精神看護 22巻1号 (2019年1月)

特集 オープンダイアローグと中動態の世界

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 2018年9月23日秋分の日、シンポジウム「オープンダイアローグと中動態の世界」が、オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)主催のもと、東京大学駒場キャンパスで行われた。

 中動態とは、能動態(する)や受動態(される)では言い表せない行為のあり方を示す態のこと。かつては言語の中枢にあった中動態だが、現在は片隅でかろうじて使われているにすぎない。この言語的地殻変動にはどんな意味があったのか……。

 中動態に注目が集まるきっかけを作ったのは、哲学者・國分功一郎氏(東京工業大学)が著した『中動態の世界—意志と責任の考古学』(2017年、医学書院)だ(同書は2017年に小林英雄賞を受賞している)。当日は、國分功一郎氏の基調講演を直接聞けるとあって、定員450名の大教室は事前予約だけで満席となった。

 シンポジウムは國分氏の講演のほか、ODNJPの共同代表である斎藤環氏(筑波大学)、高木俊介氏(たかぎクリニック)、石原孝二氏(東京大学)が、オープンダイアローグ、あるいは中動態について、それぞれの視点と立場から考察を発表した。

 本特集では、國分氏の講演を再現するとともに、それとリンクする内容となった斎藤環氏の講演を掲載する。

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 ただいまご紹介にあずかりました國分功一郎と申します。よろしくお願いします。

 『中動態の世界』についてODNJPでシンポジウムを開催していただけるということで、すごく嬉しいのですが、他方「大事になっちゃったな」みたいな気持ちでけっこう当惑しております。僕としては単に頑張って部屋でしこしこ書いていたんですが……わりと売れてまして(笑)。こうなると責任が出てきちゃったなぁと。それで今日はその責任を引き受けなくちゃいけないと思って参りました。

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 筑波大学の斎藤環と申します。非常にすばらしい講演の後でなかなか気が引けるんですけれども(笑)、まず与太話から始めます。

 中動態のことを医学書院の編集者の白石さんから最初に聞いた時、私は國分さんが最後におっしゃっていたように「無責任の体系を強化する」と考えて、やや批判的なところがあったんです。当時はまだ私はオープンダイアローグにハマる前で、ヤンキーの研究とかしていたんですが、ヤンキーのエートス(行動原理)というのはまさに中動態なんですよ。『中動態の世界』のサブタイ取るをもじって名付けるならば、「アゲと気合の考古学」という感じでしょう。

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 シンポジウム「オープンダイアローグと中動態の世界」に行ってきました。参加者は450名で満員札止め。5日前にはチケット入手不能という盛況ぶり。「オープンダイアローグ」と「中動態」の直接コンタクト、しかも『中動態の世界』の著者、國分功一郎さんご本人が登壇とくれば、各方面からオーディエンスが集まるのも納得ですね。

 そして実際、これがまあ素晴らしい体験でした。思うところがたくさんあったのですが、ここではいちばん印象に残ったことを記しておきます。

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「どうしてあんなおかしなことを言うの?」と感じる時

 多くの患者さんやその家族と接している看護師は、「どうしてあの患者さん(家族)は、あんなにおかしなことを言ったりやったりするのだろう?」と思う場面に遭遇することが少なくないのではないだろうか。もちろん精神科では病気の症状がそうさせている場合もあるだろうが、そういう場合、看護師はいずれ治療が進めば症状は軽快してくるという経験があるので、それほど困惑しない。一方、病気の症状とは全く別の次元で、非現実的で非合理的な奇異な言動を表す人たちがいる。そしてそれは精神科のみならず、普段の日常的な人間関係の中でもしばしば出会う。

 例えば、ある程度年齢を重ね、知能や発達に問題があるわけではないのに、やたらとワガママになったり、ダダをこねたり、妙に子どもっぽく振る舞う人や、いくら懇切丁寧に病気について説明しても「私がそんな病気になるわけがない。誤診だ」と病気を認めようとしない人、などである。これらの人に接する時、看護師は否定的な感情を惹起されやすいので、「変わった人」「わからず屋」などのレッテルを貼ってしまって、なんとなく積極的にかかわることを避けてしまうことがあるのではないだろうか。

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これからの看護と患者さんのために

 自閉症スペクトラム。それは自閉症やアスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害などを含む疾患概念である。これらの疾患に境界線を引くのは難しく、連続していることを「スペクトラム」という言葉は表している。

 自閉症スペクトラムに該当する人はけっこう私たちの身近に存在しており、人口の1〜2%はいると言われている。本人の特性に対して周囲が理解を示しているならば、「ちょっと変わった人」と思われつつも、日常生活を送ることは十分可能だが、本人の特性に理解を示せない環境では、人間関係に支障を来してしまうことがある。そして本人あるいは周囲の人がその人間関係にギブアップした時、精神科病院へ入院、という選択をしてこられることがある。

連載 便との戦いに終止符を。腸は畑—畑を壊さないためには・1【新連載】

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 中山病院(以下、当院)は中規模の精神科病院です。半分は認知症病棟、半分は精神科の病棟で、慢性期、長期入院の患者さんが多い病院です。

 私は日本コンチネンス協会の会員としてセミナーを受講したり、日本静脈経腸栄養学会に参加して学んだりしながら、腸と便との関係に関心をもって働いています。今回は、精神科での「便秘」について、私が看護師として経験してきたことを述べたいと思います。

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 横浜美術館には、通常の展覧会を行う展示室のほかに、充実したアトリエ施設がある。Sさんは、美術館ができた30年前から、多い時で週に5日、このアトリエに通い続けている。もともと会社勤めをしていたが、58歳で早期退職。子どもの頃からの夢だった制作に没頭する生活に入った。

 そのSさんのご自宅を、来館当初からSさんの制作をサポートしている美術館のスタッフと一緒に訪れた。横浜みなとみらいから電車とバスを乗り継いで到着したのは丘の上の住宅地。Sさんが30年間通い続けた道を、逆向きに辿り直すことになる。

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5年前から始まりました

 旭山病院(以下、当院)は開院して38年が経つ単科の精神科病院です。緑に囲まれた自然豊かな所にあります。依存症治療の専門プログラムを持っており、同じ苦労をかかえるメンバーが集まって自分のことを語ったり人の苦労を聞いたりして、回復には仲間の力が必要であるということを実感する場が多くあるのが特徴です。「自助」を大切にする文化が回復のために根付いている病院です。

 当院での当事者研究のグループワークは2013年12月から始まり、月に2回のペースで開いて今年で5年目になります。参加者は平均3〜5名前後。5年で30人以上の方が参加しました。会では参加者それぞれが自伝を語り、それをワイワイガヤガヤと、メンバー、スタッフみんなでつなぎ合わせるような作業を行っています。当事者研究の場は、自分を表現できたり、つながりを実感できたりする機会になっているようです。

連載 これが長谷川病院のセルフケア看護モデルをベースにした看護だ・3

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 前号ではどのように「情報収集」し「アセスメント」しているのかを解説し、「セルフケア上の問題点」や「目標」を立てる時の姿勢についても触れました。今回は「(看護)計画立案」について解説します。

 長谷川病院(以下、当院)では、セルフケア看護モデルに基づき、「情報収集」→「アセスメント」→「セルフケア上の問題点の焦点化」→「目標の設定」→「計画立案」→「実施」→「評価」という流れで看護過程を踏んでいます。

連載 訪問看護で出会う“横綱”級ケースにくじけないための技と型、教えます・10

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 「代理行為」とは何でしょう。

 病院内であれば、患者さんが隔離、身体拘束下にある、あるいは開放処遇が制限されている場合に、病棟から外へ出て生活用品や飲食物等を購入することかが不可能となるため、看護師が代行して買ってくるという行為があります。あるいは紛失やトラブルの可能性が高いとみなされると患者さんに金銭の所持が認められないこともあるため、看護師が所持を代行する、あるいは金銭管理をするという行為があります。

連載 MSEを「穴埋め式看護記録」で練習してみよう・3

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 今回は境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder)の20歳代の女性患者さんです。以下の患者さんとのやり取りから、どのような情報を得てアセスメントをし、どのようにMSEを用いて看護記録に記載するか、考えながら読み進めてください。

連載 武井麻子先生にこれを聞きたい・5

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 今回は、大学院で研究をしたいと考えている方からのご質問です。質的な研究に関心があり、なかでも「フィールドワーク」について知りたいということでした。

連載 栄養学的アプローチと精神科看護・2

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 私は今まで多くの患者さんの血液データを見てきましたが、ほとんどの方がタンパク質不足あるいは代謝が低下している印象があります。私たちの身体は、頭の先から足の先まで、外も中も、そのほとんどがタンパク質を主要な材料にしています。タンパク質の不足は、身体にさまざまな悪影響を与えます。今回はタンパク質についてお話しします。

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知っておきたい、栄養とうつ状態との関係

 前号はいろいろな栄養素がうつ状態に関係していることや、その理由について話をしましたが、今回は、栄養型うつには種類があることをお話ししたいと思います。表1をごらんください。

—6つのタイプがあるんですね?

 はい。「栄養型うつ」という言葉ではおおざっぱすぎて、患者さんも何をしていいかわかりません。実際には1つの栄養素ではなく、複数の栄養素に問題があることが多いですが、理解と行動を促すために、あえて大きく6つのタイプに分けて患者さんには説明しています。

連載

書論

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よみがえる救急場面

 医療現場では突発的な救急場面に遭遇することがある。看護師であれば、精神科、一般科に限らず必ず経験するのではないだろうか。精神科の臨床現場では患者の命にかかわる場面が日常的に生じるわけではないが、自傷、自殺、事故、急変など、一瞬立ちすくんでしまうような想像を絶する事例に遭遇することがある。特にスタッフの少ない夜勤帯や朝方に突発的な場面は比較的多い。

 私自身も精神科勤務に就き20年近くになるが、突発的な救急場面には何度となく遭遇してきた。例をいくつか挙げる。

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目次

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次号予告・編集後記

基本情報

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精神看護
22巻1号 (2019年1月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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