Hospitalist 5巻3号 (2017年9月)

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■感染症は,ホスピタリストの守備範囲の真ん中にある

ホスピタリストがカバーする広い守備範囲のなかでも,感染症が重要な部分を占める分野であることに異論がある人は少ないだろう。一方で,出会う頻度,疾患の多様性に比して,感染症専門医の数は1,500人に満たない(うち300人弱は小児科医1))。現在,病床数300以上の医療機関は全国に約1,500施設存在する2)が,専門医がいる施設は小児関連医療施設,クリニックを含めて約800にとどまる3)。Hospitalistの読者のなかにも,感染症専門医がいない施設で働いている方がたくさんおられるだろう。

 専門医のいる施設であっても,大部分の感染症は専門医でない医師が診ている。例えば,筆者が勤務する大学病院では,年間約3万人の入院患者の少なくとも半数以上で,静注抗菌薬が使用されているが,感染症内科がかかわるのは約1,300人,つまり数%しかない。ほとんどのケースは非感染症医が診療しており,ホスピタリストの守備範囲を考えたときに,感染症診療が重要であることを改めて納得していただけるのではないだろうか。

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近年のグローバル化により,国際旅行は今や一般的なものになっており,日本と海外とを行き来する人は年間3,600万人にものぼる。これに伴い,最近ではデング熱やジカウイルス感染症など新興再興感染症の輸入例が国内でも報告され,マラリアなどの輸入感染症による死亡例もいまだ後を絶たない。

 本稿では,海外渡航歴のある患者を正しく認識し,問診・身体所見から適切な鑑別診断を挙げられるように,輸入感染症に対するアプローチの仕方について解説する。

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近年,海外旅行者の増加傾向が続くとともに,企業の出張・観光旅行など,旅行の背景も多様化している。一方で,最近はデング熱,ジカ熱,中東呼吸器症候群(MERS*1)やエボラウイルス感染症などが,日本でも広く報道されている。これらの感染症は海外で感染するリスクがあり,以前に比べて旅行者の関心も高い。関連する情報はインターネットなどで入手しやすいが,なかには不十分な内容,誤解をまねきやすい内容,誤っている内容もあり,適切なアドバイスはこれまで以上に必要とされている。また,予防の段階からホスピタリストがかかわることで,感染症の輸入を防ぐ大きな助けとなる。

 本稿では,旅行者に対するアドバイスを行うために,どのようなリスクアセスメントを行い,どのような対策(生活指導,ワクチン接種,マラリア予防など)を提案するかをまとめる。

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近年,薬剤耐性問題は,公衆衛生上の世界的な課題として認識されている。2015年5月のWHO総会で採択された世界行動計画では,全加盟国が2年以内に薬剤耐性菌に対する国家行動計画を策定し,実行することが求められた。そのため,2016年4月,日本の薬剤耐性問題において今後5年間で重点的に取り組むべき課題と行動計画を示した「薬剤耐性(AMR*1)対策アクションプラン2016-2020」が発表された。

 本稿では,薬剤耐性問題の背景,アクションプランの概要,ホスピタリストに関連する感染予防・管理,抗微生物薬の適正使用について概説する。

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医療機関における多剤耐性菌の拡散は以前から問題視されていたが,2000年代以降,それまで主な問題であった多剤耐性グラム陽性球菌に加えて,多剤耐性グラム陰性桿菌の拡散も世界的に進行した。一方で,新規抗菌薬の開発は停滞しており,グラム陰性桿菌をターゲットとした新系統の薬物は1980年代以降開発されていない1)。このような状況から,多剤耐性菌は世界的にみて主要な健康問題であると認識されるに至り,2016年の国連総会では,耐性菌問題に関する閣僚級会合がもたれた2)

 本稿では,実臨床で問題となることが多い多剤耐性菌,あるいは検出頻度は低いが重要性が高い多剤耐性菌の疫学,耐性機序,治療などについて概説する。

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感染症を治療するうえで,免疫が機能していない場合では治療方針も変わってくる。どのようなシチュエーションのもとで免疫不全を疑うか? 基本的には原発性と二次性に分けて考えるが,二次性の場合,基礎疾患の診断と治療が鍵となる。病歴や身体所見はもちろん,検査結果なども鑑みる。二次性のほうが頻度が高いため,これを除外したうえで原発性免疫不全を診断していくことになる。

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ホスピタリストにとって,HIV*1感染症は無縁ではない。現在の日本のHIV感染症の診断パターンをみると,いわゆる「いきなりエイズ」で受診する患者は全国平均で32%程度1)と,他の先進国に比べて多いことからもわかるように,いつでもAIDS*2患者の主治医になり得るのである。

 また,過去20年間の抗レトロウイルス薬の進化により,HIV感染症は糖尿病のような慢性疾患の1つとなった。そのため,日和見感染症の治療のためにHIV感染者の診療をするというより,心筋梗塞,脳卒中,腎不全や糖尿病などの併存疾患の増悪,高齢化に伴う認知症や誤嚥性肺炎,またはHIV/AIDSとは直接関係のない悪性新生物を治療する機会が増えてくると思ったほうがよい。

 本稿では,HIVの基礎知識とともに,診断の手助けになるであろう臨床症状や代表的な日和見感染症について解説する。さらに,加齢に伴い,HIV患者で増加する,あるいは問題となる併存疾患について,ホスピタリストが注意すべき点なども述べる。

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臨床現場で最も頻度高く遭遇する「発熱」の診断および治療は,ホスピタリストにとって必須のスキルである。なかでも不明熱(FUO*1)は,ホスピタリストの診断推論を最も試される分野の1つである。

 不明熱の診療で最も重要なことは,次の5点である。

1.普段から問診・診察を重んじ,曖昧な臨床情報を明確化することで「不必要な不明熱化」を減らす。

2.曖昧な診断のもとでの抗菌薬・ステロイド治療を行わないことで,「不必要な不明熱」を生み出すことを避ける(それらがどうしても臨床上必要な治療であれば,万が一,患者の状態が悪化した際には「不明熱化」し得ることを自覚する)。

3.不明熱の定義を理解するとともに,その定義に当てはまる前から,不明性を有する発熱患者を「不明熱」と認識するように心掛ける。

4.不明熱と認識した際に,患者のもつ病歴・身体徴候を再度網羅し,「発熱+α」の情報を拾い上げるとともに,不明熱となりやすい疾患の頻度を知り,それぞれの疾患から想起される症状や所見の有無を整理する。

5.ただ闇雲に検査をオーダーすることなく,診断に必要となる検査を取捨選択して行い,診断精度を高める。

本稿では,この不明熱診療5大原則をふまえて,解説を進める。

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■骨髄炎総論

骨髄炎は,骨の破壊と腐骨形成を特徴とする最も治療が困難な感染症の1つである。特異的な所見が少ないため,腰痛や不明熱の患者において,鑑別診断に挙げ,その診断を積極的に疑う必要がある。血行性で播種する骨髄炎,および糖尿病性足感染症*1を含むすべての骨髄炎症例を考慮すると,病原微生物はグラム陽性球菌が多く,なかでも黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)とコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS*2)による感染が多い(後述)1〜3)。骨髄炎が疑われた場合,可能であれば感染症内科へのコンサルテーションを行う。

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日本紅斑熱とツツガムシ病は,どちらも治療可能な疾患であるが,外来での検査やCTなどの画像検査,血液培養からは診断されない感染症である。重症化の回避や致死率低下のためには,臨床医が積極的に疑い,早期診断・早期治療することが重要である。

 本稿では症例をもとに,日本紅斑熱やツツガムシ病をどのように疑って,診断・治療に結びつけるかを解説する。

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帯状疱疹は3人に1人が一生に一度は罹患する,よくある疾患である。高齢者や免疫不全者では特に頻度が高いこと,また,さまざまな合併症をきたしたり,帯状疱疹後神経痛では長期にわたって影響を与えることからも,ホスピタリストにとって理解しておきたい重要な疾患である。

 本稿では,帯状疱疹の症状や診断,治療に関する知識を整理し,どのように評価し,マネジメントすればよいか解説する。また,重要な後遺症である帯状疱疹後神経痛に加え,感染対策や予防についても言及する。

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糖尿病患者では神経障害や末梢血管障害により,下肢に潰瘍が生じたり感染が起こりやすくなり,重症例では壊疽に陥り,下肢切断を余儀なくされることもある。こうした糖尿病性足病変は,ホスピタリストが主治医として診療する場合や,他科との併診で診療する場合もあり,注意すべき徴候やリスク因子に加え,適切な評価・マネジメントについても知っておく必要がある。

 本稿では,2つの症例の経過を追いながら,糖尿病性足感染症(DFI)とその合併症である糖尿病性足骨髄炎(DFO)を中心に解説する。

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カテーテル関連血流感染症(CRBSI)はカテーテル挿入に起因し,全身の血流感染症に進展する病態である。これまでは,主に中心静脈カテーテルの挿入が原因となる血流感染症(CLABSI)が問題視されてきたが,近年はそれ以外のカテーテル(末梢静脈カテーテル,動脈カテーテルなど)の感染も問題になっている。

 本稿ではCRBSIの診断と治療について,カテーテル抜去の適応や,血液培養陰性化の確認の必要性,合併症への対応なども交えて解説する。また,CRBSIの予防についても説明する。

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性感染症というと,泌尿器科や産婦人科,皮膚科を思い浮かべるかもしれない。しかし,性器以外に問題を呈した性感染症患者は,内科などを受診する。性感染症は誰でも罹患し得る疾患であるということを認識し,日頃から見逃さないように注意する必要がある。

 本稿では,最近のトピックスとなっている梅毒と淋菌感染症,骨盤内炎症性疾患(PID)について解説する。

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咽頭痛を自覚しても医療機関に受診するのは10%以下といわれており1),また,医療機関を受診した患者のうち咽頭痛を主訴とした患者は1〜4%とされる1, 2)。しかし咽頭痛の原因となる疾患の鑑別は,一般的なウイルス性咽頭炎から,急性喉頭蓋炎のような急激に気道閉塞を引き起こし,適切に対処しなければ死に至る疾患まで多彩である。

 本稿では,主に成人におけるkiller throatといわれる急性喉頭蓋炎,扁桃周囲膿瘍,咽後膿瘍,Lemierre症候群(頸静脈化膿性血栓症)や,気道緊急をきたすような疾患(破傷風など)を取り上げ,これらと感冒や溶連菌性咽頭炎とを迅速に鑑別する方法なども含めて解説する。

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文部科学省未来医療研究人材養成拠点形成事業未来医療3大学合同セミナー2017の一環として,2017年7月9日に「ジェネラリストから学ぶプライマリ・ケアで役立つ身体診察」と称し,総合診療に興味のある医学生・初期研修医・専攻医・指導医を対象に,プライマリ・ケアで必要となる身体診察を集中的に研鑽するセミナーを開催しました。本事業の紹介も兼ねて,当日のセミナーの内容について報告いたします。

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基本情報

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Hospitalist
5巻3号 (2017年9月)
電子版ISSN:2433-510X 印刷版ISSN:2188-0409 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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