- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
プライバシーは人間個人の尊厳を象徴するものである。新しく登場したプライバシーの包括的定義は、「個人に関する情報の流れをコントロールする権利(individual's right to control the circulation of information relating)」とされ、「自己情報コントロール権」と呼ばれている。そして、近年では急激に進行した情報化社会を背景にプライバシー保護への危機感が人々の間で抱かれ、2005年の個人情報保護法施行によって、医療の世界でもこれまで以上にプライバシー保護対策の義務と責任を負うこととなった。
このような背景から、20年程前より看護師のプライバシーセンスの測定や患者の側に立ったプライバシー意識の研究といった先行研究が行なわれはじめた。そのなかで、恵美須*1・小川ら*2は医療の場でのプライバシー侵害について、医療従事者による患者個人の意思や独自性・個別性の軽視などを要因にあげ、患者が心理的に弱者としての立場に立たされることを指摘している。しかし、これらの研究は一般科病棟入院中の患者を対象として開発された質問紙であり、それらを活用した精神科病棟における先行研究は見当たらない。精神科病棟に入院する患者は、その病の性質上、自我の脆弱性や、それに関連した適切な対人関係の構築・維持の困難さをかかえていることが多い。そのため自己情報のコントロールが不十分となり、プライバシーを脅かされる思いを多く体験していることが考えられる。そのためさまざまな要因の関連からなる患者個々のプライバシー意識を、客観的に評価できる尺度が必要だと考えた。そこで本研究は、今後の看護実践に利用し得る精神科特有のプライバシー意識尺度を、新しい包括的定義を用いた村田ら*1・3の研究成果をもとに開発し、この妥当性と信頼性および有用性について検討した。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.