FOCUS
暴力に対して援助者はどこに立つべきか―『医療職のための包括的暴力防止プログラム』の発行に際して
向谷地 生良
1,2
1北海道医療大学
2浦川べてるの家・浦河赤十字病院
pp.60-67
発行日 2005年7月1日
Published Date 2005/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100122
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
“防力”としての暴力
一般の暴力と「障害としての暴力」
一般的社会でみられる暴力と、統合失調症など精神障害を抱えた当事者が陥る「障害としての暴力」のあいだには、どんな差異があるだろうか。
一般社会においてみられる暴力は意図的かつ計画的な側面があり、ある意味で暴力という手段を当事者が主体的に選択したかたちで現実化する。それに対して統合失調症などの精神障害を抱えた当事者の「暴力」は、むしろ逆である。病状や症状の勢いに主体性を喪失してしまった状況か、あるいは、自らの中に蓄積され抑圧された不全感がはけ口を求めて噴出するかのように、自分に対するコントロールが困難になった状況の中で勃発するといってよい。そこを取り違えると、対応に根本的な差異が生じてしまう。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.