訪問看護と介護 22巻1号 (2017年1月)

特集 グリーフケアを考える—終末期のケアから、地域への働きかけまで

  • 文献概要を表示

死は亡くなる本人だけの出来事ではなく、家族を中心とした親しい者にとっても大きな出来事です。その出来事がもたらすもの、それは大切な人との死別による悲嘆(=グリーフ)です。

大切な人との死別をこれから経験する/した方へのサポートである「グリーフケア」について、在宅ケアの担い手には一体何ができるのか。地域に根差し、生前から死後まで継続的に利用者・家族と関わっていける立場だからこそ果たせる役割があるのではないか——。そんな前提に立って、本特集を組みました。

  • 文献概要を表示

 突然だが、地域に根差した看護職というとどんな人を考えるだろうか? 訪問看護師や保健師は、地図を広げ、日々、家庭を訪問し、ケアを提供し、地域や近隣の最新情報を得ているかもしれない。診療所の看護師は、近隣に住む人々の病気や困りごとに向き合っている。また、地域包括支援センターや高齢者施設の看護職もいるだろうし、そこでケアマネジャーとして働く方もいるだろう。そうした看護職もまた、高齢者を中心に近隣に住む方々の顔が浮かぶのではなかろうか。地域を知る、地域に根差した看護職は、それぞれの場で、それぞれの立場で、地域の人々を見守る役割を果たすといえる。

 住民と日々の暮らしから関わり、関係性を築いていく看護職こそ、「グリーフケア」のよき提供者となるだろうと考えられる。本稿はその前提に立ち、グリーフケアとは何かを整理し、地域に根差した看護職がどのようなグリーフケアを実践できるか、さらにそれを充実させていくためにどう関わり得るのか展望したい。

  • 文献概要を表示

 在宅緩和ケアを主人と相談して決めました。自宅で1週間しか過ごせませんでしたが、決めたあとの主人はいら立ちもなくなり、穏やかに受け入れていったように思います。午後の優しい日射しのなか、住み慣れた自宅で、手を握って看取ったそのときを思い出すたび、寂しいですが、前向きに頑張れるように思います——。

【訪問看護師が行なうグリーフケア】

  • 文献概要を表示

 訪問看護パリアンは、両国国技館や東京スカイツリーで知られ、今なお江戸文化が色濃く残る東京都墨田区を拠点とするステーション(機能強化型Ⅰ)です。「医療法人社団パリアン」グループを母体としたクリニック(在宅療養支援診療所)、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所、ボランティアグループなどを含む統合的なチームの一角として、各専門職と協働しています。

 当ステーションの利用者は、2016年10月時点で39人、うちがん末期は28人で、毎月10人程度の看取りに関わります。患者の多くはがん末期であり、がんに伴う多様な苦痛を抱え、ADLの急激な変化を認めます。そのため、医療者による迅速で柔軟な対応と確実な症状緩和が欠かせません。クリニックとは密に連携を図りながら、看護師10人(常勤)で24時間365日ケアを担います。なお、パリアンの全がん患者の約9割以上が最期まで自宅で過ごし、亡くなっています。

  • 文献概要を表示

 私の所属する訪問看護ステーション「なでしこ」は、1995年に開設された奈良市で3番目に当たる老舗のステーションです。法人母体は急性期と緩和ケア病棟をもつ病床166床の地域の病院であり、関連施設としてもう1か所の訪問看護ステーションと、居宅介護支援事業所である「ケアプランセンター」と介護老人保健施設、地域包括支援センターがあります。

 私たちのステーション事務所は、住宅街のなかに構えています。「利用者や家族が喜ぶ看護と、職員が明るく働ける環境で地域に根づきたい」「どのような方にも気軽に相談に来てもらえるマグネットステーションをめざしたい」と地域に開かれたステーションを意識しています。そのため、定期的に地域の住民の方や事業所を招いての勉強会などを事務所内で行なったり、地域のサロンやイベントにも積極的に参加したりし、「地域に必要とされる訪問看護ステーション」として訪問看護以外にもいろいろな活動を企画しています。

  • 文献概要を表示

 楽患ナース訪問看護ステーションは、緩和ケアを中心とした在宅看護を実践するステーションとして2010年、東京都足立区に開所しました。この足立区は、23区内でも珍しく大学病院がない区でありながら、大学病院の密集地である文京区などへのアクセスが良い地域です。そのため有名病院に体力が続くぎりぎりまで治療に通い続け、ADLが低下していよいよ動けなくなると、近隣の中小規模の病院へ入院する……という住民の方が多い特徴があります。

 所長の私は緩和ケア病棟での勤務経験があり、在宅看取りを希望する方には在宅緩和ケアの提供者になりたいという思いが当初からありました。今年で開所から7年目になりますが、これまで160件以上の在宅看取りに関わらせていただきました。早期からの緩和ケアにも関わりたいという思いも強く、近隣の大病院と連携して、がんの治療が終盤に差し掛かった患者さんへの訪問看護を積極的に行なうことで、療養場所の決定や治療の継続の意思決定支援に関わることを大切に活動しています。

  • 文献概要を表示

 当ステーションは、1980年に東京都新宿区の市ヶ谷で佐藤智医師が始められたライフケアシステムでの「在宅ケア」の精神を受け継ぎ、老人訪問看護制度が発足した1992年12月、医療法人春峰会立白十字訪問看護ステーションとして活動を開始しました。

 私が訪問看護に携わるようになったのは2003年2月からで、すぐに訪問看護の魅力に引き込まれました。2009年2月からは所長として、スタッフにも人々の生き方を支援する訪問看護の素晴らしさを感じながら働いてもらえたらと思い実践を積み重ね、もうすぐ14年目を迎えようとしています。

  • 文献概要を表示

 当ステーションは、東京都小平市に位置する、地域に開かれた在宅ケアをめざす複合施設「ケアタウン小平」内にあります。施設としてのケアタウン小平は株式会社暁記念交流基金が開設したものです。住宅ホスピアケアを提供しようとしているケアタウン小平チームは、NPO法人「コミュニティケアリンク東京」が中心になって2005年に活動を開始しました。小さな子どもから高齢者を問わず、がんなどの疾病をもち終末期にある方といった地域社会でさまざまな困難に直面している人々を支援し、「在宅ホスピスケアを通じた地域づくり」を目的にしています(表)。同敷地内には、当ステーションのほか、クリニック、デイサービスセンター、居宅支援事業所などを備え、医療・介護の連携はスムーズなものになっています。

 当ステーションは24時間365日体制で、スタッフは看護師7人(常勤5人、非常勤2人)、理学療法士1人。介護保険を利用されている方もいるものの、利用者の多くは終末期の方です。多い月では7〜8人の看取りがあり、年間90人を看取る年もありました。また、がんの方の割合が高いのも特徴で、2016年11月1週目時点で71人中19人の利用者さんが該当します。

巻頭インタビュー ケアのヒュッテ・10

  • 文献概要を表示

認知症の人が暮らすグループホームで、褥瘡を治し、地域を巻き込みながら、利用者の人生に思いを馳せて精神の安定を図り、看取りもする“最期まで元気で過ごせる”ケアが展開されている。長く病院にいて、そこではあり得なかった介護力に驚いた井上由紀子さんと、実践者の守谷とき子さん、大塚純子さんに話をうかがった。

ほっとらいん ふろむ ほんごう

  • 文献概要を表示

 第6回日本在宅看護学会学術集会が、11月19日(土)・20日(日)に武蔵野大学武蔵野キャンパス(東京都武蔵野市)において500名弱の参加者のもと開催された。学術集会長は、同大学看護学部教授の酒井美絵子氏。今回のテーマは「地域の平穏を看護の力で——在宅看護学の体系化から」。

  • 文献概要を表示

 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)が主催する「SFC Open Research Forum」が、2016年11月18日に東京ミッドタウン(東京都港区)で開催された。同イベントは、SFC内の研究所のさまざまな研究プロジェクトについて、展示やワークショップ企画などを通じ、社会に広く紹介するもの。このなかで企画されたシンポジウム「みんなでつくろう豊かな高齢社会——高齢者の居場所づくりをめざして」(コーディネーター=慶大看護医療学部教授・太田喜久子氏)では、高齢者が自分らしく過ごせる場をいかに実現するかが議論された。

連載 地域包括ケアのまちを歩く—コミュニティデザインの視点で読み解くケアのまちづくり・第5回

  • 文献概要を表示

地域住民がいろいろなかたちで関わることで、ハンディのある人の暮らしを支える東近江地域。では、この地域において、医療者はどのようなスタンスで住民に関わっていくのだろう。「その人の生活の邪魔をしてはいけない」。花戸貴司医師がそう語る真意は——。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・88

  • 文献概要を表示

 前回も書きましたが、マギーズ東京が2016年10月10日、東京都江東区豊洲にオープンしました。このことがテレビニュースでも取り上げられ、全国の多くの方の目に触れることになりました。

 訪問看護を続けてきたたくさんの仲間たちがオープンを喜んで、祝いの言葉とともに、「見たよ!」「いよいよだね〜。身体に気をつけて、もうひと踏んばり、がんばって!」など、さまざまなエールを送ってくれました。故郷の友人からも「年をとっても夢を追いかけてがんばっている姿を見て、自分ももう少しがんばってみようかと励まされました」とメッセージが届きました。

連載 ただいま訪問看護師のキャリアラダー開発中!・第2回

  • 文献概要を表示

 前回、プロジェクトで作成した訪問看護師の発達段階の表を紹介しました。この発達段階を決めるまでの議論は行ったり来たりしながら、ゆっくりと積み重ねてきました。時間をかけてメンバーが共通してもっている訪問看護師のキャリア発達段階のイメージをようやくひとつのかたちに落とし込むことができました。

 では、どのような議論があって、この発達段階に至ったのか。今回はそのエピソードを紹介します。

連載 訪問看護実践と成果のつながりを可視化するために—日本語版オマハシステムの開発に向けて・第8回

  • 文献概要を表示

日本版オマハシステム開発の意義

 2016年9月7日(水)、東京・田町の東京工業大学キャンパスイノベーションセンターに、米国ネブラスカ州オマハ市よりオマハシステムの開発者であるKaren Martin氏(以下、Karen M)をお招きし、一般社団法人オマハシステムジャパン(以下、OSJ)設立記念講演会、ならびに日本版オマハシステム体験セミナーを開催しました。

 Karen Mの来日には、OSJにとって重要な目的がありました。それは、Karen Mとオマハシステムの翻訳や日本国内での普及についての契約事項に合意し、日本で新しい日本版を作成するうえでの留意事項を取り決めることでした。セミナーの前日に、めでたくKaren Mと契約を取り交わすことができました(写真1)。これによって、OSJは日本で唯一「オマハシステムの翻訳」を手掛けることのできる法人となりました。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第13回

  • 文献概要を表示

 2018年度よりスタートする医療計画と介護保険事業(支援)計画の整合性を図るため、厚生労働省は「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」(以下、総合確保方針)を改定する。厚労省の医療介護総合確保促進会議が11月28日、改正内容をまとめた。厚労省は、12月中に改定した総合確保方針を告示する見通しである。

連載 シンソツきらきら・第1回【新連載】

  • 文献概要を表示

 この1〜2年で、「新卒でも訪問看護師として、ちゃんと育っていけるの?」というご質問をいただく機会が増えました。これまでの「新卒には無理」という“常識”が変わり始めていることを実感しています。

 ところが一般にはまだ、新卒訪問看護師(以下、新卒者)に関する情報は少なく、「育てる」というイメージがもちづらい状況だと思います。そこで、本連載では、新卒者、これから就職先を選ぶ学生、受け入れる管理者、学生の進路決定に大きく関わる教員の皆さんに向けて、新卒者自身がその実際を伝えていきます。

--------------------

今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 小林 , 小池
  • 文献概要を表示

第6回日本在宅看護学会学術集会のテーマが「地域の平穏を看護の力で〜在宅看護学の体系化から〜」、その翌週開催された「訪問看護サミット2016」のテーマが「訪問看護の見える化」でした。これらのテーマをみても在宅看護の実践や教育を共有知とするための取り組みが近年、より深まってきていることを感じます。看護基礎教育で「在宅看護論」の講義がはじまり、介護保険法が制定された1997年より20年。ますます増えていく実践活動とともに、学術的にもさらなる発展が期待されます。本誌もその一助となれば幸いです。本年も、よろしくお願いいたします。…小林

本特集のグリーフケア。診療報酬上の保険点数はつかないものです。それでもなお、「地域に必要とされているケアを提供したい」「日々のケアと地続きに続くものだから」と、“訪問看護業務”という枠をいとも簡単に飛び越えていく現場の皆さん。制作中、そのしなやかさに何度心打たれたことか! 皆さんの実践により迫っていきたく、本年もどうぞよろしくお願いいたします。…小池

基本情報

13417045.22.1.jpg
訪問看護と介護
22巻1号 (2017年1月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

文献閲覧数ランキング(
6月3日~6月9日
)