書評
『大人のトラウマを診るということ—こころの病の背景にある傷みに気づく』
伊藤 絵美
1
1洗足ストレスコーピング・サポートオフィス
pp.265
発行日 2021年5月15日
Published Date 2021/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200888
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医療現場でトラウマをどう扱うかをまとめた稀有な本
ICD-11が改訂され、「複雑性PTSD」という診断が新たに加わったことにより、トラウマやPTSDに関する議論が活発化している。評者は認知行動療法とスキーマ療法を専門とする心理職だが、この数年、学会やシンポジウムで「複雑性PTSDに対するスキーマ療法」についての発表を依頼されることが激増している。とはいえ、スキーマ療法はトラウマ処理を目的とするのではなく、安定した治療関係を少しずつ形成したり、成育歴をゆっくりと振り返ったりする中で、自らのスキーマやそれに伴う感情に気付きを向け、その結果として他者と安全につながったり、セルフケアが上手にできるようになったりするという、非常に地味で地道なセラピーである。
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