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はじめに――慢性疾患ととらえることで見えてくるステージ分類
本質的な治療法が確立されていない疾患を含め、すべての慢性疾患の臨床において、セルフケア、そしてセルフケアに向けてのコンプライアンス、アドヒアランスは重要な意味をもつ。慢性的な経過をたどることが多い統合失調症においても、患者の療養行動は大切になってくる。実際、統合失調症の療養に対して、薬物維持療法、病態や治療に関してわかりやすく正確な情報提供を行なうための心理教育、福祉的アプローチなどが、それぞれ一定の関係を保ちながら発展を遂げてきた。
さて身体医学における慢性疾患においては、例えば糖尿病療養において典型的にみられるように、食事療法、血糖自己測定、インスリン療法など患者のセルフケア行動が重要で、セルフケア行動の変化を援助するための介入が行なわれる。援助は患者の疾患理解の程度、治療経過に応じて行なうことが重要で、援助の指針を与えるモデルも開発されている。
しかし統合失調症に関しては、そのようなモデルは筆者らの知る限りない。統合失調症の援助モデルがこれまで検討されてこなかった背景には、私見ではあるが表1に示したような諸事情があったと思われる。
しかし近年、新規薬物の開発のみならず、さまざまな心理教育、社会福祉の実践が進み、さまざまな知見が集積されつつある。統合失調症に関しても、慢性疾患として援助の指針を与えるモデルを提示して、介入のあり方を検討していくことが必要な時期に入ったといえよう。
本論では、「統合失調症患者の“療養行動に対する動機レベル”に応じた医療者のかかわり方」というテーマに関して、まず、➀身体医学で用いられている、患者の疾患理解の程度、治療経過に応じた援助の指針を与えるモデルを紹介し、➁統合失調症を対象にした治療経過モデルの必要性を述べ、➀で紹介したモデルを参考に統合失調症患者向けに筆者らが試作したモデルを紹介する。最後に、➂本論のテーマと関連のある症例を報告させていただく。
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