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はじめに
日本国内における年間の自殺者数は、1998年以降、3万人を超える状況となっている(内閣府・警察庁)*1。日本医療機能評価機構*2は、精神科病院における患者の自殺の実態について一般病院に比べ2倍であることを指摘している。また、折山*3は患者の自殺に遭遇した看護師の約半数は心身に影響を受けると述べている。しかし、看護師(以下、看護者と称す)に対する支援の実施は3割程度の施設に限られ十分とは言えない*2。日本看護協会*4は事故に対する組織的な対応について医療安全管理者(以下、RMとする)や精神看護専門看護師(以下、CNSとする)を活用した支援の重要性について述べ、寺岡*5も具体的な心理的支援と管理的支援の検討を深める必要性を指摘している。
以上より、日常的に看護者の管理にあたる看護師長(以下、師長とする)による支援を明らかにすることは、患者の自殺に遭遇した看護者に対する組織的なリスクマネジメントの基礎資料にすることができると考えた。
本稿では、精神科病棟において患者の自殺に遭遇した看護者に対する師長の認識の現状と課題について明らかにし、課題の改善に向けての示唆を得ることを目的とする。
なお、本研究では寺岡*6の定義を参考として、自殺とは「健康な判断力が欠ける状態の影響によって自らの生命を終わらせる行為」と定義する。患者の自殺への遭遇については、直接的遭遇から間接的遭遇までと幅広く捉え、師長の語りの中から患者の自殺に遭遇した看護者に対する支援の現状と課題を明らかにすることとした。
また、本研究では、患者の自殺に遭遇したスタッフとして、看護師や准看護師の他に看護補助者を含むため、これらを合わせて看護者とした。
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