胸部外科 60巻6号 (2007年6月)

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迅速な診断と外科的治療により救命しえた、限局性の急性大動脈解離による冠状動脈血流障害の2例を報告した。症例1(49歳女)。突然の胸痛を認め救急搬送された。心電図から急性心筋梗塞と診断し、緊急冠状動脈造影を行った。急性大動脈解離を疑い、経食道超音波検査を施行し、上行大動脈基部に限局した大動脈解離および大動脈弁閉鎖不全を認めた。冠状動脈左主幹部にステント留置後に急性大動脈解離・大動脈閉鎖不全に対し緊急手術を施行した。術後15日目で退院した。症例2(49歳男)。大型トラック運転中に追突し救急搬送された。胸部造影CTで大動脈基部に限局した解離を認めた。緊急冠状動脈造影を施行し、左冠状動脈主幹部入口部に解離が及び完全閉塞していた。緊急手術を開始した。突然の退院希望があり冠状動脈評価を行わなかった。

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66歳男性で、黒色便を主訴に受診した。胃透視にて胃癌と診断し、手術目的で入院となった。既往歴として、5年前に右胃大網動脈(RGEA)を用いた冠状動脈バイパス術があり、RGEA切離を伴う幽門側胃切除術が予定された。術前心臓カテーテルではすべてのグラフトは完全開存であり、RGEA切離に先立ち、右冠状動脈のカテーテルインターベンションを試みたが不成功に終わった。そこで、右開胸と開腹にてRGEAグラフト再建を行った後、RGEA切離を伴う胃切除術を施行した。手術時間は5時間30分、無輸血手術であり、術後合併症もみられず、良好な経過が得られた。

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症例1は19歳男性、症例2は21歳男性で、胸部X線・CTにて両者ともに肺尖部に限局する、症例1は単発・緊満性の、症例2は多発・緊満性のブラを認めた。いずれも気漏が遷延し、自動縫合器を用いて胸腔鏡下手術を行ったが、それぞれ術後1年9ヵ月後、術後2年1ヵ月後に再発を認めた。いずれも胸部CTにて初回ブラ切除線周囲に多発するブラを認め、再手術を施行し、術後15ヵ月の現在、再発はみられない。本症例2例は組織学的な検索で初発時、再発時ともに潜在的な気腫性変化が広範囲に認められ、再発時のブラ形成は初回切除線を中心に表層から深部まで広範な分布を認めたことから、再発の原因として初回術後のブラ新生が考えられた。

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術前に発作性心房細動(PAF)を伴った開心術26例を対象に双極高周波アブレーション(BRF)を用いた肺静脈隔離術を行い、術後の心房細動(AF)に対する有用性について検討した。手術死亡はなく、ICU帰室時には全例洞調律であった。BRFに関連した合併症もみられず、術後急性期におけるAF回避率は92.3%(24例)であり、AFを認めた2例については抗不整脈薬の投与で発作は消失した。僧帽弁手術手技の有無でAF回避率を考えると、あり75%(6/8)、なし100%(18/18)であった。以上より、BRFを用いた肺静脈隔離術は開心術後急性期のAF予防に有用であることが示唆された。

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症例1は生後5ヵ月の女児、症例2は生後9ヵ月の女児で、それぞれ完全型房室中隔欠損および心室中隔欠損に対する根治術後に肺高血圧の残存を認めた。いずれもsildenafil citrate(SIL)による治療では不十分で、エンドセリン-1受容体拮抗薬bosentan hydrate(BOS)経口投与を1.5mg/kg/day(1日2回に分割)で行った。肺高血圧の残存は否定され症状の改善を得ることができた。

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42歳女性で、検診にて胸部異常影を指摘され、精査加療目的で入院となった。入院時、喀痰検査では一般細菌、抗酸菌ともに陰性であった。胸部X線・CTにて左下肺野に1-1.5cm大の孤立性結節影を認めたが、気管支鏡検査では確定診断に至らず、胸腔鏡下左下葉部分切除術を行った。病理組織検査所見として類上皮細胞、巨細胞を認め抗酸菌病変と診断した。また培養にて肺Mycobacterium avium complex感染症と診断した。術後1年経過した現在、再発は認めず、経過良好である。本疾患で限局性病変の場合、診断を得るため、また治療のためにも積極的な切除を行うべきである。

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症例は55歳男性で、発熱、悪寒を主訴に、精査加療目的で入院となった。既往歴として、僧帽弁狭窄症に対する閉鎖性僧帽弁交連切開術、大動脈弁閉鎖不全症に対する大動脈弁置換術、僧帽弁狭窄症再発に対する僧帽弁置換術、maze手術があった。入院後の精査でMRSE(多剤耐性表皮ブトウ球菌)による感染性心内膜炎と診断し、抗生物質による内科的治療を行ったがコントロール不能であったため、入院後32日目に手術を施行した。手術所見では大動脈弁直下の左室流出路に疣贅を認め、細菌検査にてGram陽性球菌が検出されたため、ウマ心膜ストリップを弁輪に縫着する方法で大動脈弁再置換術を行った。術後、linezolid投与を開始した結果、人工弁再感染を防ぎ、完治することができた。

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症例1は34歳女性、症例2は44歳男性で、いずれも開心術周術期に心室頻拍(VT)を呈した。Lidocaine hydrochlorideやmagnesium sulfateを静注したが難治性を示し、nifekalant hydrochlorideの静注を開始したところ、著効が得られた。2例は低左室機能例であり、いずれも難治性VTの抑制に有効であった。陽性変力作用を有するnifekalant hydrochlorideは第1選択であると考えられた。

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症例1は僧帽弁逆流、高度三尖弁逆流、肺高血圧を伴った心房中隔欠損孔(ASD)の33歳男性例で、呼吸苦および下腿浮腫を主訴に来院した。超音波では形態学的診断が困難であったが、MDCTにてASDの位置や形態、三尖弁輪との構造的関係が観察され、二次孔欠損であることが分かり合併奇形の無いことを確認することが可能であった。症例2は心室中隔欠損(VSD)を伴う右室二腔症の61歳女性例で、労作時呼吸苦を主訴に来院した。MDCTにて右室流出路の異常筋束の形態と狭窄部位近傍に開口するVSDの存在が術前に把握できた。右室流出路切開による手術時には、エコーで詳細な位置や形状の把握が難しかったが、MDCT内視鏡モード像がきわめて有用であった。

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症例は69歳男性。3年前に食道癌に対して食道胃上部切除、3領域リンパ節郭清、胸骨後残胃挙上再建術を施行した。その後胸部異常陰影が出現し入院となった。胸部CTにて右上葉S1に径10mm大、S2に5mm大の結節影を認め、転移性肺腫瘍が疑われたため、診断および切除目的に胸腔鏡下右肺部分切除を予定したが、術前CTガイド下マーキング後に対側肺の虚脱を合併し、胸腔ドレーン留置を要した。また、術中は空気漏出試験が不可能で、胸腔内を詳細に検索したところ、両側胸腔を交通する瘻孔が確認され、左側手術は不要と判断し、右胸腔ドレーンを留置して手術を終了した。病理組織学的にS1は転移性肺腫瘍、S2は肉芽腫と診断され、ドレーン抜去後、引き続き化学療法を施行した。両側胸腔が交通する手術の既往があるときには、マーキング後に対側肺の虚脱が起こることを念頭におき、適切な処置をする。

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症例は60歳女性で、40年前より高血圧、11年前に骨髄異形成症候群、7年前よりII型糖尿病、3年前より大動脈炎症候群を認め、咳、呼吸困難を主訴に入院となった。大動脈造影では上行・弓部大動脈とその分枝動脈は拡張しており、下行大動脈は狭窄し、Th9レベルで最も強い狭窄を認めた。胸部CTでは下行動脈の狭窄部に厚い石灰化が存在し、動脈壁の石灰化は鎖骨下動脈起始部にも認めた。血圧は降圧薬でもコントロール不能で、心機能の低下もみられた。心不全を伴う高安動脈炎による異型動脈狭窄と診断し、動脈炎が寛解期であったため、非解剖学的バイパス術を施行した。術直後より降圧効果が得られ、心機能も次第に改善した。

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症例は77歳女性で、労作時呼吸困難を主訴に受診し、僧帽弁閉鎖不全(MR)による心不全と診断されたが、突然に心室細動が出現し、心肺蘇生後に紹介入院となった。術前に広範囲心筋障害が疑われ、心室細動を発症し心肺蘇生を要したことから、MRに対し心拍動下に僧帽弁置換術を施行した。術後、心室性不整脈の出現はみられず、良好な経過を得ることができた。

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症例は63歳女性で、約3年前より肝硬変・肝細胞癌に対する内科的療法で加療中であったが、呼吸困難が出現し、緊急搬送となった。心臓超音波では右房内と右心室を移動する径30×15mm大の腫瘍を認めたため、緊急手術を施行した。手術所見では下大静脈からの連続性を持たない右房内腫瘍が確認され、腫瘍切除術を行った。病理組織学的に肝癌原発転移性心臓腫瘍と診断した。術後経過良好であり、術後7日目に肝癌に対する治療目的で転院した。

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症例は30歳女性で、上腹部痛および嘔気を主訴に受診した。経皮的針生検にて肝原発類上皮血管内皮腫(EHE)の診断を受け、胸部CTで両側肺野の多発性結節を認め、入院となった。肝原発EHE肺転移疑いと判断し、胸腔鏡下肺生検を施行した。肺表面に結節を認め、部分切除術した。術後1年の現在、interleukin-2肝動注のため外来通院中で、胸腹部CTでは肝・肺とも腫瘍の進行はみられない。

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症例は27歳女性で、検診にて胸部異常陰影を指摘され、精査加療目的に入院となった。胸部X線では右縦隔から肺門部にかけ、境界明瞭な8cm大の腫瘤を認め、胸部CTでは前縦隔に一部低吸収域を伴う充実性腫瘤を認めた。以上より、一部嚢胞状変性をきたした胸腺腫を疑い、腫瘍および胸腺全摘術を施行した。病理組織学的に胸腺嚢腫を合併した浸潤型胸腺腫で、術後放射線照射を行った。浸潤型胸腺腫は完全摘出されれば予後は良好であり、術後32ヵ月経過した現在再発なく経過良好である。

基本情報

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胸部外科
60巻6号 (2007年6月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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