感染対策ICTジャーナル 12巻3号 (2017年7月)

特集 血流感染予防の最新知見が示す 血管内留置カテーテル管理の極意

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カテーテル関連血流感染症の疫学

 血管内留置カテーテルは輸液や薬剤,輸血などの頻回投与あるいは持続投与を可能にし,さらに血行動態モニタリングなどにも応用を可能にした,現在の医療で無くてはならないデバイスの一つである。一方で血管内留置カテーテルはヒトの重要な感染免疫機構の一つである皮膚のバリアを破綻させ,血管内と外界を直接接続する導線となることから,感染症がとりわけ大きな問題となる。

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 血管内留置カテーテルに関連する血流感染は古くて新しい問題である。

 2016年に,日本でも多くの施設が参考としている米国輸液看護協会(INS:Infusion Nurse Society)のStandards of Practiceがreviseされた。

 この機会に,実臨床の現場にて多数のカテーテル留置・管理に携わり感じていること,米国発のガイドラインと国内実情の差異を,感染の専門家ではない立場から述べさせて頂き,様々な御意見を頂き,議論の喚起を期待したい。

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はじめに

 血管内留置カテーテルは,治療の目的で一般的に多く使用される医療器材の一つである。そして,その技術や知識は幅広く普及し,医療現場において何らかの感染防止対対策が施されている。しかし,血管内留置カテーテル関連血流感染は医療器材使用に関連する感染症の中でも一番身体に重症な影響を及ぼしかねない医療器材であることを十分に認知していただきたい。

 血流感染(BSI)は内因性(患者由来)と外因性(環境由来)の発生要因があり,いかに外因性の血流感染をゼロにさせるかが感染管理に携わる医療従事者の課題であり,早期に発見し“改善”を行うためのサーベイランスが必要である。

 このテーマのお題を頂戴し一番先に考えたことは,「このカテーテルを使用すれば血流感染を発生させません!」そんなカテーテルがあれば良いなと頭を過ぎった。しかし,残念ながらそのようなカテーテルデバイスはない。施設をまたぎ,10年の間感染管理認定看護師(以下,CNIC)として活動しているが,自施設において導入すべき対策に優先順位を決め,いくつかの対策を遵守させるバンドル的な血流感染防止対策の実施が一番効果的であると考える。カテーテルデバイスの検証をNTT東日本札幌病院(以下,当院)の現状を踏まえて述べる。

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 院内発症の菌血症の5~10%は血管内留置カテーテル関連血流感染(Cathertel-Related Blood Stream Infection:CRBSI)が占めている。原因菌としてブドウ球菌が多く,しばしば感染性心内膜炎など複雑性菌血症の原因となり,防止すべき医療関連感染の一つである。CRBSIの細菌の侵入門戸として,短期留置カテーテルの場合はカテーテル挿入部のチューブ周囲,長期留置カテーテルでは不潔な挿入操作によるものまたはカテーテルバブを介したルーメンの内腔からの細菌の侵入が多いと言われている1)

 手指衛生,マキシマルバリアプレコーション,輸液ルートやドレッシング材の管理,必要のないカテーテルの抜去など様々な対策がCRBSI予防バンドルとして実施されているが,更にそれらに追加する対策として,今回カテーテルハブからの細菌の侵入を防ぐアルコール含有スポンジ付きキャップ(消毒剤含有キャップ)とカテーテル挿入部からの細菌の侵入を防ぐクロルヘシジン含有スポンジについて解説する。

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はじめに

 血液透析においてバスキュラーアクセスは命綱である。バスキュラーアクセスはシャントと非シャントに分類され(図1参照),透析を必要とする患者の多くはシャントを作製し治療を受ける。血液透析の基本としてバスキュラーアクセスの作製は,①自己血管によるシャント(AVF),②人工血管によるシャント(AVG),③血管内留置カテーテル,という順で選択されるべきである1)。しかし,閉塞などの予期せぬシャントトラブルや緊急に透析導入を必要とする場合など,様々な理由により血液浄化用の血管内留置カテーテルが優先的に用いられる。血液浄化用カテーテルは一般的に「緊急時ブラッドアクセス留置用カテーテル」と称され,日本透析医学会によるガイドライン1)にて「非カフ型カテーテル」と「カフ型カテーテル」の2種類に分類されている。それぞれの留置カテーテルについて,最新の情報をもとに検証する。

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はじめに

 感染制御に汎用される消毒薬は,医療関連感染の原因となる微生物を減少させ,感染症の発生を抑制することを目的に使用される。最近では,生体消毒薬のトピックスとして,血管留置カテーテル挿入や手術時の皮膚消毒薬の有効性および安全性に関する報告が話題になっている。血管留置カテーテル挿入部位の皮膚消毒は,2011年に『血管留置カテーテル関連感染予防のためのCDCガイドライン』1)が0.5%を超えるクロルヘキシジン(CHG) アルコールの使用を推奨した。また,本邦でも2015年,国公立大学附属病院感染対策協議会のガイドライン2)が改訂され,同様の推奨となっている。手術部位の皮膚消毒では,2016年にWHO『手術部位感染予防のためのグローバルガイドライン』3)がCHGアルコールの有効性について言及している。一方,新しい手術部位の皮膚消毒薬『オラネキシジングルコン酸塩液』が発売され,その効果が期待されている。そこで本稿では,「消毒薬製品の最新知見を検証する」と題して,本誌特集に関連した血管留置カテーテルおよび手術部位の皮膚消毒薬の新たな知見を整理するとともに,新規手術部位皮膚消毒薬について解説する。

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はじめに

 中心静脈カテーテル(Central Venous Cath-eter:以下CVC)は,補液や注射薬剤など血管内を結ぶ直接のルートであり,今日の医療現場で広く重要な役割を担っている。末梢静脈を用いた点滴ラインと比べると,CVCは挿入時の処置から維持・衛生管理,抜去に至るまで深刻な合併症が生じるリスクが高い。CVCを挿入する処置では,誤穿刺や皮下出血,迷走神経反射などのリスクを認識し,そのような合併症を回避しなければならない。このため患者固有の血管の部位や走行,凝固能や合併症などを理解してから適切なカテーテル材料を選定して処置を実施する必要がある。これには熟達した術者がエコーガイドで穿刺目的の血管を事前に評価するのみならず,患者の基礎疾患や状態,カテーテルの使用目的,意義を看護チーム,薬剤師,栄養士などと共に認識した上でCVCの管理を行うことが肝要である。カテーテル挿入後に病棟で必要なCVCの管理に伴う合併症として,静脈炎,血流感染,血栓症などのリスクがある。集中治療室で使用されるCVCの管理では,カテーテル関連血流感染(Catheter-Related Blood Stream Infection:以下CR-BSI)が特に深刻な合併症となりやすい。本稿では,特に中心静脈ラインから生じるカテーテル関連血流感染;Cen-tral Line-Associated Blood Stream Infec-tion:以下CLABSI)の理解とその予防・回避についてエビデンスを基に概説する。

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はじめに

 輸液の目的は,患者への水分・電解質・栄養補給に加え,様々な薬剤投与であり,現在の医療において不可欠である。輸液は,1.調製された輸液パック→2.輸液回路と混注部(ニードルレスコネクタ:以下NC))→3.血管内留置カテーテル→血管内,という大きく3つのパートから構成される連続した経路があり,輸液内容物が通過する管腔内は絶対に「無菌」でなければならない。しかしながら,時に無菌状態に破綻が起きる。回路に侵入した細菌は増殖し,血管内留置カテーテルに関連する血流感染症(CRBSI)が発生する。CRBSIの原因として,❶皮膚の常在細菌が刺入部から侵入,❷輸液ルート中のNCから侵入,❸他の感染部位から血流を介してカテーテルに付着する,の3つが考えられる1)。その割合は,❶を含む回路外が60%,❷を含む回路内が12%,由来不明が28%,輸液汚染は1%未満と報告されている2)。しかしながら,米国と日本ではカテーテルの留置期間や後述するように輸液調製環境が大きく異なり,この数字を日本にそのまま当てはめることはできない。本稿では輸液・薬剤の準備と輸液回路にあるNCについて,日本の状況と最近の話題を含め解説する。

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はじめに

 カテーテル関連血流感染(Catheter-Related Blood Stream Infections:以下CR-BSI)は,末梢静脈や中心静脈など血管内に留置されたカテーテルが原因で発生する。血流感染は,一旦発症すると重症化しやすく,治療には膨大な医療費を必要とする1)

 がん患者においては,中心静脈栄養や抗がん剤投与目的で中心静脈カテーテルを挿入する機会が多く,がん治療に伴う好中球減少など免疫力の低下によりCR-BSIの感染リスクが高い2)

 がん患者のCR-BSI発症は,CR-BSIにより予後を悪化させるリスクが高まること,さらに,原疾患の治療中断により間接的に予後を悪化させる可能性もある。これらのことから,CR-BSIの防止に努めることは,がん患者のケアにおいて非常に重要である。

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小児や新生児の特徴と成人との違い

 小児や新生児では,血管内留置カテーテルの確保に血管が細いので技術を要する。しばしば末梢静脈では子供が動かないように抑える人員や器具,中心静脈では全身麻酔が必要なことも多い。乳幼児では自己抜去のリスクもあり,固定方法も抜かれないように工夫を要する。また国内の成人のカテーテル管理と異なり,小児では痛みを避けるために逆血採血が可能であれば,血管穿刺を避けることが多く,中心静脈などのカテーテルへのアクセス回数が多い。頻回の血管穿刺によって,虐待を受けている児と同様に痛み行為に無反応になることがあり,避けられる医療行為による子供への心的外傷は避ける。

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はじめに

 近年透析患者の高齢化,糖尿病合併,動脈硬化が多くなっている。それに伴い表在静脈の荒廃により,自己血管内シャント(AVF),人工血管内シャント(AVG)作成困難,動脈表在化で返血静脈がない症例が増加している。さらに維持透析20年以上の透析歴を持つ患者が年々増加している中,カフ型カテーテルを挿入する症例も年々増えている。当院(東葛クリニック病院)では2000年からカフ型カテーテル挿入を開始し,2016年末までののべ数は598件(図1)だった。

 血管内留置カテーテルに関連した血流感染は,医療費の増大,入院期間延長の原因となる重要な医療関連感染である。そして透析医療においては,治療に不可欠であるバスキュラーアクセスを失うことになるため,生命に重大な影響を及ぼす。このことからもカテーテル管理は重要である。安全に透析治療を行っていく上でのカテーテルの感染対策について,挿入後から日常管理について述べる。

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はじめに

 外科患者・周術期患者においては,輸液や輸血,栄養管理などの目的で血管内留置カテー テル(以後カテーテル)が日常的に使用される。また,侵襲の大きい手術では全身管理のためのモニタリングとしても使用されるため, 複数のカテーテルの使用を余儀なくされる。手術侵襲という免疫力の低下に加え,複数のカテーテルの挿入は,カテーテル感染のリスクを上昇させる。そのため,周術期における血管内留置カテーテル関連血流感染(Catheter Related Blood Stream Infection:CRBSI)予 防は重要である。周術期におけるCRBSI対策の実際について,紹介する。

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はじめに

 血管内留置カテーテル由来血流感染症(Catheter-Related Blood Stream Infection:CRBSI)は主要な医療関連感染である。米国で行われたPoint-Prevalence Surveyのデータによれば,原発性の血流感染はすべての感染症のうち9.9%を占め,そのうち84%は中心静脈カテーテル由来であったと報告されている1)。本稿では,血液培養採取の重要性を踏まえ,CRBSIの診断と治療について概説する。

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基本情報

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感染対策ICTジャーナル
12巻3号 (2017年7月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1881-4964 ヴァン メディカル

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