特集 市販薬オーバードーズ 自力での苦痛緩和と見えにくいSOSに私たちはどう応えるか
SOSの旗を燃やすのか—販売時確認や規制は、言葉が通じない体験を重ねた未成年たちにどう映るだろう
鈴木 大介
pp.117-121
発行日 2025年3月15日
Published Date 2025/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134327610280020117
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あの17歳の少女は何が違ったのか
深々と冷え込む12月の曇り空の下、アポイントから3時間以上遅刻して現れたその17歳の少女は、薬物乱用の当事者だった。極めて小柄で中学校に入ったばかりにしか見えない幼い顔なのに、シルバーアッシュに染めた髪が妙に似合って感じたのは、その声が酒焼けしたように低く掠れていて、目が合うとその大きな黒目でじっとこちらを凝視してくる様に、賢者か何かみたいな落ち着きを感じさせたからだった。
「起きたんですけど、すぐ動けなくて。昨日の記憶とかなんもなくて、ってもそれはいつもなんだけど。昨日も(薬物)食っちゃったんで、すみません」

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