アレルギー・免疫 23巻5号 (2016年4月)

特集 エイズの臨床 アップデート

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 日本において,HIV感染症は,治療の進歩により診断さえつき適切な治療を受ければ今まで通りの生活が送れる慢性病になった。感染者の加齢が問題になってくるまでになっている。しかし,「次の世代にHIV感染症を持ち越さない」という意識に関しては大きく世界の後塵を拝している。これこそが,日本と世界のギャップであり,このギャップを埋めるためにも,全例治療,高リスク非感染者への予防,新しい検査体制の構築などの施策などが求められる。

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 HIV検査はHIV感染症の発症予防と流行防止のために重要な役割を果たしている。HIV感染症の診断は基本的にスクリーニング検査と確認検査の二段階から成り立っている。スクリーニング検査には様々な免疫学的検査法が使用可能であるが,早期診断のためには第四世代の抗原抗体同時検査法が推奨されている。確認検査にはウエスタンブロット法(WB)と核酸増幅法が使われている。米国では,より早期の診断を可能とするためにWBを使わない検査手順が使われ始めた。このような検査手順を我が国にも導入すべきかどうかは今後の重要な検討課題である。その他,薬剤耐性検査や指向性検査が治療薬の選択などのために利用されている。

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 HIV感染者と非感染者のカップルを集め,抗ウイルス治療の早期開始が,パートナーへの感染を予防できたことを示したHPTN052試験(www.hptn.org)のインパクトは大変大きなものであった。治療が感染を予防することから,「予防としての治療(treatment as prevention:TasP)」と呼ばれ,HIV感染予防戦略の中心に位置づけられた。昨年,公表された最終結果においても,早期に抗ウイルス治療が開始され,ウイルス量が抑制されていれば,パートナーへの感染はほとんど阻止された。

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 HIV感染症は,HIV(Human Immunodeficiency Virus)がCD4陽性Tリンパ球に感染し,これらの減少に伴い日和見感染症を発症して後天性免疫不全症候群(AIDS:Acquired Immune Deficiency Syndrome)を呈する。しかし,早期にHIV感染症を発見して抗HIV薬の多剤併用療法(ART:Anti-Retroviral Therapy)を実施することでAIDSによる死亡と関連疾患を抑えることが出来るようになった。近年,抗HIV薬の進歩により患者の健康状態の維持が容易になり,また感染拡大の予防的な手段として世界的にHIV感染症の治療はより早期に開始することが推奨されている。本稿ではガイドラインの推奨薬を中心に特徴や治療法について解説する。

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 多剤併用療法(combination anti-retroviral therapy:cART)により,感染者体内のHIV増殖を抑えることは可能となったが,体内から根絶するまでには今のところいたっていない。このことは,新規薬剤開発とともに,これまでとは異なったやり方でウイルスを追い込んでいく方法を検討する必要があることを示唆している。そこで,最近の研究報告と我々が行っている研究をもとに,CCR5阻害薬と中和抗体療法とのユニークな関係性を利用した新しい治療の方向性の提言を行いたい。

Ⅴ.HIV感染者の加齢と腎障害 西島健
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 HIV感染例は全例治療が奨められるようになり,今後はさらにHIV感染例の予後が改善し,また高齢化が進むことが予想される。HIV感染高齢者におけるcARTの選択には,合併症や内服薬の増加に伴うポリファーマシー・薬物相互作用などに対応した症例ごとの丁寧な対応が求められる。今後HIV感染症の診療においては,HIV感染症の管理に加えて,身体・精神領域も含んだ総合的な内科管理の重要性がさらに増し,総合診療的な技能や各分野の専門医との連携が不可欠となるであろう。

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 抗HIV療法の普及によりHIV感染者の予後が改善し,HIV感染者の主要な死因として,従来のAIDS指標疾患に代わり,悪性腫瘍の重要性が増している。中でもAIDS指標疾患ではない,非HIV関連悪性腫瘍が増加傾向にある。EBウィルス,ヒトパピローマウィルス,C型肝炎ウィルス等にそれぞれ関連するホジキンリンパ腫,頭頸部癌,肛門癌,肝癌などに加え,肺癌,消化器癌などの患者も増加傾向にあり,HIV感染者のマネージメントにおいて悪性腫瘍の予防,スクリーニングに留意する必要がある。

Ⅶ.免疫再構築症候群 伊藤俊広
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 有効な抗HIV療法(ART)後に感染症や炎症が出現,再燃,増悪する病態を免疫再構築症候群(IRS)と呼ぶ。発生頻度は10%前後と報告され,免疫機能の急激な回復によって生じると考えられているが,診断基準や治療法は未だ確立されていない。ARTの継続下で感染症,炎症として対処(抗生剤,消炎鎮痛剤,副腎皮質ステロイドなど)するのが基本である。IRSを発症しやすい感染症として,ニューモシスチス肺炎,結核,非結核性抗酸菌症,サイトメガロウイルス感染症,クリプトコッカス髄膜炎などが知られており,ART開始前のこれらを含めた感染症や炎症性疾患の検査,治療,予防が有用である。

Ⅷ.HIV感染と自然免疫 高橋秀実
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 HAART治療を行った患者において,末梢血中にHIV感染細胞が認められなくなった状態においても,その小腸回盲部にHIVが感染したNKT細胞が多数認められる。このことは,主たるHIVの感染標的がCD4陽性ヘルパーT細胞ではなく,Th1型細胞性免疫不全を誘発するNKT細胞であることを物語っている。本稿では,このHIV感染NKTの制御に関わる細胞がVγ1を有したγδ型T細胞であることを示した筆者らの最近の知見を紹介し,HIVの新たな治療戦略について考えてみたい。

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 HIV感染症では,HIV特異的細胞傷害性T細胞(CTL)が誘導され,体内でのHIV増殖を抑制する。しかしながら,HIV増殖抑制能を有するCTLが誘導されると,HIVは変異することでCTLからの攻撃を逃れる。さらに,変異したウイルスは,感染を繰り返すことで集団内に蓄積していく。本稿では,HIV感染症におけるCTLの役割ならびにCTLによって選択された逃避変異ウイルスの蓄積について紹介する。また,最近着目されている変異性の低い領域を標的としたCTLについても解説する。

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 HIV感染者数の増加と患者の高齢化に伴い,様々な施設においてHIV感染者と関わる必要性がでてきている。HIV感染者の診療に際しては,感染対策として特別な対応は必要なく,標準予防策の遵守が基本となる。針刺し等の血液・体液曝露の際には,速やかに抗HIV薬の予防内服を開始することで感染率をほぼゼロにすることができる。HIV曝露後予防の第一推奨薬はTenofovir/Emtricitabine(ツルバダ®)とRaltegravir(アイセントレス®)の2剤である。いざというときに慌てないために,曝露時の対応マニュアルを各施設で整備しておくことが重要である。

巻頭言

喉頭アレルギーについて 内藤健晴

連載 アレルギーにかかわる免疫学の知識 (2)

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 サイトカインはⅠ型アレルギーにおいてもさまざまの局面で重要な役割を果している。IL-4,IL-13はB細胞のIgE産生を補助する。IL-4は直接に,TSLPは樹状細胞を介してTh2細胞(B細胞のIgE産生を補助する)の分化を導く。TSLP,IL-18,IL-33は好塩基球に対しIL-4,BAFFを産生させCD154を表出させてB細胞のIgE産生を補助させる。IL-33,IL-3とIL-18はマスト細胞から化学伝達物質を放出させる。IL-3,IL-4,IL-9はマスト細胞を増殖させる。マスト細胞の産生するIL-9,IL-13は粘液の分泌をもたらす。マスト細胞は好酸球,Th2細胞,好中球,マクロファージなどを集積させ活性化するサイトカインも産生し,それらの細胞を反応に参加させる。

連載 学会印象記(108)

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基本情報

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アレルギー・免疫
23巻5号 (2016年4月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-6932 医薬ジャーナル社

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