連載 間の間・14
Zoom版《4分33秒》—……ティラーン……4万7900円……わりに少しなるんで……えー!……けじゃないすか
伊藤 亜紗
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1東京工業大学IIR未来の人類研究センター
pp.391
発行日 2020年9月15日
Published Date 2020/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200785
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大学は相変わらずオンライン授業が続いている。私の担当科目は芸術だ。「感じ方を教える」というのは、大げさにいえば学生に人体手術を施すような身体的な経験で、それをZoomで行うためにはかなりの工夫が必要である。
というのも、Zoomでのコミュニケーションは、基本「体ぬき」だからだ。もちろん相手の顔や体の一部は視覚的に見えてはいる。けれども、どうしても「そこに相手が居る」感じがしない。この「居る」感のなさは致命的で、相手に身を委ねることができず、常に緊張して主体的になれないまま、汗だけかいてどっと疲れがたまっていく。Zoomを使いながら、どうやったら「居る」感を作り出せるか? これが私の課題だった。
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