精神看護 21巻6号 (2018年11月)

特集 認知症高齢者へ、こんな対応の工夫により身体拘束をせずに乗り切っています

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病院での身体拘束がデータ上増加しています。

これは今まであやふやだったものも身体拘束として報告するようになったためという説もあり、増えているのではなく、もともと多かったし、実際の身体拘束はもっと多いだろうとも言われています。

ただ、身体拘束が減っていない理由として確実に言えるのは、認知症患者の入院が増えたことです。

スタッフは誰も、やりたくて自由を奪っているわけではありません。

「縛るしかない」と思い込み、“必要悪”として“仕方なく”行っているのだと思います。

しかしそれにより自らの自尊感情も下がり、患者さんへのケアが逆に増え、患者さんからの悪感情を受け……という悪循環に陥っています。

そこでこの特集では、認知症高齢者が入院してきた場合でも、身体拘束をせずに治療と看護を実践できるようになった病院に、そのやり方、発想の転換、実現できた経緯、試行錯誤などを教えていただきました。

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 患者さんを目の前にして思います。身体拘束は「やむを得ない」ことなのでしょうか。

 医療や看護を受ける立場である患者さんの尊厳よりも、医療者側の安全が優先されていることはないでしょうか。医療安全を理由に身体拘束を容認していることはないでしょうか。

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経験知の共有を願って

 最初に断っておきたい。この先記すことは、ある急性期病棟の“経験則”に基づいた、認知症高齢者の回復を支えるために身体拘束を用いずに対応する方略である。決してエビデンスによって裏付けられたものではない。しかしながら、これらの方略を用いることによって、実際に概ね目標を達成することができていたことを踏まえると、異なる臨床状況でも用い方を工夫さえすれば、利用可能な“経験知”なのかもしれない。そう願いつつ筆を執りたいと思う。なお、認知症高齢者に対するケア・働きかけそのものについてはさまざまな文献で示されている。細部については、それらを参照されたい。

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診療報酬による「身体拘束最小化」への誘導

 高齢化の進展と共に認知症高齢者の入院が増加している。急性期病院(看護配置7対1及び10対1)では、認知症をもつ患者の入院割合は約2割を占め、そのうち、半数以上がBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:行動・心理症状)を有しており*1、身体合併症の治療だけでなく、認知症高齢者の中核症状およびBPSDへの対応能力を高め、身体拘束を防止し、認知症高齢者の尊厳を保障することが急務の課題となっている。

 診療報酬でも、医療機関は身体拘束を減らす方向に誘導がなされている。2016年の診療報酬改定では「認知症ケア加算」が新設され、身体的拘束を実施した日は、当該点数が40%減額となるペナルティが課せられるようになった。また、2018年の診療報酬改定では、看護補助加算や夜間看護加算の算定において、「入院患者に対し、日頃より身体的拘束を必要としない状態となるよう環境を整えること」「また身体的拘束を実施するかどうかは、職員個々の判断ではなく、当該患者に関わる医師、看護師等、当該患者に関わる複数の職員で検討すること」といった身体拘束などの行動制限を最小化する取り組みを行うことが要件となっている。

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 これまで筆者は5年余り開放病棟に所属し、そこで看護を実践してきたのだが、ひょんなことから昨年末に閉鎖病棟に行くこととなった。そこでの取り組みはさまざまにあるが、筆者が関係した半年の成果の1つに“安全ベルトの廃止実現”が挙げられる。この取り組みを読者と共有し、他施設でも実践できるようにすることが本稿の目的である。

 安全ベルト廃止に至る看護実践を分析するため、本稿の前半では社会心理学的な視点から論じてみたい。後半はその分析をもとに、実際にどのようなことを病院で実践したのかを紹介する。

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方略の立て方

 阪和いずみ病院(以下、当院)は1965年に設立された。2018年11月1日に新病院への移転を控えており、現在の444床から678床に増床予定である。

 増床にあたりその前から看護職員の増員を図っていったのだが、それによって安全ベルトの使用が減ることはなかった。ある時その状況を見た看護部長がこう言った。「安全ベルトの使用が減らないのは“マンパワーが不足しているから”というのが“言い訳”だというのがよくわかった」。私はそれに対して「そうですよ。では別の方法で、安全ベルト廃止を試みてみましょう」と応え、看護部長の許可を受けたうえで、病院としての安全ベルト廃止の取り組みを始めることになった。環境調整を行いながら、いくつかの方法によってスタッフ1人1人に行動の変容を促し、安全ベルトの廃止を実現した。本稿ではその取り組みを具体的に紹介する。

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 肌が綺麗な日や化粧がうまくできた日は、自信がついて堂々としていられたり、外に出ていく気になったり……。メイクは心に大きな影響を与えることを、多くの人が知っています。

 メイクの持つそんな力によって、精神・身体・知的・発達に障害のある人のソーシャルスキルを高め、自己肯定感や自尊感情を高めよう、そして社会参加、ひいては就労支援につなげよう、そんな試みを続けている企業があります。無添加主義の化粧品・栄養補助食品のメーカーである株式会社ハーバー研究所です。

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1. オープンダイアローグと「人間主義」

今、必要なのは人間主義の再定義だ

 本稿における「人間主義」とは、あらゆる価値観の源泉として「人間」を想定する思想のこと、としておく。むろんこの言葉にはハイデガーやフーコーをはじめとする多様な批判があることは承知している。ポストモダン思想はある意味では旧弊な人間主義へのアンチをつきつけたし(「人間の消滅」)、昨今のAIバブルでは「ポストヒューマン」なる言葉も当然のように流通している。この背景には「人間」という概念が、いまや無駄に「粒度」が粗い言葉である、とするような誤解がある。もう少しで脳をネットワークに接続できそうな現代社会を理解するには、「人間」という古臭い概念の耐用年数はとうに過ぎている、というわけだ。

 しかし思想の価値を「治療に役立つかどうか」で判定する筆者の偏頗な考えのもとでは、「人間主義」の価値はますます高まっている。その意味で、今必要なことはそれを廃棄することではなく、再定義することだろう。

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ガチの夫婦の悩み

お金の問題について相談したら根本はもっと深いところにあるとわかり……?

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「依存症によって引き起こされるさまざまな害を減らす」。それがハームリダクション

 「ハームリダクション」という言葉は、英語をそのままカタカナにしたもので、直訳すれば「害(ハーム)」を「減らすこと(リダクション)」です。何の害を減らすのかというと、「依存症によって引き起こされるさまざまな害を」です。

 国際ハームリダクション協会によれば、ハームリダクションとは「合法・違法にかかわらず精神作用性のあるドラッグについて、必ずしもその使用量は減ることがなくとも、その使用により生じる健康・社会・経済上の悪影響を減少させることを主たる目的とする政策・プログラムとその実践である」*1と定義されています。

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 毎年、お盆の時期になると子どもを連れて夫の実家に帰省する。掃除の仕方、料理の仕方、何につけその家ならではのやり方というものがあるものだ。

 それは会話の作法もいっしょ。長い時間を共に暮らしてきた家族同士の会話には、それこそ阿吽の呼吸というものが存在する。親戚といえども、わずか数日の滞在で、その暗黙の流儀にチューンナップするのは容易なことではない。「異文化」を感じる瞬間だ。

連載 訪問看護で出会う“横綱”級ケースにくじけないための技と型、教えます・9

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 今回は、本人がリカバリーに向けて試行錯誤を繰り返し、その試行錯誤が周りを振り回す行動に見えたケースです。たいていこうした場合、スタッフは本人の強い押しにやられてしまうか、あるいは状況確認のみで終わってしまい、調子悪化時に何もできなかったりすることが多いかと思います。

連載 これが長谷川病院のセルフケア看護モデルをベースにした看護だ・2

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患者さんの何に目を向けるのか

 ここ10年ほどの間に、当院では急速に急性期化が進み、患者さんが病院にいる時間が大変短くなりました。以前だったら、この時間に起きてくるのはAさんだとか、このドアの閉め方はBさんだと音を聞いただけでもわかるような関係や時間がありましたが、そうした関係性が持ちにくくなってきている現状があります。

 患者さんには1人1人異なるストーリーがあります。家族から独立し一人暮らしを始めたけれども休息が必要になり入院した患者さん、うつ状態で何日も食べたり飲んだりできずに入院した患者さん、幻聴に左右されて自殺企図を起こした患者さんなど。私たちはそうした患者さん1人1人に対して、ケアをしていく手がかりとして入院時に患者さんの状態・情報を知ろうと努めます。そのためのフォーマットが表1の「入院時看護情報収集用紙」です。

連載 MSEを「穴埋め式看護記録」で練習してみよう・2

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あなたがこのケースの担当者だったら、と考えながら読んでください

 今回は双極性障害、躁病相にある30歳代の男性患者さんです。あなたがもし担当看護師で、患者さんとこのような会話をしたら、どのような情報を得て、アセスメントをし、どのように看護記録に記載するでしょうか。

連載 栄養学的アプローチと精神科看護・1【新連載】

血糖と精神との関係 高原 健一
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糖質を下げるためのホルモンはインスリン1種類だけ

 今回は糖が人の身体にどんな影響を及ぼすのか、そして低血糖症とは何かについて、お話ししたいと思います。

 血糖値とは、血液中のブドウ糖の値です。ブドウ糖は、私たちの身体を構成する細胞のエネルギー源として重要な役割を果たしています。車がガソリンを燃料にして働くように、私たちの身体は血液中のブドウ糖を基本的な燃料の1つにして動いています。ですので、食後に限らず空腹時でも、一定量以上が常に血液中になければなりません。

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「栄養型うつ」とは

—「栄養型うつ」という言葉を初めて聞きました。

 これは「栄養の問題が原因のうつ状態」があることを1人でも多くの方に知ってほしいという意図で、私が作った言葉なんです(図1)。精神医学上の病名ではなく、あくまでも状態を示すものです。臨床の現場で使えば、栄養とうつが密接にかかわっているということが伝わりやすいと思うのですが、いかがですか?

 この言葉を使って、私は予防と治療の観点で、栄養面がとても大切だということを広めていきたいと思っているんです。

連載

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目次

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次号予告・編集後記

精神看護 第21巻 総目次

基本情報

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精神看護
21巻6号 (2018年11月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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