精神看護 23巻5号 (2020年9月)

特集 思春期のゲーム依存、ネット依存

  • 文献概要を表示

[この特集は……]

スマートフォンなどのデジタルデバイスは私たちの生活に大きく入り込んでいます。

便利だから使っている、と私たちは思っていますが、一方で、それなしには生活に不安を感じるようになった今、私たちはすでに「依存」状態にあると言えなくもありません。

そんな、大人でも制御が難しいデジタルデバイスですが、今回はそれを、子ども時代に与えることの危険性、そしてそれが思春期以降に及ぼす影響について各研究をもとに解説いただきました。

さらになぜハマりやすいのか、その理由も解き明かされます。

  • 文献概要を表示

1.依存の構造。そして愛着障害

子どもの依存問題は大人の意識の問題です

 私は2019年度末まで、県内唯一の思春期病棟を有する山梨県立北病院に勤務し、思春期症例とアルコール依存症患者さんのみを新規患者として診察するという特殊な業務を受け持っていました。

 その中でここ数年顕著になってきたのが、思春期症例の中で、ゲーム依存やスマホ依存、ネット依存などの依存症の問題をかかえる人が増えていること。そしてその依存の度合いが成人のアルコール依存症患者さんよりも深刻なのではないか、ということでした。

  • 文献概要を表示

1.依存の原因:24時間いつでも操作可能になってしまったこと

 今の時代、ほとんどの人がスマートフォン(以下スマホ)をお持ちだと思います。スマホでなくとも、携帯電話も持っていないという人はごく稀ではないでしょうか。スマホの元来の目的は電話、つまり通話であったと思いますが、技術の発達とともに少しずつ機能が追加され、いつの間にかSNSという付加機能が主機能に取って代わったように見えます。

  • 文献概要を表示

 冬の気配が漂い始めた昨年12月半ば、町の集会所に私たち研究チーム3名とアシスタント4名が集まりました。この日、いよいよ日本で初めての試み、精神障害当事者が、研究者の行う研究に当事者の立場からアドバイスするというJ-SUGAR(Japan Service Users Group Advising on Research)がスタートするのです。

 イギリスで始まったSUGAR*1を日本でも作ることが、私たちの夢でした*2。当事者主体が叫ばれながら、保健医療サービスを提供する側と受ける側のギャップ、横にというより何かしら縦に広がっているこのギャップを、小気味よく埋められるのではないか、そんなワクワクする思いと、うまくいくのかだろうかという不安とが混在していました。本稿では、日本でのSUGARの展開について報告します。

連載 斎藤環氏による読書会『開かれた対話と未来』 専門職はオープンダイアローグにどうかかわったらよいか・3【最終回】

  • 文献概要を表示

斎藤:ここで、オープンダイアローグのロールプレイをやってみたい方を募集したいと思います。挙手いただけますか。……6人いらっしゃる。では1人がクライアント役になり、どういう問題に悩んでいるかを決めてください。残り5人はスタッフ、家族、関係者です。じゃあ今から5分間で、誰がどの役をやり、どんな設定なのかを簡単にすり合わせてください。

(5分待つ)

 オープンダイアローグはご本人たちの自宅で行うのが理想ですので、この場面は自宅とします。家族と関係者は先に座っていて、そこへ我々スタッフが訪問した、ということにしましょう。ではロールプレイを始めたいと思います。

連載 トラウマインフォームドな精神保健医療福祉のパラダイムシフト・1【新連載】

  • 文献概要を表示

締切が守れない:トラウマの再演の予感

 この連載の初回の原稿の締切まですでに残り3日になってしまいました。トラウマインフォームドケアについて、平易なことばで、できれば「ですます調」で書いてくださいという編集者の依頼に沿って書きはじめています。けれど、どうも「ですます調」が自分にしっくりこず、ここまでの内容の全くない数行を書くだけでも、すでに何度も書き直しています。このまま書き進めることができるのか、暗澹とした気分です。書けないかもしれません。

 「ですます調」で書くということは、すなわち、多くの読者を無視して難しいことばを並べるのではなく、わかりやすく読みやすい文章を書くということなのだろうと思います。わかりやすく説明するためには、意味を深く理解している必要があります。やさしく書くには知性が必要です。まだ自分でもよくわかっていないことを書こうとしているにもかかわらず、やさしく書こうとしているので、余計に書けなくなってしまっているのかもしれません。

連載 「ゼロ」からはじめるオープンダイアローグ・1【新連載】

  • 文献概要を表示

はじめに—哲学的疑問

 フィンランド発のケアの手法/システム/思想である「オープンダイアローグ」は、この数年間でかなり広く知られるようになり、支援者からも当事者からも強い関心が寄せられています。国際学会などに参加した印象からも、日本における関心が突出して高いように思われるほどです。初期から普及啓発にかかわってきた者の1人として、この状況には大きな感謝と喜びを禁じ得ません。

 私は臨床家として、オープンダイアローグの実践を4年間以上続けてきました。常にフェアであろうと努力してきたことを除いては、さして傑出したものを持たない凡庸な精神科医に、オープンダイアローグは超強力なブースターを与えてくれました。支離滅裂な妄想を語り続ける精神病の患者、かつての私ならただちに「了解不能」の烙印を押して保護室に隔離していたような患者、そうした人々とも対話を繰り返しながら、薬物の力を借りずにリカバリーの方向へ歩を進めることができるようになりました。そうした治療経験の一部については、患者さんご本人の許諾を得て報告もしてきました。

 還暦目前にして臨床技術が突然向上するとは考えにくいので、治療側の要因としては、明らかに私の所属する治療チームとオープンダイアローグのおかげ、と考えてよいでしょう。少なくとも私たちは、オープンダイアローグの有効性はすでに確立されたものと考えています。十分なエビデンスの確立や保険収載に至るまでの道のりはまだかなり先ですが、おそらく時間の問題でしょう。

 目下の私の悩みは、もはやオープンダイアローグの実践と普及の難しさ、だけではありません。自分でやっていながら、未だによくわからないことがあるのです。つまり、「なぜ対話ごときで、精神病が治るのか」という根本的な疑問です。

 確かに私たちは、複数の患者と共に、着実に回復の道を歩んでいます。オープンダイアローグがあれば、それができる。この点についての確信は揺るぎないものです。しかし「なぜか」がわからない。なぜ対話するだけで、これほどの変化が生ずるのだろう。なぜこんなことで、回復が起きてしまうのだろう。

 これはあえて言えば、哲学的な疑問です。対話とは何か、人が変わるとはどういうことか、そして「回復」には一体、どんな意味があるのか。

 私のこうした疑問に対しては、ヤーコ・セイックラの著作やミハイル・バフチンの著作に、ある程度まではヒントや答えが記されています。しかし実際のところ、私はそれらの答えにまだ十分には納得していません。ここから先は、どうやら自分で考えていくしかなさそうです。

 そういうわけで私は、この連載の場を借りて、オープンダイアローグの「思想」を可能な限り掘り下げてみようと思い至ったのです。

  • 文献概要を表示

 大学は相変わらずオンライン授業が続いている。私の担当科目は芸術だ。「感じ方を教える」というのは、大げさにいえば学生に人体手術を施すような身体的な経験で、それをZoomで行うためにはかなりの工夫が必要である。

 というのも、Zoomでのコミュニケーションは、基本「体ぬき」だからだ。もちろん相手の顔や体の一部は視覚的に見えてはいる。けれども、どうしても「そこに相手が居る」感じがしない。この「居る」感のなさは致命的で、相手に身を委ねることができず、常に緊張して主体的になれないまま、汗だけかいてどっと疲れがたまっていく。Zoomを使いながら、どうやったら「居る」感を作り出せるか? これが私の課題だった。

連載 渡邊恭佑の、「なんでもつないじゃいます」コーナー・4

  • 文献概要を表示

「外見ケアチーム」で医療の新しい価値を創造する

 医療は長い間、創傷や病気を治し、命を救うことを第一の使命としてきました。

 例えば交通事故に遭い、傷跡や色素沈着が残ったとしても、それらが治癒し、一定程度機能面が回復したら「治療終了」となるのが一般的ではないでしょうか。がん治療においても、放射線や化学療法に伴って外見上の変化が生じたり、病変部分の切除後にはボディイメージの変化が伴います。

連載 精神科に入職して初めて働く時に、やったほうがいいこと、やらないほうがいいこと・9

私が患者さんから学んだ「精神科仕事術」

  • 文献概要を表示

■時々は立ち止まって自分のこれからについて考えよう

▷不安になった時こそ、働く基本に戻ろう

 これまで経験したことのない新型コロナという感染症により、私たちは当たり前の日常生活を失うという事態を経験しています。こうした経験をすると、自分は今のままでいいのだろうかとか、何か新たな行動をしなければ、といった考えが浮かんで落ち着かなくなるかもしれません。

 私自身について言うと、「こんな時こそ働く基本に戻ろう」と考えました。これまで当たり前だと思い気にも留めなかったあれこれに感謝し、さらに良くしようとする気持ちをもって、今できることに専念する。そのような考えを持ったら、激しかった心の揺れが治まるのを感じました。読者の皆さんも、揺れ動きが激しい時こそ働く基本に戻ろうと意識すると、ぶれない強さをもって仕事を続けられるかもしれません。

連載 うんこあるある・9

  • 文献概要を表示

食事を拒否するなんて、様子がおかしい

 認知症で癒着性イレウス既往のある患者さんは、いつも食事(高濃度栄養食)を楽しみにしているのですが、その日の昼ご飯は頑なに「いらない、いらない」と拒否しているとスタッフが言っています。私は何かおかしいなと直感的に思い、その患者さんの所へ行きました。そこにはバイタル測定をしているスタッフがいて、やはり「いつもと違って何か変なんです」と言います。血圧は低く、身体に力を入れ、閉眼し渋い表情をしています。スタッフに排便状況をたずねると、「昨日排便はあった」と言います。

 腹部の観察をしてみたところ、腹部の緊満がありました。排便があるのにおかしいなと思い、「直腸診をしよう」とスタッフと準備をしました。グローブを二重にして潤滑剤をつけて、いざ指を入れてみると、便は降りていて触れるが硬い! 嵌入便か?と思いました。触れるのだけれど、摘出できない。直腸壁に指を添わせてゆっくり便の大きさを確認します。拳くらいの大きさがありそうでした。

連載 木田っちの、こんな所に行ってみたっち。・3

  • 文献概要を表示

 今回、ひきこもる人たちへの支援の形を知りたいと考え、次の方々にお話を伺った。①精神科認定看護師の山根俊恵さんを中心に、山口県でひきこもり支援を行う「NPO法人ふらっとコミュニティ」(以下、ふらっと)と、そこにいらした支援者・当事者の皆様、②ひきこもり当事者グループ「ひき桜」in横浜の運営メンバーでひきこもり経験者の割田大悟さん、③ひきこもりがちでも立派に働く私の友人のみつやさん、である。

連載 セルフケア看護モデルを使って、自分らしくより幸せに生きることを支援する・1【新連載】

  • 文献概要を表示

トラウマがあり自傷を繰り返す患者への看護

《事例の基本情報》

Aさん

年齢:19歳 性別:女性 診断名:PTSD

保健種別:国民保険

教育背景:高校中退 職業:無職

家族構成:父44歳 母と離婚してから別居。

 母39歳 スーパーでパート勤務。

 現在は、母と2人暮らし。

身体既往:アトピー性皮膚炎

連載 大牟田市がインスパイアする[ケア×暮らし×人間]・3【最終回】

  • 文献概要を表示

 前号(2020年7月号)では、「ポニポニ文化会議」★1で哲学者・國分功一郎さんと対話した回を紹介したが、今回は伊藤亜紗さん(東京工業大学准教授・美学)と村瀬孝生さん(宅老所よりあい代表)がゲストの回★2を紹介しよう。2人の話や語り口は、「障害や老い」と「健常」との違いを差別的な意味で際立たせるのではなく、むしろそれぞれのリアリティの豊かさに満ちていて、とても面白く、また不思議な感じもする。老いや障害を巡る話が、こんなに可笑しく感じられるのは、どうしてなのだろう。今回はそんな問いから、お2人の話をまとめてみたい。

連載

--------------------

目次

今月の5冊

次号予告・編集後記

基本情報

13432761.23.5.jpg
精神看護
23巻5号 (2020年9月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月16日~11月22日
)