特集2 アルコール離脱期に必要な身体ケアと看護を理解しよう
[1]アルコール離脱症候群 看護編
安積 美保
1
1元・東京アルコール医療総合センター
pp.45-50
発行日 2007年7月15日
Published Date 2007/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100419
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治療への第一歩をどう支えるか
■患者さんは激しく揺れ動いている
アルコール依存症の患者さんが治療に至る経緯はさまざまです。一般的な身体疾患とは異なり、患者さん自身が自主的に飲酒問題を自覚し、率先して受療行動に至るケースは決して多くありません。依存という病理の特性により、家族や会社、福祉担当者などの力動に影響を受け、社会的関係性の破綻を目前にしてようやく治療動機を得るという場合が最も多いのです。患者さんの状態によっては意思確認が困難な場合もあり、そうしたときは医療保護入院の形態で治療を開始することもあります。
それゆえに、このアルコール離脱期にある患者さんは、生命の危機に直面しているだけでなく、自分自身の存在が脅かされるような心理的危機にも直面しています。治療を開始した患者さんからは「もう酒はやめる」「酒なんてこりごりだ」と断酒の決意を示す声が聞かれますが、その本音は、否認や不安、しらふで自分の飲酒問題と向き合うことへの恐れ、そして飲酒欲求などに支配され、大きく激しく揺れ動いているのではないでしょうか。
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