特別記事
「新しい人間主義」の潮流、四大思想—オープンダイアローグ/ユマニチュード/ハームリダクション/ハウジングファースト
斎藤 環
1
1筑波大学医学医療系社会精神保健学
pp.532-541
発行日 2018年11月15日
Published Date 2018/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200543
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1. オープンダイアローグと「人間主義」
今、必要なのは人間主義の再定義だ
本稿における「人間主義」とは、あらゆる価値観の源泉として「人間」を想定する思想のこと、としておく。むろんこの言葉にはハイデガーやフーコーをはじめとする多様な批判があることは承知している。ポストモダン思想はある意味では旧弊な人間主義へのアンチをつきつけたし(「人間の消滅」)、昨今のAIバブルでは「ポストヒューマン」なる言葉も当然のように流通している。この背景には「人間」という概念が、いまや無駄に「粒度」が粗い言葉である、とするような誤解がある。もう少しで脳をネットワークに接続できそうな現代社会を理解するには、「人間」という古臭い概念の耐用年数はとうに過ぎている、というわけだ。
しかし思想の価値を「治療に役立つかどうか」で判定する筆者の偏頗な考えのもとでは、「人間主義」の価値はますます高まっている。その意味で、今必要なことはそれを廃棄することではなく、再定義することだろう。
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