研究調査報告
慢性統合失調症患者への病識の獲得を目的とした認知行動療法
三上 勇気
1
1福井県立大学看護福祉学部
pp.22-32
発行日 2010年5月15日
Published Date 2010/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100708
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統合失調症における病識は、幻覚や妄想などが本人にとっては現実であると認識されることや、本人自身も疾患に対して偏見を持っているため病名否認などにより獲得されがたい*1。その反面、治療へのコンプライアンス*2や精神症状*3との関連が明らかになっており、精神医学領域で長く関心を集めてきた。松本*4が、日々患者に接する看護者が個々の患者に適した“時”と“言葉”で疾患や治療について話すことの重要性を示唆しているように、精神医療の一端を成す看護者も、患者の病識に対しアプローチする役割を求められていると考える。
ところが釜*5によると、看護者は病識の判断に必要な情報を積極的に収集する一方で、「病識の獲得は困難なものである」という諦めや「どうはたらきかけていいのかわからない」という戸惑いなどから、介入に対し消極的態度を取ると示唆している。つまり、看護者は病識の欠如が患者にとって重要な問題であると認識しながらも、病識に対する援助への具体的方策を見出せずに困難さをかかえていると考えられる。
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