胸部外科 69巻6号 (2016年6月)

  • 文献概要を表示

著者らが経験した臓器虚血を伴うStanford B型急性大動脈解離16例(男性15例、女性1例、平均年齢68.8歳)を対象に、その虚血部位と治療成績について検討した。1)虚血部位は上腸間膜動脈(SMA)が5例、片側閉塞を除いた両側腎動脈(RA)が3例、腹腔動脈(CA)が3例、Adamkiewicz動脈(AKA)が2例、下肢動脈(LA)虚血が3例であった。2)30日以内の在院死亡は3例でみられた。内訳はSMA閉塞の手術未施行の2例、LA閉塞での手術未施行の1例であった。一方、平均3.5年の経過観察期間における遠隔期死亡は1例で、SMA閉塞で左総腸骨動脈-SMA人工血管バイパス手術を施行した例であり、術後1年3ヵ月で原疾患の重症筋無力症の呼吸不全にて死亡となった。3)合併症については、試験開腹のみで腸管の色調から腸管切除が不要と判断されたSMA閉塞の1例で虚血性腸炎が残存していた。尚、CA閉塞の1例では発症3日後に胃壁壊死、胆嚢壊死、脾梗塞を認め、胃部分切除術および脾臓、胆嚢摘出術を要した。

  • 文献概要を表示

自然気胸の外来治療における携帯型ドレナージキットの有用性について検討した。症例94例を携帯型ドレナージキットを挿入した43例(TE群)、トロッカーを挿入した41例(トロッカー群)に分け比較した。その結果、1)TE群では23例(53%)が外来で治療を完遂することができた。初回治療例に限れば25例中18例(72%)が外来で治療でき、また装着しながらの通学や軽作業も可能であった。一方、トロッカー群の外来完遂例は13例(31%)にとどまっていた。2)TE群では入院が必要となった症例でも全治療期間の約半分を外来通院することができ、トロッカー群に比べ全治療期間、入院期間を短縮することができた。以上、これらのことからも、携帯型ドレナージキットは有用であると示唆された。

  • 文献概要を表示

62歳女性。約1年3ヵ月前より動悸を自覚、6ヵ月前に他院の精査にて発作性心房細動を指摘され、抗不整脈薬の内服を開始されるも症状は消失せず、今回、血痰を認めたため精査目的で著者らの施設へ受診となった。胸部CTでは右下葉S7から肺門に18mm大の内部に壊死を伴う腫瘤が認められ、左房への浸潤が疑われた。PET-CT、超音波ガイド下経気管支針生検を行なったところ、臨床病期IIIB期の左房浸潤を伴う肺腺癌と診断され、開胸下に手術が施行された。手術所見では左房に広範囲の浸潤を認めたため、人工心肺なしで心房間溝剥離による左房合併肺摘除術を施行した。その結果、術後経過は良好で、経過中に心房細動の発症はみられなかった。尚、病理組織学的に多形癌およびPSを考慮し、術後化学療法は施行しなかった。術後3年経過現在、非担癌で外来通院中である。

1枚のシェーマ

  • 文献概要を表示

78歳男性。大腸癌の術前精査にて胸部異常陰影を指摘され、気管支鏡下針生検で原発性肺癌と診断、今回、大腸癌術後に手術目的で著者らの施設へ紹介となった。受診時、胸部CTでは右上葉S1に胸膜嵌入を伴う52×32mmの辺縁不整な腫瘤影がみられ、臨床病期IIA期の肺癌と診断された。右肺上葉切除およびND2a-2を行なったところ、病理組織学的に高~中分化型腺癌であった。一方、術後に乳び胸を合併し、絶食による保存的治療を開始したが、1000ml/日以上の排液が持続したため術後7日目に再手術が行われた。手術は露出部をクリッピングして閉鎖し、更にポリグリコール酸シートを敷き詰め、フィブリン糊を貼付した。だが、再手術後も排液が持続し、血液凝固第XIII因子の投与を開始するも排液が増加した。そこで、octreotide acetateの持続皮下投与を開始した結果、排液は著明に減少した。以後、6日目と10日目にOK-432による胸膜癒着療法を施行し、再手術後17日目にドレーンを抜去することができた。目下、術後4年経過で胸水の再貯留はなく、無再発生存中である。

  • 文献概要を表示

77歳男性。右背部痛を主訴に前医を受診、CTにて右第2肋骨を中心とした胸壁肺尖部腫瘍を指摘され、著者らの施設へ紹介となった。CTガイド下針生検にて肋骨原発軟骨肉腫と診断され、手術が施行された。術前の胸部CTでは右第2肋骨原発の腫瘍性病変は第2椎体と第1~2横突起、第1~3後肋骨近傍まで浸潤がみられた。そこで、前方アプローチ(胸骨柄部縦切開+右第1肋間前方開胸)と後方アプローチ(後側方切開)を併用して腫瘍摘出術を行ったところ、術後は創部とその周囲の疼痛による肩関節の可動域制限が認められたが、リハビリテーションを行なうことで、患者は術後46日目に自宅退院となった。尚、術前から認めた嗄声は術後一時的に悪化したが、術後4ヵ月程度で術前のレベルまで回復し、運動障害もほぼ軽快した。

  • 文献概要を表示

41歳男性。幼少期に膜様部心室中隔欠損症(VSD)と診断されるも放置していた。今回、38℃台の発熱を自覚し近医を受診、抗菌薬投与にて経過観察されるも発熱を繰り返すため、精査加療目的で著者らの施設へ紹介となった。血液培養でのStreptococcus mutansの検出ほか、臨床経過や心エコー所見より、本症例はVSDに合併した感染性心内膜炎によるValsalva洞破裂と診断され、抗菌薬の投与後、入院35日目に手術が施行された。手術は胸骨正中切開アプローチで行われ、大動脈基部に付着した疣贅を可及的に郭清して十分洗浄し、欠損孔および瘻孔をウシ心膜パッチを用いてそれぞれ閉鎖した。その結果、術後は感染の再燃なく良好に経過し、術後11日目に患者は独歩退院となった。尚、4週間の術後抗菌薬内服を継続し、目下、術後2年経過で感染の再燃や大動脈弁逆流は認められていない。

  • 文献概要を表示

64歳男性。両下肢不全麻痺と心窩部痛を主訴に近医を受診、CTにて急性大動脈解離を指摘され、著者らの施設へ救急搬送となった。胸部X線はじめ造影CT、3D-CT、心エコー所見より、本症例は血栓閉鎖型Stanford B型急性大動脈解離に伴うKommerell憩室の破裂と診断され、緊急で胸部大動脈ステントグラフト内挿術が施行された。その結果、術後は循環動態が安定した。以後、術前より認めた脊髄梗塞に対してスパイナルドレナージを開始するとともに血圧管理を行った。更にリハビリテーションを行なうことで下肢の筋力はMMT2点から4点へ回復、患者は術後第17病日目に紹介医へ転院となった。尚、目下、術後3ヵ月現在、車椅子生活ではあるものの、全身状態は良好である。

  • 文献概要を表示

45歳女性。血痰を主訴に近医を受診、CTにて気管内の腫瘤を指摘され、精査目的で著者らの施設へ紹介となった。初診時、PET-CTでは気管内腫瘍部に一致して異常集積がみられ、気管支鏡検査では声門から約5cmの部位に気管内腔をほぼ閉塞する白色調の腫瘤が認められた。生検の結果、気管腺様嚢胞癌と診断され、治療は腫瘍の気管内占拠で気道確保が困難となる可能を考慮し、体外式膜型人工肺使用下で麻酔を導入後、頸部襟状切開+胸骨正中切開にて気管管状切除再建術が施行された。その結果、術後の合併症なく、患者は19日目に退院となった。尚、術後1ヵ月目には呼吸機能の改善、吻合部の完全治癒が確認され、放射線療法を追加することで、目下も良好に経過している。

  • 文献概要を表示

82歳女性。上肢のしびれ、ふらつき感を主訴に、脳梗塞の診断で入院加療となった。その際、入院時の胸部X線で左上肺野に縫い針と思われる異物を認め、胸部CTでも縫い針の左上肺野内への迷入が確認された。だが、肺内異物の症状は認めず、脳梗塞症状も後遺症なく軽快したため、いったん退院とした。その後、異物摘除目的に再入院し、肺内の縫い針を摘出した。摘出した縫い針の長さは47mmで、錆びていた。本症例では縫い針が床にあることに気づかず寝転がり、背部に刺さり、それが肺まで移動した可能性が考えられた。

  • 文献概要を表示

47歳男性。酩酊状態で歩行中に転倒し、右頬部をコンクリートブロックに強打したがそのまま入眠し、翌朝、頭頸部の腫脹と皮膚の違和感が出現したため受診となった。初診時、CT所見より上顎骨骨折に伴う縦隔気腫と診断され、入院安静の上、絶食で輸液管理とし、CEZの投与を開始した。その結果、経過良好で、第4病日目よりは経口摂取を開始し、皮下気腫も著明に改善した。患者は入院第9病日目に退院となったが、合併症はなく、受傷後18日目のCTでは縦隔気腫および皮下気腫の完全消失も確認された。

胸部外科発展の軌跡 パイオニアの原著と足跡を綴る(第6回)

  • 文献概要を表示

60歳女性。50歳時より大動脈弁狭窄症の経過観察中であった。今回、坂道歩行時の息切れを自覚し受診、CTアンギオグラフィーにて大動脈縮窄症(CoA)の合併した大動脈一尖弁狭窄症と診断された。以後、左鎖骨下動脈分岐直後に高度のCoAがあり、多数の側副血行路が存在し、正常分娩していることから、大動脈弁置換術(AVR)を先行させ、2期的にCoAの修復を行う方針とした。その結果、AVR後27日目に患者は一時的に自宅退院となったが、3ヵ月を経て左鎖骨下-下行大動脈バイパス術が施行された。目下、術後2年で降圧薬を必要とせず、大動脈にも変化はみず、良好に経過している。

  • 文献概要を表示

65歳女性。人間ドックの心電図にて左室肥大を指摘され、労作時の息切れも認めたため、精査目的で著者らの施設へ紹介となった。心エコー所見より大動脈四尖弁による大動脈弁閉鎖不全と診断され、大動脈弁置換術が施行された。その結果、術後経過は良好で術後10日目に軽快退院となった。

  • 文献概要を表示

67歳男性。回転性めまい、嘔気、構音障害を主訴に前医を受診、左小脳梗塞の診断で緊急入院し、heparin、edaravone投与による加療を受けた。今回、その後の検査で弁膜症性心房細動(Af)による心原性脳梗塞と診断され、著者らの施設へ紹介となった。治療として僧帽弁置換術(MVR)+左心耳閉鎖術が予定されたが、手術予定の1ヵ月前に左上肢の疼痛、しびれが出現した。MRAにより左上腕動脈の閉塞が疑われ、緊急で左上腕動脈血栓除去術が行われた。そして、術後は抗凝固療法を継続し、MVR施行の方針となったが、左小脳の梗塞後出血を認めたため手術は延期となった。以後、左小脳出血は消失したが、繰り返す弁膜症性Afによる塞栓症に対して胸腔鏡下左心耳切除術を施行した。その結果、術後の経過は良好で、患者は抗凝固療法を継続の上、軽快退院となった。目下、術後12ヵ月現在、明らかな塞栓症および出血エピソードなく経過している。

  • 文献概要を表示

81歳女性。11年前より心臓腫瘍の経過観察中で、腫瘍は徐々に拡大傾向にあったものの無症候のまま経過していた。今回、3ヵ月前より間欠的な眩暈、動悸が出現したため、著者らの施設へ救急外来を受診となった。受診時、心電図では心室頻拍(VT)を認め、直ちに直流除細動を施行することで洞調律に復帰した。一方、造影CTでは右室自由壁から内腔に突出する80×70×55mmの表面平滑な腫瘍がみられ、血管腫が疑われた。また、心エコーでは心嚢水貯留を認め、その後も非持続性VTが頻発したため、準緊急で腫瘍摘出術を施行した。すると、腫瘍の右室浸潤範囲が広範囲であったため、右室自由壁に浸潤した腫瘍部分を一部残存させる形で突出した腫瘍部分を摘出した。病理組織学的には血管腫であった。以後、手術から5日目に再度非持続性VTが出現したため経カテーテル的電気生理学的検査を施行したが、VTの起源は残存した腫瘍の付着部であり、同部位にカテーテルアブレーションを試みたが電気的焼灼は不完全に終わった。そこで、植込み型除細動器の植込み術を行い、患者は軽快退院となった。

  • 文献概要を表示

74歳男性。既往として喉頭癌手術があった。72歳時に弓部大動脈瘤を指摘され、経過観察中であったが、今回、瘤が拡大したため著者らの施設へ紹介となった。受診時、頸部正中に永久気管瘻、その上縁に左大胸筋皮弁を認めたため、第2肋間開胸と胸骨部分切開によるALPSアプローチで全弓部大動脈置換術が施行された。その結果、術後経過は良好で合併症なく、患者は術後第11病日目に軽快退院となった。

  • 文献概要を表示

43歳男性。息切れ、胸の重苦感を主訴に近医を受診、左胸水と左胸腔内の腫瘤性病変を指摘され、精査加療目的で著者らの施設へ紹介となった。胸部CTでは前縦隔左側に均一に造影される60×40mm、辺縁平滑で境界明瞭な腫瘤陰影が認められた。生検の結果、悪性紡錘形細胞腫瘍を疑い、腫瘍摘出術を施行したところ、病理組織・免疫組織化学染色所見で滑膜肉腫が示唆された。以後、遺伝子解析の結果、SYT-SSXキメラ遺伝子が検出され、本症例は最終的に前縦隔に発生した単相型滑膜肉腫の診断に至った。

基本情報

24329436.69.06.cover.jpg
胸部外科
69巻6号 (2016年6月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

文献閲覧数ランキング(
5月18日~5月24日
)