳部位や神経ネットワークにさまざまな変化が起こっていることがわかってきた．

▪脳内報酬系ネットワークは痛みの慢性化の素因となっている可能性が指摘されている．

▪慢性痛に対しては，このような大脳の変化を念頭に置いた治療的介入が必要であると考えられる．

脊髄の変化土田　陸平 , 井上　玲央 , 水枝谷　一仁 , 住谷　瑞穂 , 住谷　昌彦 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1293-1296

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Summary

▪慢性疼痛のメカニズムとして脊髄レベルでの神経感作機序が考えられる．

▪神経細胞の可塑的変化だけでなく，P2Y12受容体を介したミクログリアの活性化も疼痛の重症化機序となる．

▪リゾホスファチジン酸が痛みの発症-増幅-維持機構の鍵分子であることが臨床患者でも示されている．

末梢神経障害に由来する慢性疼痛の病態馬場　正之 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1297-1300

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Summary

▪慢性疼痛とは3～6ヵ月以上持続する疼痛を指す．

▪末梢神経起源の疼痛を末梢神経障害性疼痛（PNP）とよぶ．

▪チクチク，ピリピリなどのしびれ症状は軽いPNPとみなされる．

▪本邦PNP患者数は約300万人と推定される．

▪PNP発生には痛覚神経線維終末部と末梢神経幹，脊髄後角シナプス機能変化が関係する．

▪痛覚神経線維終末部では，反復性侵害刺激が痛覚受容器感受性増加（感作）を誘導する．

▪末梢神経幹レベルでは，軸索膜の電位依存性Naチャネルの機能異常，触覚線維や自律神経線維と痛覚線維間の交差伝導，神経虚血，慢性炎症がPNP発生に関与する．

▪脊髄後角痛覚シナプスでは，前膜α₂δ-Caチャネル過剰発現がPNP発生要因になる．

▪代謝・中毒疾患では下行抑制系神経線維変性がPNP慢性化に関わる．

しびれ・疼痛　《しびれ・疼痛の治療》

一般的治療 -神経障害性疼痛の薬物療法杉本　恒平 , 野村　恭一 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1301-1306

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Summary

▪神経障害性疼痛の薬物療法は，第一選択薬から第三選択薬に分けられる．第一選択薬にはCa^2＋チャネルα₂δリガンド，セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬（SNRI），三環系抗うつ薬（TCA）があり，第二選択薬にはtramadol，ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液，さらに第三選択薬にはオピオイドがある．

▪SNRI，TCAとtramadolを含めたオピオイドの併用は，セロトニン症候群を生じる可能性があるため注意が必要である．

▪薬物療法を行う際には，薬剤の副作用，効果発現までに時間がかかること，抗うつ薬なども痛みに対して使用する場合があることなどを説明する．

特殊治療細見　晃一 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1307-1310

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Summary

▪薬物治療抵抗性の痛みに対して，各種神経刺激療法が行われている．

▪非侵襲法としては，反復経頭蓋磁気刺激による一次運動野刺激と経頭蓋直流電気刺激が行われているが，本邦では未承認であり，今後の実用化が期待される．

▪外科的なものとしては，脊髄刺激療法，脳深部刺激療法，大脳皮質運動野刺激療法があり，脊髄刺激療法が実臨床で最も多く実施されている．

トピックス

鍼灸治療山口　智 , 久保　亜抄子 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1311-1313

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Summary

▪1971年の中国における鍼麻酔の報道を契機に，鍼鎮痛に関する基礎・臨床研究が数多く報告された．WHOや米国国立衛生研究所（NIH），Cochraneから肯定的な疾患が示され，わが国の診療ガイドラインにおいても頭痛や線維筋痛症，がん性疼痛などが有効とされている．

▪鍼の鎮痛機序として，下行性疼痛調節機構や内因性疼痛抑制機構，脊髄後角に関与した分節性の機序，軸索反射，近年報告されたアデノシンによる局所鎮痛作用などがある．

▪当科における研究成果より，鍼治療は薬物療法で効果が期待できない患者に対し有効性が高く，高位中枢を介した生体の正常化作用が関与することが示唆された．

座談会

頭痛・めまい・しびれの鑑別診断と初期対応城倉　健 , 後藤　淳 , 瀬尾　徹 , 野地　雅人 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1315-1322

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　城倉　頭痛・めまい・しびれは一般外来で患者さんの主訴としてよく遭遇する症状ですが，症状が慢性化して持続すると生活の質が著しく低下してしまいます．慢性化については本誌の特集を読んでいただくことにして，本日の座談会ではこれらの鑑別診断と初期対応について，それぞれ専門の先生方にお話を伺いたいと思います．

Book Review

スタートアップ冠動脈造影（CAG）―臨床現場で上手に活用するために水野　篤 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1247-1247

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　新しい書籍が出た．その名も「スタートアップ冠動脈造影（CAG）」．またスタートアップ系の書籍ね……という先生方に本書の魅力を伝えておこう．まず，何といっても見やすいレイアウトと冠動脈造影に関するエッセンスが凝集されている点，とベタなコメントから入ってみたいと思う．南江堂もさすがだなぁと思うような柔らかい表紙のイラストに合った，内容とレイアウト．やはり見た目は重要だなぁと感じる次第で，歴史のある南江堂ならではの貫禄もなくしていない（笑）．

むかしの頭で診ていませんか？　消化器診療をスッキリまとめました坂本　直哉 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1258-1258

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　「むかしの頭で診ていませんか？」シリーズの第8弾として，消化器診療の重要なエッセンスを散りばめた実践書，「消化器診療をスッキリまとめました」を加藤直也先生が上梓された．本書は「消化器が専門でないけれども，消化器疾患を診る機会のある」医療従事者のニーズに合わせて，日常診療のなか一定頻度で遭遇する消化器疾患についての解説であり，総合診療医，かかりつけ医，看護師，薬剤師，医学生など，すべての医療従事者に役に立つ一冊である．

てんかん，早わかり！―診療アルゴリズムと病態別アトラス服部　信孝 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1285-1285

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　てんかんは100人に約1人が罹患するcommon diseaseであり，ほとんどの臨床医にとって日常診療で避けられない疾患である．適切な診断と治療によって約7割の患者の発作を抑制できることから，正しい理解が不可欠である．しかし現実には，てんかん発作を目撃することはきわめてまれで，ほとんどの場合，診察室で神経学的所見は正常であるため，患者や家族の訴えから病態を推察しなければならないことが少なくない．よって，このことがてんかんの診断を難しくしているといえる．また発作の症状は多種多様であり，痙攣発作を起こす疾患がてんかんとは限らない．さらに近年，副作用を軽減した新規抗てんかん薬が多数出現し，より病態に即した適切な薬物選択が要求されるようになっている．

連載　～知っているようで，実は十分に理解していない～医療に関する制度のあれこれ

第4回介護医療院波多野　将 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1325-1329

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　介護を必要とする高齢者のための施設には，要介護者の生活施設である「介護老人福祉施設（特別養護老人ホーム）」，要介護者にリハビリテーションなどを提供して在宅復帰を目指す「介護老人保健施設（老健）」，ならびに病院・診療所の病床のうち長期療養を必要とする要介護者に対して，医学的管理のもとで行われる介護や必要な医療などを供給する「介護療養病床」があります．

　このうち，2017年度に廃止することが決定した介護療養病床に代わり法定化されたのが「介護医療院」です．介護医療院は「医療の必要な要介護高齢者の長期療養・生活施設」であり，今後ますます増加が見込まれる慢性期の医療・介護のニーズへ対応するために，要介護者に対する長期療養のための医療と日常生活上の介護を一体的に提供することを目的として創設されました．介護療養病床は2024年3月までに完全に廃止され，介護医療院に転換されることになっています．

連載　悩むケースに立ち向かう！臨床推論のススメ方～全国GIMカンファレンスより～

第19回しみじみ感じる事前確率の大切さ佐藤　直行 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1331-1340

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連載のねらい

　GIMカンファレンスは，臨床推論の技術を向上させることを目的とした内科全般の症例を扱う検討会であり，全国各地で組織され開催されています．本連載では，全国のGIMカンファレンスにおいて検討された症例をご紹介いただき，診断過程を時系列に沿って解説いただきます．

連載　Focus On

免疫チェックポイント阻害薬の副作用 -臓器別頻度や出現時期にfocusして平田　彩 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1341-1346

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　近年，免疫チェックポイント阻害薬（ICIs）は肺がん分野においてガイドラインの推奨度も高く，適応拡大が進んでいる．一方で，ICIsによる治療では従来の抗がん薬による有害事象とは異なった免疫応答の破綻によって自己免疫疾患様の症状を引き起こす免疫関連有害事象（irAE）が出現することが少なくない．皮膚障害，肺障害，肝炎や腸炎および肝機能障害などの消化管障害，甲状腺機能や副腎機能に障害をもたらす内分泌障害が多くみられ，重症化や死亡例も報告されている．irAEが出現すると，治療効果や予後の延長をもたらすことが示されているが，臓器別の頻度や出現時期は報告が少なく，さらに治療効果や予後への影響も報告は少ない．しかし，さらなる需要が高まっていくなかで，irAEの臓器別頻度や出現時期は知識として身に付けておくべきである．当院でのICIsを使用した症例について後方視的な検討も含めて報告する．

投稿　症例

durvalumab開始後に薬剤性血小板減少症をきたした非小細胞肺がんの1例平松　佑斗 , 川浪　匡史 , 鈴木　博貴 , 岡田　暁人 , 山川　英夫 127巻6号 , 2021年6月 , pp.1347-1350

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　はじめに　免疫チェックポイント阻害薬（immune checkpoint inhibitor：ICI）は近年，固形がんの治療で適応を広げている．肺がん治療ではPD-1およびそのリガンドであるPD-L1を標的とした抗体製剤が使用されており，わが国では抗PD-1抗体であるnivolumabとpembrolizumabおよび抗PD-L1抗体であるatezolizumab，durvalumabが承認されている．

　durvalumabは切除不能な局所進行の非小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法として有効性が示され，ICIのなかでは比較的最近（2018年）承認された薬剤であり，その後，肺がん領域で適応を広げている．

　ICIは多彩な免疫関連有害事象（immune-related adverse events：irAE）を発現することが知られており，血小板減少症の報告も散見されるが，durvalumabについての報告は少ない．今回，durvalumab開始後に薬剤性血小板減少症をきたした非小細胞肺がんの1例を経験したため，報告する．

基本情報

臨床雑誌内科
127巻6号
(2021年6月発行)

電子版ISSN：2432-9452 印刷版ISSN：0022-1961 南江堂

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第1位僧帽弁狭窄症福康志臨床雑誌内科 116巻 3号 pp. 411-416 (2015年9月1日) 南江堂
第2位急性中毒治療の5大原則薬師寺泰匡臨床雑誌内科 136巻 5号 pp. 1002-1009 (2025年11月1日) 南江堂
第3位痛風発作寛解・予防薬久留一郎臨床雑誌内科 131巻 4号 pp. 885-889 (2023年4月1日) 南江堂
第4位急性中毒の情報収集東秀律,青木杏奈臨床雑誌内科 136巻 5号 pp. 996-1000 (2025年11月1日) 南江堂
第5位急性中毒の診断松本大賀臨床雑誌内科 136巻 5号 pp. 988-994 (2025年11月1日) 南江堂
第6位たばこ青柳有沙臨床雑誌内科 136巻 5号 pp. 1011-1013 (2025年11月1日) 南江堂
第7位大動脈弁狭窄症中谷敏臨床雑誌内科 116巻 3号 pp. 401-404 (2015年9月1日) 南江堂
第8位催眠・鎮静薬香月洋紀臨床雑誌内科 136巻 5号 pp. 1019-1022 (2025年11月1日) 南江堂
第9位頸髄硬膜外膿瘍3症例における後頸部痛の性状に関する検討橋本泰昌,小松研一,岩崎孝一,松本禎之臨床雑誌内科 119巻 5号 pp. 1049-1052 (2017年5月1日) 南江堂
第10位炭酸リチウム倉松佑守,竹内慎哉臨床雑誌内科 136巻 5号 pp. 1031-1035 (2025年11月1日) 南江堂

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臨床雑誌内科 127巻6号 (2021年6月発行)

特集 頭痛・めまい・しびれ・疼痛―慢性化のメカニズムと治療

Overview：commonな症状が慢性化するメカニズムに迫る

頭 痛 《頭痛の一般的病態と慢性化のメカニズム》

頭 痛 《頭痛の治療》

めまい 《めまいの一般的病態と慢性化のメカニズム》

めまい 《めまいの治療》

しびれ・疼痛 《しびれ・疼痛の一般的病態と慢性化のメカニズム》

しびれ・疼痛 《しびれ・疼痛の治療》

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連載 ～知っているようで，実は十分に理解していない～ 医療に関する制度のあれこれ

連載 悩むケースに立ち向かう！ 臨床推論のススメ方 ～全国GIMカンファレンスより～

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