地域リハビリテーション 13巻2号 (2018年2月)

特集 失語症者のための会話支援—失語症者向け意思疎通支援事業

西脇 恵子
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 失語症は身体障害と比べると外から見えにくい障害であるため周囲の人から理解されにくく,コミュニケーションの要になる言葉の障害であるため,社会参加がうまくいかない場合が多いのが現状です。失語症のある人が地域で生活をするためには会話を支援する人が必要です。この意思疎通を支援する人の養成は,これまでボランティアベースでされてきましたが,このたびようやく国の事業として始まることになりました。

 本特集では,各都道府県で実施されることになるこの事業に至るまでの経過と意義をまとめ,展望と課題を考えてみたいと思います。

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はじめに

 失語症者向け意思疎通支援者養成と派遣事業という失語症の人のコミュニケーション面を支援する,初めての公的なサービスが始まろうとしている。聴覚障害の人に対する手話通訳者,要約筆記者,盲ろう者向けの通訳・介助員の養成派遣に続く新しい事業である。わが国で失語症の人に意思疎通支援が必要だと公的に認められた画期的な施策である。

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はじめに

 現在,障害者にかかる福祉サービスの多くは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下,障害者総合支援法)に基づき行われている。

 聴覚障害者の利用する手話通訳者や要約筆記者の派遣,視覚障害者への代筆・代読・音訳などによる支援なども,障害者総合支援法の事業として各自治体が中心となり,実施しているところである。

 今般,新たな取り組みとして始める「失語症者向け意思疎通支援」註)も,障害者総合支援法の仕組みの中で行うものである。

 以下,新たにスタートさせる「失語症者向け意思疎通支援」をどのような仕組みで行うのか,また新たに取り組むこととなった経緯について説明する。

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はじめに

 千葉県我孫子市では2005年以降,失語のある人のコミュニケーションと社会参加を支援するために失語のある人向けの意思疎通支援者(旧名称は失語症会話パートナー)の養成を,そして2007年10月から失語のある人へ意思疎通支援者を個別に派遣する事業(以下,派遣事業)を行っている。これまでに84名が養成講座を修了し,61名が派遣事業の登録者として失語のある人に対するコミュニケーションの支援を行ってきた。

 厚生労働省は,障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)の見直しに伴い,このような事業を市町村地域生活支援事業における意思疎通支援の必須事業とする方針を立て,都道府県地域生活支援事業における「専門性の高い意思疎通支援を行う者の養成研修事業」の中に失語のある人向けの意思疎通支援者を養成する事業を新たに加えた。それに伴い,2015年に厚生労働省からの委託事業としてみずほ情報総研株式会社が行った「平成27年度障害者支援状況等調査研究事業」1)において,失語のある人の意思疎通支援者を全国一律で養成するための標準カリキュラムが作成された。この標準カリキュラムは,必修科目40時間,選択科目40時間から構成される。また,2016年および2017年には,市町村地域生活支援事業の「特別支援事業」として,この標準カリキュラムに基づくモデル事業を実施することになった。

 我孫子市の意思疎通支援者養成講座は,当初27.5時間で実施していたが,受講者のコミュニケーション姿勢や会話技術の習得の効果を検討しながら2009年から2014年までは20時間,そして2015年以降は4時間に養成時間を大幅に短縮して実施してきた。しかし,上述のような厚生労働省の方針に合わせるため,2016年に標準カリキュラムに基づくモデル事業を実施することになった。

 本稿では,そのモデル事業の取り組みについて,実施内容および結果などを報告する。

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はじめに

 失語症者やその家族にとって宿願であった意思疎通支援者(以下,会話パートナー)の養成・派遣事業が全国で開始される見通しとなった。この朗報より先,四日市市(以下,当市)では2010年度より市民活動ファンドを利用した事業を3年間,2013年度からは市単独事業にて3年間,そして,2016年度より厚生労働省のカリキュラム提示をもとにモデル事業を実施してきた。

 そこで,この8年間の事業沿革,他自治体に先んじて開始に至った経緯,そして課題などについて,当事者団体の会員であり,過去4回の養成講座講師を務めたSTの立場から述べたい。

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はじめに

 東京都世田谷区では,平成17年度より区の独自事業として,世田谷区立総合福祉センターで失語症会話パートナー(以下,会話パートナー)の養成講座を行ってきた。これまでに修了した会話パートナーは,平成29年度(13期生)を含め127名となり,区内にある10カ所以上の自主グループや訓練施設などで活躍している。世田谷区の場合,我孫子市や四日市市のような派遣制度はなく,修了後は無償のボランティア活動となるが,養成の成果として,失語症当事者と会話パートナーで運営する自主グループが増えるなど,失語症のある人の参加の場が拡大しており,地域で会話パートナーを養成する意義は大きいと考えられ,毎年養成が継続されてきた。

 こうした経緯の中で,世田谷区ではこの会話パートナー養成の経験を「失語症者向け意思疎通支援者養成モデル事業」(以下,モデル事業)の実施に生かせると考え,モデル事業の受託を申請し,平成28年度,29年度と実施することとなった。以下,世田谷区で実施したモデル事業の取り組みについて報告する。

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STの現状

 STの職能団体である日本言語聴覚士協会(以下,協会)は2000年に設立された。当初,協会にとっては,医療領域におけるSTの適正な配置を求めつつ,需要に応じられる供給体制を確立することが喫緊の課題であった。その結果,言語聴覚士法が成立した20年前と比較すると,医療領域におけるサービスの提供体制は格段に充足されてきている。しかしながら,医療費の抑制および介護保険への移行,あるいは地域包括ケアシステムの構築という行政の姿勢の変化に伴い,医療領域のみならず,福祉,保健・予防あるいは介護分野における業務がSTに期待される状況となってきている。

 STの国家試験合格者累計は,2017年に2万9,225人となった。最近の合格者数は年に1,700〜1,900人程度で,2018年3月には3万人を超える。2017年3月末(会員数1万5,948人)時点の協会会員動向1)によれば,STの男女比は男性23.5%,女性76.5%,年齢構成は30歳代44%,20歳代28%で,20〜30代が全体の72%を占めている。

巻頭言

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 「フレイル」「サルコペニア」「ロコモティブシンドローム」…,カタカナの言葉になじめない歳になりました。岩手の国保衣川歯科診療所(医科診療所・特別養護老人ホームなど介護施設との併設施設)を退職し,同所で週2,3回アルバイトをしながら亜急性期・維持期病院の2カ所で口腔回診をしています。今,歯科の重要性や必要性を感じています。巻頭言という誌面を頂戴しましたので,今まで経験した症例を紹介し,歯科との連携の必要性と問題点を記したいと思います。

 今から10年ほど前に大腿骨を骨折し急性期病院で手術し,リハ病院を経て1年3カ月後に衣川の特別養護老人ホームに88歳のK・Sさんが入所してきました。入所した時のADLは歩行不能で車いす全介助,トイレは全介助,食事は自立しムース食,入浴は機械入浴全介助,着衣は一部介助でした。口腔内は歯の根だけで,噛める歯がなく悲惨な状態でした。1年3カ月間病院に入院していながら歯科治療はなされなかったのです。4カ月かけて歯科治療が終わり,食事はムース食から普通食に食形態をアップすることができました。歯科治療終了2カ月後には,補助車を使い自立歩行できるようになりました。ADLは補助車を使い自立歩行,トイレは自立,食事は自立し普通食,普通の浴槽に一部介助で入浴,衣服着脱は一部介助と向上がみられました。

連載 訪問リハに役立つフィジカルアセスメント—“気づき”と“療法士判断”・第14回

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はじめに

 前回の米田さん(仮名)はアルツハイマー型認知症(以下,アルツハイマー)の軽度から中等度障害にかかるところ,島村さん(仮名)は重度の時期に相当すると思います。

 それぞれのアルツハイマーの旅(図)において,今いる場所がわかれば,やらなくてはならないことやこれからの準備ができます。

 米田さんの旅は少し前に始まりました。

連載 高次脳機能障害者のための脳機能アッププログラム・第2回

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 今回は,「パソコン教室」について,講師のTodoさんに解説いただきます。

連載 科学的根拠に基づいた社会参加の意義と実際・第2回

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社会参加の意義

 高齢障がい者を対象とした地域リハビリテーションにおいて,家庭や地域,社会への参加を目的とする場面は多い。臨床場面においてたびたび使用される「社会参加(Social Participation)」は,その目的を意味する概念である。

 社会参加が重要である理由の1つに,Quality of LifeやWell-being1)を例にした包括的な概念であるPatient Reported Outcome2)と関連することが挙げられる。おそらく臨床現場においても,「社会参加によって(何かが)豊かになる」といった抽象的なイメージを持っている者も少なくないだろう。

連載 そうだったのか!地域リハビリテーション活動支援事業・第2回

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表:厚生労働省の人たちの,リハ専門職の地域活動に寄せる期待についてはよくわかりました。その期待を具体的に事業化したものが,地域リハ活動支援事業だということも。

安:地域リハ活動支援事業は,平成27年度の介護保険法改正における介護予防事業の体系見直しの中で,新たに新設された事業なんだよ(図1)1)

連載 ココロとカラダの痛みのための邪道な心理療法養成講座 慢性疼痛編・第5回

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「ブロック注射が効かないくらい」私は肛門が痛いんだ!

だからもっと肛門の検査をしろ!

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次号予告/編集後記

基本情報

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地域リハビリテーション
13巻2号 (2018年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1880-5523 三輪書店

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