精神看護 24巻3号 (2021年5月)

特集1 「身体拘束最小化」をしていきたいが、どうしてもできない部分。それこそを話し合おう

『「身体拘束最小化」を実現した松沢病院の方法とプロセスを全公開』を読んだ上で

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[特集の意図]

 2020年11月に『「身体拘束最小化」を実現した松沢病院の方法とプロセスを全公開』が発行され、身体拘束最小化のためのさまざまな考え方、方法が提示されました。しかしこの本を読んでもなお、現場では「それでもできない」事情や理由が残っています。

 そこでこの座談会は、さらに身体拘束最小化に踏み出していきたいという意欲をお持ちの一般科病院と精神科病院の方々に声をかけ、「現場の状況や困りごとを率直に出し合い、話し合う中で、身体拘束最小化のためにできることを見つけていこう」という趣旨で開催させていただきました。

 なお、貝田博之さんには身体拘束最小化に取り組む一歩先行く先輩として、アドバイザー的立場でご参加いただきました。『精神看護』2020年3月号の特集「松蔭病院の身体合併症病棟が身体拘束をやめることができた理由」で、貝田さんが所属する病棟が身体拘束最小化に挑戦し、結果を出すことができた経緯を解説していただいたことがあるからです。

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編集部 本日は全員に『「身体拘束最小化」を実現した松沢病院の方法とプロセスを全公開』(以下、松沢病院の本)を読んだ上で参加いただいています。座談会のテーマは、松沢病院の本を読んでもどうしても難しくてできないこと、そここそを話し合おうというものです。全国津々浦々の病院でも、全く同じ状況にあると思うので、ここで話し合われることは読者にも大変参考になると考えています。

 ではまず小貫さんから、今病院が身体拘束をめぐってどういう状況にあるのかをお話しいただけますか。

特集2 看護学生、臨地実習体験のリアル

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精神科を何も知らなかった学生さんだからこそ、書ける実習レポートがあります。

本特集は、看護学生さんが精神科の臨地実習でどういう体験をしているのかを共有させていただく企画です。

学生さんが記す新鮮な目でのかかわりには、ベテランの看護教員、臨床指導者、臨床の看護師を問わず、思わずハッとさせられるものがあるのではないでしょうか。

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実習は現場で経験してこそ

50%オンライン、50%現場で

 2020年1月、「今年はオリンピックだ」と楽しみにしていた気分も消え去るようなニュースが飛び込んできた。連日、豪華客船での新型コロナウイルス感染症関連の情報が報道され、隣の中国からは異様な光景が配信されてくる。

 本学においても、実習オリエンテーションを終えたばかりの1年生の基礎看護学実習が、実習開始2日前になって突然の延期になる(2月末)など、いよいよ対岸の火事ではなく、学校としてコロナに真正面から向き合い、取り組まなければならなくなった。

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学生の体験は看護の源泉だ

 臨床看護師の目には、実習中の学生はどのように映っているでしょうか。

 看護師は学生からしてみたら雲の上の存在です。報告の時は緊張して、自分が何をしたのか、患者がどういう行動を取ったのか、言ったのか、そのような具体的報告で終わりがちです。実習中は複雑な体験をしているにもかかわらず、自分がどのような体験をしているのか、報告でそれを語る思考のゆとりはありませんし、そもそも体験をすらすら言語化するのは困難です。そのため、学生・看護師がどういう体験をしながら臨床に存在しているのかという、人間存在の根本的な問いや、語り合いがされないまま実習が終わることも多いのも事実です。

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 本学科の精神看護学実習では、病棟実習を8日間行っています。病棟実習初日にオリエンテーションを受け、受け持ち患者さんとのかかわりをスタートさせます。概ね実習4〜5日目くらいまでに情報収集、アセスメント、看護問題(課題)の抽出を行い、それ以降は看護計画を立案し、実施、評価をしていきます。それに加えて患者さんとのかかわりの場面をプロセスレコードに起こし、検討を行います。

 学生には実習の進度に応じて複数の記録を課しています。本稿では、学生が経験したことが多く書かれている「日々の行動計画と評価および感想」と、実習の最終レポートである「ケースレポート」の中から、いい学びや体験ができたのでは、と私が感じる3人の記録を抜粋してご紹介します。

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医療者こそストレス対処をしていませんよね?

 普段から患者さんやご家族とお話する中で「ストレス対処を積極的に行いましょう」なんて言いながら、自分自身のケアはすっかり置き去りになっていることに気がついたある日、私は近所のキックボクシングジムに入会した。サンドバッグを揺らし、トレーナーの持つミットに右ストレートを打ち込み、汗を拭きながら家に帰る道、私はやりきった達成感に満ちあふれていた。

 しかし新型コロナウィルスの流行により、その生活も一変してしまった。これまで当たり前のように行っていたことができなくなった私は「ごほうび」難民となり、あっという間にセルフケア不足に陥った。そんな時考えついたのが、多くの人が行っている「自分へのごほうび」を集めてみてはどうか、というアイデアだった。

連載 たくさんの人の声、Twitterで集めました!・4

SNSの利点を活かして、同じ領域で働く仲間と交流してみませんか

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今回は精神科領域の魅力的な知恵や技術についてみなさんに意見をいただきました。僕は元々がんセンターで働いていたので、精神科領域のことはほとんど未知でした。看護に行き詰まった時、ちょうど精神科で働く友人と話す機会がありました。そこで「ストレングス」に着目するという考え方に出会い、看護だけでなく自分の人生までも豊かになったことがあります。他にも精神科にかかわるなかで、たくさんの素敵な人や考え方との出会いがありました。そういう経験をしているのは僕だけでないはずです。

精神科領域の知恵や技術は魅力がいっぱいで、他領域や生活にも役立つことが多いので、今回はお宝みたいなそうした知恵や技術をシェアできたらと思い、Twitterの声を集めてみました。

連載 精神科の患者さんの感動・驚愕・奇跡の一言・2

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 患者さんはCさん、高校2年生、女性、統合失調症。性格は明るく活発、運動部に所属し友人は多くいました。成績は中の中。3人同胞の末子。父親は会社員。母親は20歳頃より精神科に通院し、現在も通院中。

 Cさんは入院する1年ほど前より、部屋の整理が雑になり、自室でぬいぐるみの耳を引きちぎったり、写真を燃やしてお祈りをしたりと奇妙な行動をするようになりました。さらに夜遊びに出かけて朝まで帰って来なかったり、母親を罵ったりするようになりました。このようなCさんの変化に家族が心配になり、Cさんは家族に付き添われて初めて精神科を受診しました。

連載 「ゼロ」からはじめるオープンダイアローグ・5

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そもそも「否定神学」とは

 前回は、ラカン理論の否定神学的性質についてごく簡単に説明しました。簡単におさらいしておくと、私たちの心は、言語とコミュニケーションによって構成されており、それゆえにこそ「語る存在」としての人間の中核には欠如があると想定されます。人間の欲望や症状の根源にあるものは、まさにこうした欠如や空虚なのだ、という考え方です。ここまではいいでしょうか。

 ここで「否定神学」という言葉について、ごく簡単に説明しておきましょう。

連載 トラウマインフォームドアプローチが必要なケースの現実を書く・2

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 前号に引き続き、シングルマザーのAさんの話をする。Aさんが入院して身体拘束されるに至ったそもそものきっかけは人工妊娠中絶だった。彼女は周囲の意見に従う形で中絶し、その罪悪感に苛まれて精神的不調を来したのだった。

 私が中絶の記憶に苦しむ人に遭ったのはAさんが初めてではない。「子どもを殺した」と自分を責め続ける人、中絶処置の記憶がフラッシュバックする人などを思い出す。そのような人に関わる中で必要に迫られ、私は中絶体験が及ぼす影響について調べたり考えたりしてきた。

連載 トラウマインフォームドな精神保健医療福祉のパラダイムシフト・5

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意味について考えてはいけない時ほど 意味を考えてしまう

 連載も第5回となりました。真の締切が近づいてきています。当初、設定されていた締切の向こう側には、編集者が時間的なマージンを残してくれていました。それを、毎回、少しずつ侵蝕してきました。「締切トラウマ」について毎回語り、原稿を督促しにくい空気感を作り出してきたのです。隔月刊である以上、理論的には2か月ごとに書かなければならない連載を、2か月と数日、また2か月と数日、と、毎回少しずつ締切を後ろに引き伸ばして、締切の向こう側に残された時間を食い潰して生き延びてきました。

 「連載の原稿いかがでしょうか。とうとう危険水域に入ってきました。お待ちします」

連載 渡邊恭佑の、「なんでもつないじゃいます」コーナー・8

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「看護師になる」と決めたら即行動の私

 小さい頃からずっと病院が怖くて薬を飲むのも大嫌いでした。そんな自分が看護師になりたいと思ったきっかけを少しだけお話しします。

 中学生時代に遡ります。当時熱中したのがバスケットボール部で、日本代表に入ることを夢見ながら練習に励んでいました。そんな中、練習中に右眼窩を骨折し、入院に。長期入院となる中で働く看護師さんを見て、いろいろなことができてかっこいいなと思い、看護師になりたいという思いが湧いてきました。決めたら即行動の私は、高校から親元を離れ、衛生看護科に入学しました。

連載 患者さんと社会との接点を整えるシンデレラ・メイク講座・4

TPOに合わせる 新田 マリア
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つい「白浮き」メイクになってしまう

 精神科デイケアのプログラムとして実施されている「シンデレラ・メイクスクール」参加者のDさんは、もともとメイクをする習慣があり、メイクに対する意識が高く、雑誌やテレビなどの媒体でもメイクについてチェックしている様子がありました。

 Dさんはプログラム中もご自身の化粧品を毎回持参し、ファンデーションを使用していましたが、現在の肌色に対してトーンが明るすぎて「白浮き」してしまう状態でした。また、使用するファンデーションの量も多く、ベースメイクに改善の余地がありそうでした。写真は、当時のDさんのメイクをモデルさんで再現したものです(写真1)。

連載

連載 編集部がすっごくオススメする映画「これ観たほうがいいですよ!」・4

『ファーザー』 金子 力丸
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 木目が勝った無垢のフローリング、脚の細い家具、タイル張りのキッチン、銀色に輝くステンレスのオーブン、暖炉の上に飾られた現代アート。イギリスの伝統と現在が混在した広いフラット(アパートメント)の住人、アンソニー(父)とアン(娘)が、この映画の主人公である。2人が住むフラットは、父アンソニーの持ち家で、アンは年齢と佇まいから察するに、配偶者と死別したか離婚したかのどちらかのようである。

 映画は、リビングでの2人の会話から始まる。父親と同居している娘が、恋人と暮らすために家を出ていくことを父親に告げるシーンだ。自分の幸せを再び求め始める娘。だがそれは父とはそうそう会えなくなることを意味する。喪失感に囚われる父。

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医療現場でトラウマをどう扱うかをまとめた稀有な本

 ICD-11が改訂され、「複雑性PTSD」という診断が新たに加わったことにより、トラウマやPTSDに関する議論が活発化している。評者は認知行動療法とスキーマ療法を専門とする心理職だが、この数年、学会やシンポジウムで「複雑性PTSDに対するスキーマ療法」についての発表を依頼されることが激増している。とはいえ、スキーマ療法はトラウマ処理を目的とするのではなく、安定した治療関係を少しずつ形成したり、成育歴をゆっくりと振り返ったりする中で、自らのスキーマやそれに伴う感情に気付きを向け、その結果として他者と安全につながったり、セルフケアが上手にできるようになったりするという、非常に地味で地道なセラピーである。

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マンガだからこそ表現できるものがある

 おそらくこの本の読者は、作者の優しい目線にほっとすると思う。患者さんも家族も看護師さんも、優しい人たちが全ページカラーで描かれている。

 引きこもりの息子がいる父子家庭で、自分の好きなプラモデルだけ買って介護を放棄しているように見える中年の息子が、実は父のことを細かく気づかっていて、味噌汁をマグカップで出す場面。看護師がケアしていると思っていたら実は患者さんのほうが看護師を気づかっていて、心臓病をおしてドラッグストアに並び看護師のためにマスクを買ってきてくれる場面。

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トイレでコーラ

 『ぼーっとすると、よく見える—統合失調症クローズの生き方』を読んでいると、ハーモニーに通所しながらパートで働いている大仏さんと話したくてたまらなくなった。彼が来たら「職場のトイレにこもった人の本を読みましたよ」と伝えよう。

 働いている会社で、誰かが自分のことを噂したり、自分が仲間外れにされているという気持ちに押しつぶされそうになると、大仏さんは会社のトイレの個室に入って鍵をかける。そこが昼休みの彼の居場所だ。大好物のコーラを持ち込むばかりでなく、本を読んだり、弁当を食べたり、昼寝までするのだ。昼休みが終わると何事もなかったかのように出てくる。

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目次

今月の5冊

次号予告・編集後記

基本情報

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精神看護
24巻3号 (2021年5月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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