精神看護 24巻2号 (2021年3月)

特集1 ピアサポーターを活用すると、こんなに素晴らしいことが起きる

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多くの病院ではピアサポーターの活用はまだ進んでいないと思われます。

病院に入ってもらうと良いことが起きるらしい、というウワサは聞きますが、実際のところどうなのでしょう。

この特集では、ピアサポーターの活用に先駆的に取り組んできた東京武蔵野病院に、実際のかかわりの様子を紹介いただくことにしました。

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現状を見つめて

慢性期の看護が硬直し、在院日数が伸びる理由

 東京武蔵野病院は、東京23区の西北部(豊島区、北区、板橋区、練馬区)に位置し、救急急性期、地域移行、身体合併症を3本柱としている病床数619床の精神科病院です。

 私は2018年から慢性期の退院支援病棟(病床数60床)の担当となりました。その前は外来でしたので、4年ぶりの病棟勤務でした。

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ピアサポーターを病棟に迎えるにあたって

 ピアサポーターという人たちの存在を知ったのは、作業療法士の同僚がピアサポートについて話していた時でした。当事者がそのような形で活躍できるということが私の中では新鮮で、革新的に感じられました。実践の場でどのようにピアサポーターと協同していけるのかはその時はわかりませんでしたが、しかし漠然と、私の担当している病棟に合うのではないかと感じていました。

 病院内で終始してしまう精神科作業療法プログラムに違和感を覚えていた時でもありましたので、コレット美喜さんからピアサポーター導入の話を提案いただいた時は、「閉鎖的な構造が変わるかも」と思い、提案に賛同しました。病棟に新しい風が入ることで、患者さんに良い影響があるという確信だけは最初からありました。

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区からの委託事業として

 私たちが担っているピアサポーター活動。その基盤は、豊島区から委託を受けている「豊島区障害者地域生活移行支援事業」(以下、区事業)にあります。区事業では、個別支援、集団支援、ピアサポーター活動とその養成、普及啓発活動などを主に行っています。

 ピアサポーター活動の名称は「Re START」(リスタート)。ここで活動するピアサポーターさん(以下、ピアさん)の多くは、ピアサポーター養成講座を受講し、名簿に登録していただいている方です。養成講座では、ピアサポーターの役割や期待される効果、活動内容、退院阻害要因などを学ぶ座学を約2時間と、現ピアさんと受講者との交流の時間を約2時間設けています。登録したピアさんがスタッフと共に病院に訪問するなどの支援を行うと、活動費と交通費が支払われる仕組みです。

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私がピアサポートに興味を持ったきっかけ

 私が最初に入院したのは大学4年生の時でした。その約10年後、統合失調症が再燃し入院に。その入院が長期間となるなかで、作業療法の時間にピアサポーターのお話を聞く機会がありました。回復した当事者にはこのような社会参加の仕方があるのだと知り、私は興味を持ちました。

 2年後に退院となりグループホームに入居。そして病院のデイケアで出会ったピアサポーターである友人に紹介してもらって、練馬区の地域生活支援センターのピアサポーター養成講座に参加しました。

column ある日のピアサポートの現場
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東京武蔵野病院で、地域生活支援センターこかげのピアサポーターたちを招いて行われたグループワークの様子を写真で紹介します(2020年11月25日開催)。

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退院し、現在ピアサポーターになることを目標に活動を始めたという内田貴也さんと、内田さんの経過をよく知る看護師のコレット美喜さんにお話を聞かせていただきました。(編集部)

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 私たち「就労継続支援B型BaseCamp」は、東京武蔵野病院の隣駅、千川に位置して活動しています。

 精神障害をかかえる利用者(以下、メンバー)たちが、病気や苦労の経験、おのおののキャラクターを持ち寄り、あーでもないこうでもないと、笑いあったりぶつかったり、時にしーんとするなかから、発見や知恵がたっくさん生まれる空間(自称「パワースポット」)です。思わず肩の力が抜けるような「え〜!?」という嬉しい驚きを届けたいと、コロナの状況下でもオンラインイベントやグッズ販売に挑戦しています。

特集2 精神科看護をフル活用して、フリーランスとして働く

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フリーランスとして働く、しかも精神科看護のスキル1本で。

それっていったいどんな働き方なんでしょう。

今回、そうした働き方をしている3人に、以下の質問を投げかけ、自分の働き方についてご執筆いただきました。

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冒頭は、病院を辞めて独立する決意をするまでに10年かかったという坂本岳之さんです。働き方のこと、収入のこと、やりがいのこと、決意できた理由など、すべて教えてもらいました。お金だけではない人生と仕事の喜びについて深く考えさせられる内容です。

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2番目に登場いただくのは、精神科専門看護師でありつつ、フリーランスとしていろいろな病院や組織と契約し、働いている村本好孝さんです。なぜフリーランスになろうと思ったのか、そしてやっぱり気になる収入のこと、コロナ禍の今のことなど、いろいろと教えてもらいました。

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3番目は、看護師としても働きつつ、ダンス教師で子どもを教える働き方をしているシーサーさんです。この2つをどんなバランスで行き来しているのかも含めて、1週間のスケジュールを教えてもらいました。ダンス教室でも精神科看護が活きているという興味深い内容です。

連載 精神科の患者さんの感動・驚愕・奇跡の一言・1【新連載】

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 最初のエピソードは、私が看護師になって間もない1990年代のことです。まずは当時の病院の状況を簡単に説明します。

 当時の精神科病院の役割は、社会の価値や法律の狭間で、患者さんが、病院という社会の中で意義ある人生を送れるように支援することであったと思います。そのため、患者さんの楽しみとして、春はお花見、夏は盆踊り大会、秋は運動会、冬はクリスマス会などの病院内行事が1年を通してありました。特に長期入院患者さんにとって病院は社会そのものでした。社会との接点は看護師とテレビと新聞しかなく、いつもそばにいる看護師はとても大きな存在であったと思います。そのような時代、今思えば、いろいろな思いがあったであろう患者さんは、病院の中で一生を終えることを暗黙の了解として受け入れざるを得なかったと思います。

連載 トラウマインフォームドアプローチが必要なケースの現実を書く・1【新連載】

身体拘束 山田 嘉則
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謝罪を求める声

 Aさんは1歳の子を育てるシングルマザーである。子育てを手伝う母はかつて夫からの暴力を逃れてAさんたちを連れて家を出た。自身もシングルマザーだ。

 12月のある日、Aさんと母を長く支えて来た人からメールが来た。Aさんの母が、以前Aさんが入院した病院に謝罪を求めたいと言っていると。

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 最近めっきり見なくなったが、以前は街角でよくポケットティッシュ配りに出くわした。今思えばタダでティッシュがもらえるのだから、素直に受け取っておけばよかったようなものの、たいていの人はもらわずに素通りしていた。それくらい、街中はティッシュ供給過多の状態だった。

 そうなると配る方も必死である。そもそももらってもらわらないと、仕事が終わらない。毎回のように断られるのは精神的にもかなりしんどいはずだ。通行の妨げになることもあるから、舌打ちしたり文句を言ったりする人もいただろう。もらってもらうのは買ってもらうよりも大変なのではないか、という気がしてくる。

連載 たくさんの人の声、Twitterで集めました!・3

SNSの利点を活かして、同じ領域で働く仲間と交流してみませんか

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看護師として働くと、ほぼ必然になるのが夜勤です。通常なら寝ているはずの時間に働く夜勤は年を重ねれば重ねるほどつらくなり、それを理由に転職する人もいます。夜勤を1回するごとに1か月は寿命が縮むくらい身体にダメージがあると言う人もいます。一般的に夜勤入りは17時から翌朝9時半くらいまでで、休憩は2時間しかとれません。

そこで看護師の夜勤に関して工夫していることや、夜勤前後の生活パターンをリアルに調査してみようと考えました。みんなの工夫を共有することで、疲労感の軽減につながれたらと思います!

連載 渡邊恭佑の、「なんでもつないじゃいます」コーナー・7

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 タイトルを見て「看護×ディズニー」って何だ?といぶかしく感じた方もいらっしゃるかもしれません。病院をディズニー化したいわけではないのです。でもディズニーのように、働く人を「キャスト」と呼びお客さんを「ゲスト」と呼ぶような関係で「楽しく働きたいな」とは常日頃考えております。「楽しく」というのは、私の中では「スタッフが同じ目標に向かって創造力を発揮しながら前向きに働く」というイメージです。

 今回はディズニーをこよなく愛する私が、ディズニーの理念を、独断と偏見をもって無理矢理精神科看護と結びつけた内容を書いていきたいと思います。そこには患者さんと接する際の行動指針や、看護学校での講義の際や実習指導への心構えとなっているものもあります。読んでくださっている皆様に何か得てもらえるものがあればこんな嬉しいことはありません。

連載 トラウマインフォームドな精神保健医療福祉のパラダイムシフト・4

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カオスな喫茶店:コロナ特集地獄と不気味な音楽と呪いのメール

 外来を終えて、ルノアールの椅子にどかっと座りました。「ブレンド」とぶっきらぼうに注文を伝え、マスクをいったん外しておしぼりで顔をすみずみまでピカピカに磨いてから、MacBookを開きます。大量のメールが届いています。臨床業務をしている間には全くメールを返せない肉体労働者であるにもかかわらず、たとえ常勤職としてデスクワークだけに集中していても読みきれないのではないかと感じるほど、毎日たくさんのメールが飛んできます。特定の誰かが悪いわけではなく、プロジェクトやメーリングリストがあまりにも多過ぎるのです。コントロール不能で不条理な世界に対してふつふつとほとばしる怒りを嚙み殺しながら、死にものぐるいでキーボードを叩いて打ち返していきます。スマホから返信できそうなメールは移動中にひたすらポチポチ返しているので、添付ファイルがついていたりしてパソコンに向き合わないと処理できない迷惑なメールばかりが残っています。

 「連載用の原稿をお願いします。いつものごとく、時間がなくなってまいりました。読ませていただくのをお待ちします」

連載 木田っちの、こんな所に行ってみたっち。・5

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路上で雑誌を売る赤いベストのおじさん

 路上で、目立つ赤いベストを着て雑誌を掲げている人を見たことはあるだろうか。東京や大阪では比較的見る人が多いだろう。

 私は中学生の頃から、学校の近くの大通りの交差点で、凍えるような寒い日も、通学の時間帯からじっと立って雑誌を掲げているおじさんが気になって仕方がなかった。ネットで調べてホームレス状態の方が売っていることを知ってから、ついに好奇心が人見知りに勝ったある日、大学の近くの大通りの交差点に立つおじさんに声をかけた。「これ、ください」。パッと惹きつけられた表紙を指差して初めて買ったのは、夜間中学の特集をしている号だった。てっきりホームレス問題に関する雑誌だと思っていたのだが、特集テーマにまつわる充実した記事と、芸能なども含む幅広いニュースや世界の社会問題を取り上げたコラムなど、想像をはるかに超える充実した内容に驚いたことを覚えている。

連載 「ゼロ」からはじめるオープンダイアローグ・4

批判としての「否定神学」 斎藤 環
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対話実践と精神分析

 以前にもふれたように、オープンダイアローグのルーツの一つに、精神分析があります。しかし現在、対話実践の中で精神分析的な「手法」が用いられることはほとんどありません。分析の基本である「転移」「解釈」「徹底操作」のような技法は、むしろ好ましくないものとして退けられています。実際、対話実践は、反—精神分析と言ってもよいくらい、分析の発想とは距離があります。私はこの点がどうにも不可解だったので、その理由をセイックラに何度か尋ねたこともありますが、あまりはっきりした回答は得られませんでした。

 とはいえ、この連載が目指すのは、対話実践と精神分析の技法的な違いをはっきりさせることではありません。両者は、技法的には多くの対立点を含みながらも、根本の思想は共有しているのではないか。この、私なりの仮説を検証することを目指しています。

連載 患者さんと社会との接点を整えるシンデレラ・メイク講座・3

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女性のメイクは世相を反映する

 女性のメイクの流行は、景気や社会動向を反映しているといわれています。景気が良くなると太い眉や明るい色の口紅が主流となり、逆に景気が悪くなると眉が細くなる傾向があります。景気の上向き傾向や好景気への期待が、メイクに表れていると捉えることもできます。女性の顔は、時代の空気感と共に変化しているのです。

 10年単位ほどで変化していた流行は、平成の時代からは変化が加速し、4〜5年単位で目まぐるしく移り変わるようになりました。

連載

当事者研究のスキルバンク・22

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 15年前、僕が看護学生として実習中だった折のこと。この「シリーズ ケアをひらく」の1冊を初めて手に取ったと記憶している。それは武井麻子氏の『感情と看護』(2001年発行)であった。当時、実習先で自分の感情がすり減っていき、これから人を相手に仕事をするなんて到底無理なんじゃないか、「こんなのやってられるかー!」とお先真っ暗になってた時に救われた本であった。

 それからしばらくして、僕はなんとか看護師になった。少しブランクが空きながらも、継続して「ケアひら」シリーズは愛読書としてそばに居たし、またしばしばお先真っ暗になる僕の灯台的な役割を担ってくれていた。

書論

夜の語り手 藤山 直樹
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 私の読書はとても場当たり的なものだ。

 世の中の知的な動向に絶えず気を配っている人からすると、相当にずっこけている。どんな本が売れていて評判になっているのかにとても疎い。だから世の中の人たちが評価しつくした頃に、ふと手に取ってみて、これは凄い本だ、などと声を出すと、いまごろ何言ってるんだよ、みたいな声が返ってくるという経験をよくする。あるいは、一度読んで感銘を受けたのにしばらく忘れていて、後になって誰かがその本のことを言及したり世間で評判になったりしているのを聞き、ほお、面白そうな本だな、と思って手に取ると、それは以前自分が凄いと思って読んだ本だった、というようなこともある。毎日患者と会うことに忙しくて、たまたまふと出くわした泉で渇きを潤すというような按配で読書をしているせいだろう。この本で頻出する表現で言うなら、本のほうで私を拾ってくれるときしか本を読んでいないのだ。

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目次

今月の5冊

学会&イベント information

次号予告・編集後記

バックナンバーのご案内

基本情報

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精神看護
24巻2号 (2021年3月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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