訪問看護と介護 21巻12号 (2016年12月)

特集 地域を活性化する専門看護師の力

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地域包括ケアが推進されるなか、多職種連携による地域全体を見据えた取り組みが求められています。そこに専門看護師の活躍が期待されてはいますが、地域に出て在宅医療に関わる専門看護師の数はいまだごくわずかです。専門看護師は、大学院で何を学び得て、地域での活動にどう活かされるのでしょうか。

本特集では、地域で活躍されている専門看護師の方々や、専門看護師をめざす現役大学院生のお話を紹介し、専門看護師の地域における役割と、その活躍の可能性を探っていきます。

専門看護師が地域を変える 齋藤 訓子
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「地域」の時代に専門看護師に期待すること

 日本看護協会、日本訪問看護財団、全国訪問看護事業協会からなる訪問看護推進連携会議では、2015年に「訪問看護アクションプラン2025」を策定・発表しました。このアクションプランは、2025年に向けて訪問看護事業者・事業所・職員が取り組むべき事項について、めざす姿とその達成に向けて実践すべきことを示したものです。このなかで、「訪問看護の質向上」のための方策のひとつとして、「在宅ケアに従事する認定看護師・専門看護師を増やす」ことをあげています。これは、利用者の方々のニーズが多様化、複雑化するなか、よりよい療養生活を支えるには、実践力に加え、論理的な思考で物事をとらえ、問題を解決していく力が求められているという時代の要請でもあります。専門看護師の皆さんには、主体的に看護師全体のけん引役となって、地域に出向き、地域を活性化させてほしいという期待をもって、その活動に注目しています。

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訪問看護の現場から学び直すために大学院へ進学

 もともと私は学生時代から訪問看護師になりたいと思っていたので、滋賀医科大学医学部附属病院(以下、滋賀医大病院)で5年間働いたあと、滋賀県済生会訪問看護ステーションに就職しました。医師による包括的指示のもと自分で考えてケアができるので、想像どおり訪問看護はすごく楽しかった。

 病院にいたときに糖尿病療養指導士の資格を取得したので、訪問看護師になった当初は在宅にいる糖尿病療養者への看護実践ができ、とても充実していました。ただ、在宅では利用者さんの疾患も年齢もさまざまで、より療養者さんの生活視点での看護展開が必要で、根拠をもったケアができているかどうか自信がもてずどうしたらいいかわからない事例も出てきました。

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 私が在宅看護をめざすようになったのは、15〜16年前に大学病院で勤めていたときに、経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)のチューブの管理さえできれば、自宅に帰ることができるにもかかわらず、1年間の入院となってしまったがん患者さんとの出会いが大きく影響しています。その患者さんはPTCDを在宅で管理できる在宅医や、訪問看護師が見つからず、結局大学病院に約1年間入院していました。9時消灯だとか、巡視に来られるなど生活が管理されているにもかかわらず、その患者さんはPTCDチューブの管理があるために病院のほうが安心できるといっていました。そういう患者さんを目の前にして、いろいろな医療処置が必要でも、安心して地域にいられるような選択肢が存在するべきではないかと思いました。そのために病院と同じ処置が在宅でもできることをめざしたいと思ったのです。

 もう1つは、2000年に介護保険が始まった頃は、まだまだ在宅ケアとか、地域ケアというのが、大学病院でも周知されていませんでした。病院の医療者の方々と、対等に話せる看護師が地域にいたら、患者さんたちはもっと安心できるだろうと思って、地域でエキスパートといわれるような存在になりたいと地域看護専門看護師の教育課程へ進学することを決めました。

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地域看護専門看護師としての原点

 私は、愛媛大学を卒業後に2年間の大学病院勤務を経て聖路加看護大学(現聖路加国際大学)大学院へ進学し、修了後は東京で在宅看護、とくに在宅ホスピスに携わって実践を学んできました。結婚を機に再び愛媛県に移り住み、医療法人聖愛会に就職して在宅の仕事を継続し、2005年に地域看護専門看護師の認定を受け、現在は同法人の在宅療養支援センター所長として活動しています。

 これらの活動の原点は、大学4年生の在宅看護実習にあります。脳梗塞後でほぼ寝たきりの状態の患者さんが、訪問看護や訪問リハビリを受けて回復する過程に関わることができたのですが、訪問看護や訪問リハビリのスタッフの方々が、学生である私たちの立てたリハビリ計画を取り入れてくださり、チームの一員になったような体験をさせていただきました。

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大学院での2年間の生活がどのようなものか、想像しにくいかもしれません。聖路加国際大学大学院(CNSコース)での私の実体験をもとに2年間の様子を例示します。少しでも皆様に大学院での学びと生活のイメージが伝わるとうれしいです。

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専門看護師(以下、CNS)への道に踏み出すことを躊躇させる要因として、大学院で学ぶことに対する「大変そう……」というイメージや、修士課程での学びやそこで得られるものへの具体的なイメージが描きづらいということがあるのではないかと思われます。

そこで、現在、修士課程で学ばれている方々に、修士課程への進学への思いや、修士課程の学びのなかで得られた気づきやよろこび、その意義などを語っていただきました。

連載 地域包括ケアのまちを歩く—コミュニティデザインの視点で読み解くケアのまちづくり・第4回

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生業とボランティアの環のなかで展開される「地域まるごとケア」

 滋賀県東近江市は、鈴鹿山脈を望む森里川湖といった自然豊かなまち。この地域では、職種・分野を超え、さまざまな人・団体がつながることで、地域が抱える課題を、地域のもつ資源を活かしながら解決するしくみがある。そうした地域の在り方は、地域に点在する“人的資源”を図示した「東近江 魅知普請 曼荼羅」にも垣間見ることができよう。住民それぞれの思いや願い、取り組みは、地域の緩やかなつながりによって紡がれ、ひとつのかたちになっている。

 そんな地域で生老病死をささえる1人が、永源寺診療所の花戸貴司医師。しかし、ここでも診療所の医師や看護師といった専門職が“中心”になることはなく、近隣住民や寺、警察までも含んだ「チーム永源寺」の“一端”を担うにすぎない。住み慣れた場所で最期まで暮らし続けたいと願う人々の思いは、「専門職で」ではなく、あくまで地域ぐるみで叶えている。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・87

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 2016年10月3日の読売新聞夕刊に、1週間後にオープンを控えていたマギーズ東京の様子が大きく写真つきで載りました。「がん患者 癒しの庭」と題した記事には、ちょうどボランティアで訪れていた2人の方の経験談も載せられています。

 そのうちの1人、大腸がん体験者のOさんは、この記事の取材を受け、「がんであることを、初めて本名も名乗ってカミングアウトしようと思います」とにこやかに答えられました。Oさんは、この紙面で「小川貴代美さん(53)」と表記されています。

連載 ただいま訪問看護師のキャリアラダー開発中!・第1回【新連載】

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 東京訪問看護ステーション協議会(以下、協議会)では、今、あらゆる訪問看護ステーションで活用可能な、訪問看護師のキャリアラダー開発に取り組んでいます。「私たち訪問看護師は、訪問看護の質をどうやって評価すべきか。さらに、その質をいかに向上させていけばよいのか」。その問いへの解を見つけるべく、2015年に協議会のなかに「訪問看護の質向上の為の体系的教育プロジェクト」を設置しました。プロジェクトのメンバーは、公募で募った現役の訪問看護師が中心です。訪問看護師経験年数、所属、所属での役職などもさまざまです(プロジェクト発足の詳細は、2016年8月号特別記事『訪問看護師のキャリアラダーの構築をめざして』をご覧ください)。

 さて、本連載では、現在進行中のこのプロジェクトを紹介しながら、メンバー間で悩み、議論になった部分を共有したいと思っています。そのなかには、「訪問看護師ってこういう職種だったのか!」という再発見もあり、じつに学びにあふれています。そんな第1回は、「訪問看護師のキャリア発達段階」とその開発過程について紹介します。

連載 訪問看護実践と成果のつながりを可視化するために—日本語版オマハシステムの開発に向けて・第7回

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 連載第6回では、糖尿病をもち、褥瘡のある70歳の三郎さん(仮名)のケアプラン作成(STEP4:計画と介入)までを展開しました。今回は、引き続き、STEP5:中間時点の問題の状態判定とSTEP6:問題別の成果評価について、継続看護実践の評価を中心にオマハシステムを活用した看護展開を紹介します。

 初回訪問時、訪問看護師は本人の言動から生理的問題領域《26 皮膚》、健康関連行動問題領域《41 ヘルスケアの管理》を優先度の高い問題ととらえ、計画と介入を展開しました。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第12回

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 厚生労働省は10月4日の閣議に、『平成28年版厚生労働白書』(以下、白書)を報告した。今年の白書のテーマは「人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える」。すべての人々が地域に暮らし、生きがいをともに創る「地域共生社会」をめざす考え方を示した。また、高齢になったときについて、人々が主に医療と介護に不安を抱いていることを意識調査から浮き彫りにした。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第69回【最終回】

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杏里 ついに最終回なんだね。本当にいろんなことがあり過ぎた5年8か月だったなぁ。

母さん 連載が始まってから、あんたが結婚したのもビックリしたけど、私が“おばあちゃん”になるなんて読者の皆さんもビックリ仰天したに違いないわ。父さんも“おじいちゃん”になったけど!

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 諸外国に例をみないスピードで高齢化が進んでいるわが国では今、「地域包括ケア」という言葉が飛び交い、各地域の現場が戸惑う様子だけが見え隠れしている。そんな世相のなか、時宜を得て発行された1冊である。バックパッカーとして世界の貧困・紛争地帯をさすらった経歴をもつ若者が、「農民とともに」の精神で地域医療の実践に尽くした佐久総合病院の若月俊一氏と出会い、医師として奔走するようになった経歴が本書の背景にある。

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 マギーズセンターは、がんになった本人や家族、友人たちが不安なときに予約なしに訪れて、看護師、心理士などの心理・社会的サポートを受けられる場だ。居心地のいい家庭的な建築が特徴で、チャリティで運営され、無料で利用することができる。英国で1996年に誕生し、20年間で全英約20か所と中国(香港)などにも広がる。

 その日本第1号となる「マギーズ東京」が、2016年10月10日に東京都江東区にオープンした。これを記念し、運営母体であるNPO法人マギーズ東京は翌11日にチャリティ講演会「英国マギーズセンター——20年のあゆみとサポートのエッセンス」を開催。会場となった豊洲シビックセンターには、一般市民や医療関係者などおよそ300名が集まった。

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 日本エンドオブライフケア学会(理事長=人間環境大学副学長・島内節氏)の設立総会が、10月23日(日)、学士会館(東京都千代田区)にて開催された。

 同学会が設立されたのは2016年7月。「すべての人に質の高いエンドオブライフケア」を実現していくことを目的とし、「人権としてのエンドオブライフケアの具現化」と「市民と多様な分野のケア実践者・教育者・研究者の参画と協働」を、学会の理念・方針に掲げる。

カラーグラフ 終える命 つなぐいのち・第21回【最終回】

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※本連載は、本文のみ無料でお読みいただけます。

 写真は、冊子版でのみご覧いただけます。

 永源寺地域を含む滋賀県東近江市ではFEC〈フード、エネルギー、ケア〉の自給自足率をあげる地域づくりが進む。業種職種、産官学民の枠を超え、地域の一員として人々がつながってさまざまな取り組みを主体的に重ねてきた。

 たとえば、全国に広がった「菜の花エコプロジェクト」。転作田に菜の花を植え、その菜種油は家庭や学校給食で使い、油かすは肥料や飼料に、廃食油は回収しせっけんや軽油代替燃料にリサイクルする。

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今月の5冊

ニュース—看護と介護のこのひと月

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次号予告・編集後記 小林 , 小池
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「先駆者となるには、橋となれ」これは、小説『霧に橋を架ける』(キジ・ジョンスン著、創元SF文庫)の最後に引用されていた「ウェールズのことわざ」です。今回の特集を通じて、この言葉の含蓄をかみしめました。激流や深い渓谷など次への到達が困難な地点も、知識・経験が豊富な達人なら渡ることができる。しかし、多くの人が安全・容易に渡るためには、そこに「橋」をかける必要がある。

専門看護師は困難や課題を見極め、多くの人がそれを乗り越えられるように研究や方法を考えて、各関係機関との協働・連携を橋渡しし、実行できる。つまり、先駆者の素養が培われている方々なのだと思いました。…小林

マギーズ東京がオープンしました。センター長は、本誌連載の著者・秋山正子さん。まさに「もっとやさしく、もっと自由に!」を体現されています。マギーズは、がんによる影響を受けたすべての人が、予約なしにいつでも訪れることができます。これはつまり、“サポートをする側”にとっては「いつ、どんな悩みをもつ人が訪れるのかがわからない」ということ。その点で、病院で行なわれる「相談支援」とも異なり、サポートをする側には、より即興的な態度・関わりが求められることになります。「ケア」「支援」「サポート」——。マギーズの実践は、そういったものの本質に一歩迫るものになるのでは!?と、熱視線を送っています。…小池

基本情報

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訪問看護と介護
21巻12号 (2016年12月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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