訪問看護と介護 26巻7号 (2021年7月)

特集 退院直後の「2週間」に欠かせない在宅ケア—早期からの介入で機能回復を目指す

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入院関連機能障害は高齢者の約30%に生じると言われています。

とくに要介護の高齢者の場合、入院を契機に生活のありようが変わってしまう人も少なくありません。

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看取り前提?

 今年の2月、93歳の男性が自宅に退院してきました。もともとADLは自立されていましたが、昨年12月、自宅で倒れているところを発見されて救急搬送。脳梗塞の診断にてそのまま入院となりました。幸い程度は軽く保存的治療が選択されましたが、2週間後に誤嚥性肺炎を発症。点滴抗菌薬で15日間の治療を受けました。

 しかしその後、経口摂取の再開は難しいとされ、末梢輸液のみで経過観察、入院の長期化に伴い廃用症候群も進行しました。ご家族は「老衰もあり回復は難しい」と説明を受け、看取りを前提での退院となったのでした。

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 入院前は食事や排泄、移動が自立して可能だった方が、急性期病院に入院して自宅退院すると寝たきりや摂食嚥下障害で経管栄養となっていることが少なくない。

 生活機能が悪化した原因は、主に疾患によるものと医原性によるものに分類できる。いずれの原因でも、退院直後2週間ですべきことは、入院前と退院後の生活機能の比較と、低下した生活機能を改善できるかの見極めである。

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入院中にサルコペニアが増悪している

 高齢者、特に要介護で筋肉が衰えている方が入院すると、入院中に全身の筋肉がさらに弱ります。入院中はベッド上で過ごすことが多くなりますし、ベッド上で安静にしておくことが当然と考えられがちなためです。さらに、食事が十分に摂れないでいると、「動かず」「食べず」で筋肉が痩せていくことは想像に易いでしょう。

 入院中に筋肉量が減り、筋機能が低下しやすい人の特徴は、❶高齢、❷痩せている、❸動いていない、❹ベッド上安静が長い人であるという報告があります*1。つまり、要介護高齢者の多くは、入院前に比べ入院中に筋肉がさらに衰えてしまっていると考えられます。

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退院直後からの多職種連携介入

 ウィル訪問看護ステーションは、「全ての人に“家に帰る”選択肢を」という理念のもと、がん末期、難病、精神疾患、小児すべての方を対象とした訪問看護を行っている。東京、沖縄、岩手、埼玉に事業所を構え、中でも私が所属するウィル訪問看護ステーション江戸川(以下、当事業所)は、東京都と千葉県の境にある。

 江戸川区は人口約69万8700人、高齢化率21%と全国平均からすると低値だが、今後高齢人口は増加する見込みのある地域である。昨年度は、当事業所の利用者の約60%が医療保険の訪問看護を使用しており、比較的医療依存度が高い傾向にある。連日の処置が必要な場合や、状態変化のリスクが高い場合など、退院直後から特別訪問看護指示書で訪問することも多い。

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 医療法人社団オレンジ(以下、オレンジ)は、福井県の県庁所在地である福井市(人口約26万人)にあります。

 オレンジは、Be Happy!をモットーに複数医師・多職種による24時間365日体制の在宅医療をはじめ、外来クリニックや訪問看護ステーション、医療的ケアが必要な子どもたちの保育園や保健室、またカフェの運営など、地域づくりに関わるさまざまな活動を展開しています。

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制度設立の経緯

医療資源の乏しい地域での最期の尊厳を守る

 在宅で最後まで過ごすことを本人と家族が希望していても、地域の医療資源が乏しいために住み慣れた地域を離れ、病院や施設に入院・入所したり、死後診察を受けるために遺体を長期保存したり*1、臨終期に救急搬送したり、検視となったりする事例*2が報告されています。このような状況に対応するため、在宅での看取りにおける死亡診断の手続きの整備について、内閣府での検討が重ねられました(「規制改革に関する第4次答申」)*3

 これを受け、厚生労働省から「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」*4(以下、ガイドライン)が発出され、医師による遠隔での死亡診断等を行う制度の運用が開始されました。この制度は、受診後24時間を経過していても特定の要件(表1)を満たす場合に限って、対面での死後診察によらずに死亡診断を行い、死亡診断書を交付できるもので、ICTを活用した遠隔での死亡診断の制度は世界に例がありません

連載 スペシャリストの現場思考・第1回【新連載】

在宅看護 岩本 大希
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連載開始にあたって

「相談支援チーム」とは何か

 本連載のスタートにあたっては、まず「相談支援チーム」とは何かを説明する必要がある。ウィル訪問看護ステーションは全国に10テーションあり、スタッフ数は約100人の組織である。「相談支援チーム」は8人程度のメンバーで構成され、基本的には全てのステーションのスタッフをサポートする役割を担う。

 相談支援チームを構成するメンバーは、専門看護師や認定看護師、博士(博士課程在籍者含む)など、複数の領域の専門家たちである。自身も訪問看護実践を行いつつ、スタッフの誰かから声をかけてもらってから動く「プル型の相談支援」、または、あるスタッフ自身が気付いていなかったり、何か不安や困り事を抱えていたりしそうなときに歩み寄る「プッシュ型の相談支援」を行っている。各自の領域における学習支援(他メンバーへの最新情報の共有など)や事例検討時でのコメントはもちろん、個々のケースの日常的な悩みの相談にも応じるイメージだ。

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千葉県のJR柏駅から徒歩20分弱の住宅街。よく見ると、なんだかおしゃれな(でもどう読むのかわからない)アルファベットの看板と、「ご近所カフェ」の文字が。玄関から入ってみると、大きなリビングダイニングで、高齢者と訪問看護師が一緒にワンプレートランチを食べている……。

ヨーヨー・ありさ・サトコが訪れたのは、住宅街の一軒家の中に、高齢者の集いの場と訪問看護ステーションが同居している不思議な空間。集いの場を運営する地域のボランティアの皆さんと、訪問看護師であり研究者でもある吉江さん・北村さんにお話を伺いました。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・142

最後の11日間の意味 秋山 正子
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 10代で脳腫瘍(頭蓋咽頭腫)が見つかった女性Aさん。下垂体に張り付くような腫瘍をこそぎ取るような手術を行いましたが、術後の後遺症で内分泌機能の調整に苦労する状態が続きました。高次脳機能障害があるため、障害認定を受けて自立支援のサービスを利用しながら在宅生活を送っていました。

 長い経過の後、良性腫瘍にもかかわらず再発を繰り返し、ついに症状が悪化して入院。しかし、最後は「家族とともに」と自宅へ退院してきました。このときAさんはすでに脳死状態で、実は誰もが「病院で亡くなる」と考え、自宅へ戻るのは難しいだろうと思っていた中での退院でした。

連載 在宅療養生活支援の見える化の試行・第2回

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 訪問看護を定義するものの1つに、「法制度」があります。今回は、訪問看護の実践に関係する法制度として、在宅での医療の提供および看護師の医療における位置付けなどについて、「医療法」「保健師助産師看護師法」(以下、保助看法)とその背景を基に述べます。

 また、訪問看護は病院医療の延長ではないこと、介護保険制度により「契約」から始まるという特徴とその意味について述べ、訪問看護が経済的に評価されることについても触れていきます。

連載 訪問看護師のための判断力トレーニング・7

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 連載第1回から第6回まで、事例を通して「訪問看護師の判断力」を具体的に解き明かしてきました。これまでのケースは、主に「訪問看護師と療養者や家族」がいる場面に焦点を当ててきました。しかし、在宅ケアを支えるためには「多職種」との協働が欠かせません。

 今回は、医師、家族、ヘルパーなど「多くの人が関わる医療依存度の高い療養者」が登場し、かつ処置が必要となるケースを紹介しながら、最善解を導く訪問看護師の判断について考えます。

連載 往復郵便・第4回

においの物語 榊原 千秋 , 頭木 弘樹
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 里山に合歓の花が咲くと北陸も梅雨明けです。薄紅色の花に夏の訪れを感じます。

 頭木さんからのお便りをいただき、「におい」とお聞きして最初に思い出したのが、人工呼吸器を着けた筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんと出掛けた旅のことでした。ALSは、今日できたことが明日できなくなる進行性難病です。やがて呼吸筋に障害が及び、人工呼吸器を着けると嗅覚も失います。その方とは今から25年前に出会いました。「今、一番したいことは何ですか?」と尋ねると、「妻と一緒に能登一周旅行に行きたい」とのこと。それから間もなく、仲間を集めて能登一周旅行に出掛けました。能登半島の入口に「千里浜」という、日本海の波打ち際を車で走れる浜辺があります。その浜辺に降り立ったときのことを、彼は「微かに潮のにおいがした」と旅行記に綴っていました。

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 私は四十数年間、飽くことなく訪問看護を追い続けてきました。ナイチンゲールやヘンダーソンの理念をよりどころとしながら、訪問看護こそ看護の原点の実践であり、地域で暮らす人々の健康を守る番人であると。それでも、いまだに「訪問看護の根っこ探し」は続いています。「訪問看護は本当に役に立っていますか?」と後輩から問われると、「在宅療養者を最期まで支えているのは訪問看護師ですよ」と即答しますが、根拠や成果を細かく問われると自信が揺らいでしまうこともしばしばあります。

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目次

今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバー・年間購読のご案内

FAX購読申込書

次号予告・編集後記 米沢 , 小池
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今特集は、特に栄養(心身の!)に着目したものでした。連載「判断力トレーニング」も、実は栄養が裏テーマであったりします。文献を確認していく中で気付いたのは、多くのガイドライン等にウェブで当たれること。この領域の最前線で研究を重ねている方々の「太っ腹」をひしひしと感じました。掘り下げがいのある栄養というテーマ。今回は退院後の2週間に焦点を当てましたが、別の切り口でも取材を続けたいと思います。……米沢

2週間って長いようであっという間です。在宅医療にも、短期にガガガッと攻めていかねばならぬときがあることを本特集で学びました。それにしても、勝見さん&川田さんが紹介されている在宅退院早期在宅集中ケアチーム「ZIC」ってかっこいいですねえ。こうしたネーミングをすることが、退院直後から攻める必要性の共通理解をスタッフへと浸透させる効果があるのだろうなとも想像します。▶今月から新連載「スペシャリストの現場思考」がスタート。「普段、相談に応えている立場の人(=これをスペシャリストとしています)は普段、現場の現場ではどんなことを考えながら動いているのか」を知ろうというのが、ざっくりとした狙いの連載です。ぜひご覧ください。……小池

基本情報

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訪問看護と介護
26巻7号 (2021年7月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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