精神看護 20巻1号 (2017年1月)

特集 自殺発生→これが対応心得だ

中村 創 , 三上 剛人
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 自殺が生じた後の対応や当事者のケア、再発防止対策のことを、自殺予防学では自殺の三次予防という*1。河西によれば、この三次予防には、①事故現場における対応、②ご遺族への対応とケア、③当事者となった職員への対応とケア、④当該の自殺事故の振り返りと、過去の自殺事故を含めた自殺事故分析、⑤再発防止対策があるという。

 不幸にして自殺が起きてしまった後に遺されたすべての関係者への影響を最小限度にするためには、こころのケアを行うことが必要*2だが、事故直後の混乱と処理が押し寄せるなか、当事者となった職員への対応とケアまで行き着かないのが現状ではないだろうか。

 本特集は、不幸にして病院内で自殺事故が起こってしまった際、遺された人々、スタッフに対して円滑にケアが実施されることを目的とした。管理職にあたる方は、実践の参考にしていただきたい。

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心得その1 救命優先!

救命≫現場保存だから動かしてよし!

⇒ 自殺、事故、事件、どのような状況であれ最優先されるのは救命処置である。救命処置のためには必然的に患者を動かさなければならない。

 自殺発見時、発見した病棟スタッフが救命を優先すべきか現場保存を優先すべきか迷わないために、管理者はこの原則を病棟スタッフに伝える必要がある。

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エンゼルメイクは重要なグリーフケアだ

 精神科における逝去(死亡)を考えてみると、その特徴として、「急逝されることが多い」という点が挙げられると思います。薬物療法のリスクに、精神科薬の長期連用から来る痛みの鈍麻によってご本人が身体症状を訴えず、気づきが遅れたり、薬が嚥下、循環器に影響を及ぼしたり、ふらつき、転倒するといったことが挙げられます。自ずとそれらを要因とした突然死や事故死が起こり得ますし、また稀ではありますが自殺に遭遇することもあります。

 この予想しなかった急逝が、家族やスタッフへ与えるショックや悲しみは時として大きいものがあります。そうした時に、患者さんにエンゼルケアを施し、生前の穏やかな表情に近づけることは、看護師にとっても家族にとってもグリーフケアとして有効であり、精神科看護の一部だと考えられます。

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はじめに

 日本国内における年間の自殺者数は、1998年以降、3万人を超える状況となっている(内閣府・警察庁)*1。日本医療機能評価機構*2は、精神科病院における患者の自殺の実態について一般病院に比べ2倍であることを指摘している。また、折山*3は患者の自殺に遭遇した看護師の約半数は心身に影響を受けると述べている。しかし、看護師(以下、看護者と称す)に対する支援の実施は3割程度の施設に限られ十分とは言えない*2。日本看護協会*4は事故に対する組織的な対応について医療安全管理者(以下、RMとする)や精神看護専門看護師(以下、CNSとする)を活用した支援の重要性について述べ、寺岡*5も具体的な心理的支援と管理的支援の検討を深める必要性を指摘している。

 以上より、日常的に看護者の管理にあたる看護師長(以下、師長とする)による支援を明らかにすることは、患者の自殺に遭遇した看護者に対する組織的なリスクマネジメントの基礎資料にすることができると考えた。

 本稿では、精神科病棟において患者の自殺に遭遇した看護者に対する師長の認識の現状と課題について明らかにし、課題の改善に向けての示唆を得ることを目的とする。

 なお、本研究では寺岡*6の定義を参考として、自殺とは「健康な判断力が欠ける状態の影響によって自らの生命を終わらせる行為」と定義する。患者の自殺への遭遇については、直接的遭遇から間接的遭遇までと幅広く捉え、師長の語りの中から患者の自殺に遭遇した看護者に対する支援の現状と課題を明らかにすることとした。

 また、本研究では、患者の自殺に遭遇したスタッフとして、看護師や准看護師の他に看護補助者を含むため、これらを合わせて看護者とした。

特別企画

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 皆さんは自分の看護技術をちゃんと更新していますか? その技術はもしかして「学生時代に習ったまま」「新人の時に覚えたまま」のものではありませんか?

 「これが正しい技術である」として習ったものも、エビデンスや各種ガイドラインの変化を受けてどんどんと変わっていきます。今回は昔の常識と変わってしまった看護技術を取り上げてみたいと思います。精神科でも関係が深いものばかりです。ぜひ皆さんの常識をチェックしてみてください。

連載

べてる新聞『ぱぴぷぺぽ』・113

連載 イイネ!その業務改善・7

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精神科では異物による窒息事故が多い

 喉に食べ物が詰まったことによる窒息事故は、どこの病院どこの施設でも経験するはずです。特に精神科の患者さんは、向精神薬によって嚥下機能の低下が起きている場合があり、それに加えて食事の時にかき込んだり、丸呑みするように食べる、あるいは盗食、異食がある、といった理由から、窒息事故が起こりやすい状況にあると言えます。

 窒息異物を除去するためには、背部叩打法、腹部突き上げ法、口腔内吸引法もありますが、表1に示すように喉頭鏡とマギール鉗子(または吸引器)を使って直視下で異物を取り除く方法が成功率は高くなります*1

連載 武井麻子のOh!それみ〜よ・9

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 見たところ、小学校高学年向けの絵本なのだが、重いのである。タテ・ヨコ25センチ、厚さ約2センチ、重さはゆうに1キログラム以上ある。わが家のキッチンスケールでは測りきれなかった。

 だが、重いのはその中身である。膝に載せて読んでいても息が苦しくなり、重い本がますます重くなる気がしてくる。同じような体験をしている子どもたちが読んだらどんな気持ちになるだろうか。読めない子どもももしかしたらいるかもしれない。

連載 失恋の話を聞きまくる男たち。桃山商事・16

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積極的にアプローチをしてきたはずの男性が、セックスした途端に態度が変わり、しまいには音信不通になってしまう……。「ヤリ逃げ」なんて嫌な言葉もあるように、悲しいかな恋愛ではしばしばこういったことが起こります。しかし、そこから最終的に弁護士を通じての示談交渉にまで発展するケースはそうそうないでしょう。

今回ご紹介する亜希子さん(仮名・37歳)は、マッチングサイトで出会った男性との関係に苦しみ、心療内科に通うほど体調を崩しかけたものの、弁護士を頼り、最終的に45万円の示談金を勝ち取りました。ひとつの恋愛がこのような結末を迎えた背景には、一体何があったのか。まずは、事のあらましを時系列で簡単に振り返ってみたいと思います。

特別記事 スタッフの意欲を向上させ、離職を防止するためにうちではこんなことをしています

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管理者であれば誰でも、スタッフの意欲を維持・向上させ、離職を防止したいと願っていますが、そのためにはどんな方法があるのでしょう。

「うちではこんなことをやってうまく機能しています」という2つの病院の実践を紹介します。

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2年目の危機を打破したい

 国府津病院では、2013年度より、看護部教育研修として「ナラティブ研修」を導入実施しています。これは、入職2年目の看護職員(看護師、准看護師、看護補助者)が、自分の看護を振り返り、自分の物語を壇上で語る(発表をする)という研修です。

 入職2年目は仕事にも慣れる頃ですが、ともすると“慣れ”が“馴れ”になり、日々の仕事が漫然と過ぎてしまうことを懸念していました。

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主体的に「今日の看護」を見出せる部署を目指したい

 私は、3年在籍する内科系混合病棟で、新任の看護師長補佐(以降、補佐とする)となりました。

 この病棟は緊急入院が全体の4割を占め、確定診断のつかない状態の患者が多く、人工呼吸器を装着した「急性期」から、末期がんなどの「看取り」までの幅広い病期、疾患を対象とする病棟です。スタッフにはあらゆる場面で対応できる臨床実践能力が求められますが、経験年数が7年未満の看護師が約6割を占めており、ほとんどが他の科での看護師経験がありません。そのため普段あまりかかわることのない(他科由来の)疾患を持つ患者さんの看護に対しては、消極的なかかわりしか持てずにいました。「どうしたらいいかわからない」という意識から医師任せの「指示待ち看護」になってしまい、それが部署の雰囲気として定着化しつつあることを私は課題だと感じていました。

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■松木さんとの出会い

 私は、昨年12月まで約3年半、東京都内の訪問看護ステーションで、看護師として働いていた。そこでの印象深い利用者さんが、松木さん(仮名、以下同)である。

 松木さんは、精神科病院・施設での約20年間の生活を経て、東京の東部地域にあるグループホームで生活を始められた方だ。その際、私の勤務先に声がかかり、私が担当させていただくことになった。そうして約2年と半年、私は松木さんのお部屋に訪問し続けた。

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トークイベント、ラップ、テレビ、TwitterにLINE……いま露出するコミュニケーションに共通するのは「言ったもん勝ち、聞かないもん勝ち」の風潮だ。でもモノローグを重ね合わせるだけのコミュニケーションなんて、対話って言えるのか?

AI(人工知能)の発達で意思決定はすべてゆだねてしまえば解決、なんて世界も想定できる昨今。私たちのコミュニケーションはいったいどこへ行くのでしょう。

思想界注目の新進批評家がこれからの対話論を探ります。

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 大学の研究者と診療所の医師らが「質問促進パンフレット」なる冊子を作成した。6ページにわたる冊子には、統合失調症の当事者や家族や支援者から募った“尋ねたい質問”や、精神科医が“尋ねられることが多い質問”50項目が挙がっている。「病気」「薬」「治療」「不調」「病気の見通し」「日常生活」「社会生活」「家族や支援者」「知りたいこと」「実は……(さらに聞きにくい質問を聞く)」に種類分けされている。質問の一部を紹介しよう。

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 2016年11月27日(日)、日本精神科看護専門学術集会@新潟でニプロ株式会社共催のランチョンセミナーが行われ、「セーフテック®輸液ポンプ」が紹介された。

 これまでの輸液ポンプは輸液セットを取り外す際に、最初にローラークランプを閉じてから作業する必要があった。だがアラーム発生時などは慌ててしまい、うっかりローラークランプを閉じ忘れたまま輸液セットを外してしまうこともある。これをしてしまうと、落差圧で薬液が急速注入されるフリーフローという危険なインシデントが生じる恐れがあった。

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 2013年の初め頃の話だったと記憶しています。書籍『その後の不自由』*1を一緒に作った上岡陽江さん(NPO法人ダルク女性ハウス代表)から、「オーストラリアでハームリダクションの現場を見るツアーを組むから、一緒に行かない?」という誘いの電話を受けました。当時の私には、ハームリダクションと言えば、注射器やコンドームを無料配布する海外の活動くらいの知識しかありませんでした。C型肝炎やHIV感染の拡散防止は確かに重要なことですが、日本ではそれらが深刻な社会問題にはなっていないし、違法薬物は依存症としての治療が必要だという雰囲気もまだまだ薄い。そんななかで「ハームリダクション」が今の私にとってどこまで重要なテーマなのか、ピンと来ませんでした。

 でもすぐに思い出したことがあります。上岡さんが書籍『生き延びるための犯罪』*2のゲラ刷りを見せてくれながら言った言葉です。「この間ヨーロッパの人権団体から言われたんだよ。覚せい剤依存症の人に病気だって伝えない、治療も受けさせないで隔離する日本のやり方って“人権侵害”だって」。確かにそうです。

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ポサルとマインドフルネス

 マインドフルネスのことが気になっていた。仏教の瞑想由来だとか、Googleの社員が「心を鍛える」ためにやっているとか、ヨガ・スタジオで流行っているとか、入ってくる断片的な情報から、意識高い系の人がハマっている新手の怪しげな癒しではないかと疑っていたのだ。

 「怪しげ」となると、私は俄然、心を奪われてしまう。この前も、家族で済州島に旅行に行っていたのだが、気づけば家族からはぐれて、地元のまじない師「ポサル」の小屋に入り浸っていた。「ポサル」は「菩薩」から転じた名前らしく、ピンク色の照明の下には謎の仏像や神像がいっぱい飾られていたので、あまりに怪しくてゾクゾクした。細木数子に激似のポサルに怪しい占いをしてもらって、そのあと世間話に興じていたら、あっという間に帰りの飛行機の時間になった。

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次号予告・編集後記

基本情報

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精神看護
20巻1号 (2017年1月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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