REPORT
—[取材レポート]—オーストラリアでハームリダクションを学ぶ(前編)—分断ではなく包摂を
大嶋 栄子
1
1特定非営利活動法人リカバリー
pp.65-69
発行日 2017年1月15日
Published Date 2017/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200319
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2013年の初め頃の話だったと記憶しています。書籍『その後の不自由』*1を一緒に作った上岡陽江さん(NPO法人ダルク女性ハウス代表)から、「オーストラリアでハームリダクションの現場を見るツアーを組むから、一緒に行かない?」という誘いの電話を受けました。当時の私には、ハームリダクションと言えば、注射器やコンドームを無料配布する海外の活動くらいの知識しかありませんでした。C型肝炎やHIV感染の拡散防止は確かに重要なことですが、日本ではそれらが深刻な社会問題にはなっていないし、違法薬物は依存症としての治療が必要だという雰囲気もまだまだ薄い。そんななかで「ハームリダクション」が今の私にとってどこまで重要なテーマなのか、ピンと来ませんでした。
でもすぐに思い出したことがあります。上岡さんが書籍『生き延びるための犯罪』*2のゲラ刷りを見せてくれながら言った言葉です。「この間ヨーロッパの人権団体から言われたんだよ。覚せい剤依存症の人に病気だって伝えない、治療も受けさせないで隔離する日本のやり方って“人権侵害”だって」。確かにそうです。
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