臨床雑誌整形外科 60巻3号 (2009年3月)

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人工股関節全置換術(THA)を行った114例(男性12例、女性102例:平均年齢62.8歳)を対象に、静脈血栓塞栓症(VTE)予防に対するフォンダパリヌクス1.5mg、2.5mgの有効性、安全性を検討した。無作為化二重盲検試験とし、フォンダパリヌクスを1日1回10~14日間皮下投与した。安全性の評価は1.5mg群58例、2.5mg群56例、有効性の評価は1.5mg群48例、2.5mg群46例に対して行った。その結果、VTE発生頻度は1.5mg群8.3%、2.5mg2.2%で、軽度のminor bleeding発現を3例に認めたが、major bleedingの発現は認めなかった。以上より、フォンダパリヌクス1.5mg、2.5mgはTHA症例のVTE発症抑制に対し、安全で有効であると考えられた。

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腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎変すべり症各30例を対象に、内視鏡後方脊椎手術と従来法の手術侵襲度について比較検討した。手術法はMED法、Love法、拡大開窓術、固定術、内視鏡下片側進入両側除圧術の結果を比較し、手術時間、術中出血量、術後鎮痛処理回数、最高発熱、術後平熱に戻るまでの期間、術後1週間の平均CRP値について検討した。また、合併症として腰椎椎間板ヘルニア再発例、硬膜損傷、術後血腫について検討した。その結果、内視鏡後方脊椎手術、特に内視鏡下片側進入両側除圧術は低侵襲手術である長所を生かすことができ、良好な結果を獲得できる術式であると思われた。

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過去5年間に、人工股関節全置換術(THA)を行った血液透析患者15例17股(男性3例、女性12例:平均年齢59歳)を対象に、周術期成績について検討した。なお、非透析患者で変形性股関節症に対するprimary THA271例302股(男性36例、女性235例:平均年齢63歳)を対照とした。その結果、透析患者の術前合併症・既往歴は循環器疾患が最も多く、消化器疾患が次いだ。術後は循環器合併症は2例(11.8%)に認めたが、消化器合併症は認めなかった。また、手術時間、出血量については透析患者と非透析患者に有意差を認めなかった。透析患者に対するTHAの周術期管理として、循環器に対する術前評価及び術後の循環変動に対して注意が必要があると考えられた。

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過去6年間に、血友病性膝関節症に対する人工膝関節全置換術(TKA)を行った患者5例5膝(手術時平均年齢41歳)を対象に、手術成績について検討を行った。対象は血友病Aで、HIV、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染を合併していた。周術期は第VIII因子製剤の持続投与を行い、第VIII因子活性100%を維持した。手術はparapatellarが4膝で、その内、展開困難であった3膝はquadriceps snipを追加し、1膝はmidvastusであった。手術時間及び入院日数は通常のTKA例より長かったが、出血量は同等であった。また、術後JOAスコアは改善したが、屈曲、ROMは改善を認めなかった。以上より、血友病性膝関節症に対するTKAは、第VIII因子製剤による止血管理により通常のTKAと同等の手術ができ、ADLの向上に有効であると考えられた。

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生物学的製剤投与中の関節リウマチ(RA)患者に対する人工関節全置換術の安全性・問題について検討した。対象はインフリキシマブ(INF)投与中の症例17例19関節(男性3例、女性14例:平均年齢52.0歳)、エタネルセプト(ETN)投与中の症例3例3関節(平均年齢63.0歳)である。術後、創治癒遷延、全身合併症、RA悪化は認めなかった。術後7ヵ月にETN例で遅発性人工膝関節感染を認め、INF例では急速破壊性股関節症が発生し両側人工股関節全置換術(THA)に至った例およびTHAの8ヵ月後に術側の下腿蜂窩織炎発症例を各1例認めた。以上より、生物学的製剤投与中RA患者への人工関節全置換術は、術後経過では感染や下肢荷重に対する注意が必要であると考えられた。

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81歳男。両手指巧緻運動障害、歩行困難、後頭部痛を主訴とした。腰部脊柱管狭窄症による右下垂足がある。MRI、頸椎単純X線動態所見にて、軸椎歯突起後方に脊髄を著明に圧迫している腫瘤と、軽度の環軸関節の不安定性を認め、軸椎歯突起後方偽腫瘍と診断した。患者の希望でステロイド点滴を行ったが、症状は変化を認めなかったため、入院2ヵ月後に環椎椎弓切除による後方除圧術を行った。術後経過は良好で、JOAスコアは術前7点、術後3ヵ月15点と改善した。術後1年6ヵ月現在腫瘤は軽度縮小し、脊髄の圧迫は著明に改善した。

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30歳女。頸部痛を主訴とした。入院時は痛みのため頸部可動は困難で、起坐も困難であった。単純X線にて左椎弓根拡大、CTにて骨皮質の菲薄化、骨梁構造の消失と空洞化、MRIにて液面形成を認めたことより、原発性の動脈瘤様骨嚢腫(ABC)、巨細胞腫、巨細胞腫に伴う二次性のABCを疑った。顕微鏡下に椎体の皮質を開窓し膜様組織を掻爬した。術中迅速病理検査の結果ABCと診断し、C5椎体の亜全摘後、椎骨動脈周辺を含めた椎弓根内から外側塊まで両側の可及的腫瘍内切除を行った。固定術は後方よりC4~C6を外側塊スクリューにて固定した。術後病理所見より、原発性ABCと確定診断した。術後8ヵ月現在、頸部痛はなく、再発の徴候は認めない。

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76歳男。左臀部~下腿後面痛及び右下腿後面の運動時痛を主訴とした。単純X線にて骨棘と各椎間板の狭小化、MRIにてL3-S1の硬膜外脂肪及び硬膜管の星型狭窄、脊髄造影にてL3レベルでの完全ブロックを認め、腰椎硬膜外脂肪腫症と診断した。L4-L5椎弓切除を行い、硬膜上の脂肪腫の除去を行った。手術では軟部組織からの脂肪性滲出液を認め、骨切除でも骨髄の脂肪滴を認めた。病理組織学的所見では、明らかな悪性所見は認めなかった。術後、両下肢痛は著明に改善し、術後5年現在、除圧は維持されている。

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43歳男。1984年に仙骨脊索腫に対して腫瘍および直腸から肛門を含めて切除した。腫瘍断端部は陰性で、術後は自己導尿および人工肛門管理となった。術後18年に健診で胸部X線像の異常を指摘され、各画像所見および生検の結果、脊索腫の肺転移と診断した。放射線療法は患者が拒否したため、外来にて経過観察とした。呼吸状態を悪化させる程の肺転移巣の増大は認めず、肺転移後5年8ヵ月現在、生存している。なお、10年以上経過後の遠隔転移は稀である。

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11歳女児。左膝関節部痛を主訴とした。クラッシクバレエをしている。左内側関節裂隙に腫瘤を認めた。McMurrayテスト、MRI、関節鏡視、生検各所見より、限局型色素性絨毛結節性滑膜炎(PVS)と診断した。腫瘤は約2cmで膝蓋下脂肪体から関節内へ膨隆しており、関節鏡下に一塊として摘出し、手術翌日より関節ROM訓練、全荷重を行った。術後4年現在、疼痛やROM制限はない。なお、日本における限局型PVSの報告は1966年以来61例で、11歳以下の症例は本例を含めて3例のみである。

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77歳女。右膝痛、腫脹を主訴とした。19年前に関節リウマチ(RA)を発症し、Steinbrocker分類classIII、stage IVであった。ブシラミン投与によりコントロールされていたが右膝痛が出現し、強い痛みのため歩行は困難であった。単純X線、MRIにて、5ヵ月前にはなかった脛骨の骨破壊と前方亜脱臼と巨大な膝窩嚢腫(PC)を認め、人工膝関節全置換術及びPCの切開排液を行った。術後経過は良好で、手術翌日より全荷重歩行を開始し3週間で退院となった。術後8ヵ月現在、PCの増大や痛みは認めず、RAのコントロールは良好である。

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11歳男児。右足関節痛を主訴とした。同部は軽度腫脹し、同部外側に圧痛を認めた。また、両側は開帳足、外反扁平足であった。単純X線、MRIを行い、距骨離断性骨軟骨炎Berndt-Harty分類stage IIIと診断した。足関節鏡所見では骨軟骨炎を距骨滑車外側に認め、33×12×7mm大の骨軟骨片を剥離し整復を行った。固定は骨釘のみは不十分で、アキュトラックスクリューを追加した。術後10週で全荷重を開始し、術後4ヵ月でスポーツを開始した。術後2年ではROM制限を認めず、歩行時痛及び圧痛は消失した。なお、距骨に発生した外側型離断性骨軟骨炎は稀である。

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過去2年間に、腰椎の脊椎内視鏡後方除圧術(MED)を行った137例を対象に、肥満患者に対するMEDの有用性について検討した。対象は、BMI25未満の79例(男性34例、女性45例:平均年齢61.0歳:N群)とBMI25以上の58例(男性27例、女性31例:平均年齢60.6歳:O群)に分類し、1椎間当りの手術時間や出血量を比較した。その結果、手術所要時間、術中・術後出血量は肥満度との相関を認めず、2群間で有意差を認めなかった。以上より、MEDは肥満患者に対して有用であると考えられた。

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6ヵ月以上follow up(f/u)可能であった腰部脊柱管狭窄症(LSCS)60例(男性17例、女性43例)を神経根型とそれ以外の型に分類し、間欠跛行(IMC)時間を指標として保存的治療の経過について検討した。なお、初診時平均年齢72.6歳、f/u時平均年齢74.1歳、平均f/u期間18ヵ月である。その結果、改善23例(B群)では手術3例、保存的治療20例、不変11例(N群)では手術2例、保存的治療9例、悪化26例(W群)では手術15例、保存的治療11例であった。また、障害形式はB群は神経根型18例、その他5例で、N群は神経根型8例、その他3例で、W群は神経根型6例、その他20例であった。初診時IMC時間はB群はW、N群より有意に小さく、f/u期間のIMC時間はB群はW群より有意に小さかった。以上の検討より、約10%の歩行可能時間の低下があると症状が悪化する可能性があることが判った。

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症例はCreutzfeldt-Jakob病(CJD)と診断された77歳女性で、A病院入院中に転倒し右大腿骨頸部を骨折した。2病院にて外科的治療を拒否され、整形外科医の関与のない状態で経過観察のため、ADLが低下し寝たきり状態となった。受傷3週目に当院に入院となった。セメント固定による人工骨頭置換術を行った。術後、歩行器歩行可能となり食事も自立し、術後20日目に転院した。術後1年2ヵ月時は車椅子移動であるが、ときどき自宅に外泊している。なお、手術終了後、手術使用器具は廃棄した。業者より借りた器械は次亜塩素酸ナトリウムに浸し、132度オートクレーブ(1時間)による高圧蒸気滅菌した後に返却し、業者が廃棄した。CJD患者が手術拒否を避けるためには、多大な負担となる手術器具の廃棄処理に関する公的システム及び診療報酬への配慮が必要である。

X線診断Q&A

結核性脊椎炎 高畑 雅彦

基本情報

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臨床雑誌整形外科
60巻3号 (2009年3月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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