訪問看護と介護 17巻3号 (2012年3月)

特集 小児在宅ケアが変わる

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先月号特集のキーワードとなった「超高齢社会」。

その裏側にあるのは、「少子化」です。

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小児在宅医療のニーズの高まり

 小児在宅医療の重要性が高まっている。その背景に、在宅医療の対象となる子どもの急速な増加がある。わが国の新生児医療は、世界一の救命率を誇っており、全国で小児集中治療室(PICU)の整備が進みつつある。救急領域でも、小児の救命率は向上している。

 一方で、救命した子どもたちのなかには、人工呼吸器などの医療機器に依存して生活せざるを得ない者がいる。このような子どもたちは退院できないまま、新生児特定集中治療室(NICU)あるいは小児科のベッドを数年、場合によっては10年以上にわたって使用している。とくにNICUの問題は深刻で、“NICU満床問題”として社会的にも注目された。

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 近年、医療が在宅中心に大きく転換するなかで、医療的ケアを継続しながら家庭で生活する子どもが増加している。

 2006(平成18)年の身体障害児実態調査*1によれば、満18歳未満の在宅身体障害児は、全国で9万3100人と推計され、5年前と比較して1万1200人増加している。さらに、1、2級の重い障害を有する身体障害児は、その総数の65.8%を占め、重度化が進んでいる。

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 私が勤務している長野県立こども病院は、1993(平成5)年5月に、小児の難治性疾患の治療に対応できる高度専門医療施設として開設されました。2000(平成12)年9月には、総合周産期母子医療センターとしての運用も開始されています。また、現在の勤務部署は、2001(平成13)年4月に「母子保健科」として活動が開始され、2011(平成23)年4月に「患者支援・地域連携室」と改名して現在に至っています。

 今回、退院調整の役割を担っている当室の活動内容をご紹介します。

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こどもの日に誕生した

――開設は2010年5月5日とか。

 どうせなら「こどもの日」に開設しようと創設スタッフの3人で決めました。国民の祝日に関する法律では、この日を「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことを趣旨としていて、ベビーとともにご家族、とくに「お母さん」たちをサポートしたい私たちの趣意に合致すると思ったのです。子どものための子どものステーションにはぴったりだと自負しています。

 スタッフは、現在開設以来の3名。一緒に大学病院新生児特定集中治療室(NICU)で働いた仲間の看護師です。さらに今春に新規スタッフの採用が内定しています。

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「こどものホスピス」とは

 「こどものホスピス」という言葉にどのようなイメージをもたれるだろうか。ひょっとすると小児がん終末期の看取りの場所をイメージされるかもしれない。それもたしかに重要な一面であるが、欧米の子どものホスピスの活動内容はそれだけにとどまるものではない。まず、発祥の地である英国の子どものホスピスの活動を紹介したい。

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 2011年3月、東日本大震災のその日。私は宇都宮市内で、ある脳性麻痺の子どもの訪問診療中でした。突然の激しい揺れがしばらく続き、棚のおもちゃはすべて落下。しばらく子どもの上に覆いかぶさっていました。余震が頻発していたため、ご自宅のワゴン車への避難をお手伝いし、予定の訪問を続けました。

 重症障がい児者レスパイトケア施設「うりずん*1」ではその日、人工呼吸器をつけた低酸素性虚血性脳症の子ども1名のお預かり中でした。激しい揺れに、棚のすべての物品は落ち、壁土は剥げ落ち、脱出路はふさがってしまいました。すぐに、スタッフが子どもを抱き、別のスタッフがバッグを押して、掃き出し窓から避難。ありったけの布団や毛布、呼吸器、吸引器を出して屋外待機し、無事に家族のお迎えを待つことができました(写真1)。

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何年も訪問を続けるということ

 愛媛県松山市で、小児を含む地域で困っているすべての方々に看護をお届けしている訪問看護ステーションほのか*1(以下、ほのか)は、開設から12年が過ぎました。当初に小学生だった利用者は成人になり、当然家族もスタッフもそれなりに年を重ねています(写真1、2)。

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娘の江里さん(22歳)が、生まれてまもなく、原因不明の代謝異常による脳疾患であることがわかった。寝かせておけば寝たきり、言葉を使ってのコミュニケーションがとれず、食事・排泄などすべてに介助が必要な重度心身障がいがある。

それから22年、江里さんは、地域の子どもたちと同じ幼稚園、小学校・中学校の普通学級に通い、今では「とも」が運営する駅前の地域活動センターに勤めながら、自宅での暮らしを続けている。千葉県浦安市でこのような選択をしている障がいをもった人は、江里さんだけではない。「普通にみんなと育てたい」。同じ思いをもつ、千葉県浦安市の障がい児の親たちと奮闘してきた。

その道のりは険しかった。障がいをもつ子を地域で育んでいくには、実に多様な24時間365時間の支援が必要だ。しかし、その仕組みはまるで整っていなかった。「だったら、自分たちでサービスを提供しよう」。今ではその支援は、“わが子”に留まらず、障がい者、高齢者、子育て中の母親などにも広がる。手助けを必要とする誰にでも、1人ひとりに合わせたサービスを提供するようになった。

この活動が注目を集めている。

ほっとらいん ふろむ ほんごう

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 さる1月26日(木)、第2回訪問看護支援事業報告会が開かれた(全国訪問看護事業協会主催)。「訪問看護支援事業」は、訪問看護サービスの安定的供給と在宅医療の充実を目的に、厚生労働省老健局が実施する国庫補助事業。平成21(2009)年度から4年間の計画で始められ、1年目は11道県、2年目は4府県が取り組んだ。3年目である本年度は、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、京都府、奈良県、和歌山県、鳥取県、岡山県、高知県、長崎県、熊本県、宮崎県、静岡市の14府県市が新たに参入。計29自治体のうち、報告会では13自治体が、それぞれ着実な成果を報告した。

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 全国20万人以上の難病の子どもたちを支える認定NPO法人「難病のこども支援全国ネットワーク」が2011年7月から「みんなのふるさと“夢”プロジェクト」を発足し、支援・寄付を募っている。

 同ネットワークが過去20年来続けてきた全国各地でのサマーキャンプ“がんばれ共和国”は、医療機関から全面的なサポートを受けられるイベントとして好評であった。しかし、既存施設を利用しての開催上、バリアフリーや接遇など種々の限界を抱えていたなかで、山梨県北杜市白州町に3000坪の土地の寄進を受けたことから、独自施設の建設・運営をめざして立ち上がった計画である。

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 2011年12月、「ドナルド・マクドナルド・ハウス 東大」(東大ハウス)が、東京大学医学部附属病院敷地内に誕生しました。自宅から遠方の病院に入院する子どもとその付き添い家族が利用できる滞在施設です。

 そのコンセプトは“HOME AWAY FROM HOME”。病児の家族が、自宅と同じように快適な生活を過ごせるように、自炊可能なキッチンやランドリーなどの各種設備と、プライバシーに配慮されたベッドルームが用意されています。費用は1日1000円。運営は、地域ボランティアによって支えられています。

連載 訪問看護 時事刻々・156

報酬同時改定 石田 昌宏
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 診療報酬・介護報酬の同時改定が行なわれる。

 訪問看護を充実しなければならないという意識は共有されており、ほかの内容と比べると力が込められたように思う。担当者の努力を感じる。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・30

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 実は、12月25日に実家の母を101歳1か月で見送ったこともあり、いつにもまして、人生ドラマの詰まった昨年末になりました。

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第8回

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 介護をしていると、尿とりパッドの尿の量で季節を感じる、という方はけっこうおられるのではないだろうか。夏は汗をかくからそれほどでもないけれど、冬はどうしても量が多くなる。とくに夜は、パッド1枚では間に合わないときもある。パッドを2枚重ねるようになると、冬が来たなと思う。

 グループホームのカンファレンスで、スタッフのIさんが「他の方、どうしたはんのかなぁ」と切り出した。「2枚重ねたとき」、Iさんは左右のてのひらを合わせて水平に差し出す。「あの、1枚目の、穴あけてはります?」、左手を水平にしたまま、今度は右手の人差し指で左掌の中央を指さす。

連載 これって、急変? なんとなく変への対処法・第3回

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本日の目標

(1)「意識障害」に出くわしたときに、まず行なうことを確認する

(2)「せん妄」と「認知症」を見分けることができる

連載 一器多用・第10回

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 脳性麻痺の小児科医・熊谷晋一郎さん(東京大学先端科学技術センター特任講師)が私の介助技術を受けた体験記事が、「看護師のためのウェブマガジン かんかん!」にアップされました。2008年に初めてお会いし、「介護するプロvs介護されるプロ」の真剣勝負をしたときのこと、そして、その後の交流に至るまで、圧巻の内容になっています。実際に、私が熊谷さんを介助している動画もついています。ぜひご覧いただきたいと思います。

 熊谷さんは、新生児仮死に由来する脳性麻痺のため自由に四肢が動かず、電動車椅子に乗っています。動画をご覧いただくとよくわかりますが、下肢だけでなく、手の甲が向かい合わせになった状態で、手指・腕の動きにもかなりの制限があります。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第12回

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杏里 今回は連載開始1周年記念として、この1年を振り返りつつ、今後の抱負を語ろうと思います。それにしてもこの1年は本当にいろいろなことがあったな……。

 なんと言っても東日本大震災では、緊急時の在宅介護のあり方を改めて考えさせられた。被災地への出張デイサービスを行なっている川内さんの話をうかがい(2011年8月号)、メディアからは知りえない現地の様子を知ることができた。さらに被災地でALSのご家族を介護している方々の座談会のお話を聞き(同年9月号)、身に詰まされるものがあった。

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小児神経難病における日本の課題

 著者は最近、生後1か月から脊髄性筋萎縮症(SMA)の重症型であるⅠ型を発症し、マスクを用いたNPPV(非侵襲的陽圧換気療法)管理の子どもの退院支援を経験した。しかし、在宅への移行準備を進める一方で、父親の転勤のために一時的に転院したところ、転院したその日に急変し、緊急対応として気管内挿管から急きょ気管切開するに至った。このような例を、NPPVの普及が図られる現在もまだ、よく耳にする。

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 この本のタイトルを見たら、世の看護部長はきっと飛びつくに違いない。実際、福岡県での第16回日本看護サミット2011の会場では、あっという間に100冊が売り切れてしまったと聞く。

 たしかに、看護部長たちと話すと、「師長のときが、いちばん楽しかった」とか、「もう一度師長をしたら、こんなことがしたい」という言葉をよく耳にする。私自身も、現在は看護局長という立場にもかかわらず、看護師長から相談を受けたときや病棟の課題を発見したときに、自分がその病棟の師長をやりたいと思う瞬間がある。だから、この本は看護部長には自分の部下に薦めたいと、非常に共感を呼ぶのであろう。

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 在宅や施設で患者さんをみていると、やはり人にとって「食事」は、とても大切なことなんだな、と感じる。がんの末期で中心静脈栄養ポートを入れた患者さんが、家に帰ったら食事がとれるようになった例を何人も見てきた。

 もちろん入院中も、栄養士さんや看護師さんが何とか少しでも食べてもらおうと努力しているのだろうが、家では何かが違うのだろうと思っていた。家で食べられるのはなぜだろうと気をつけて見ていると、やはり食事をつくる過程を嗅覚や視覚で感じられる、摂取時間や量も患者さんの好みに合わせられる、そして何よりも、その病態や気分に合わせた食事をつくってもらえることではないかと気づかされる。

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 「ジャパンハート」は、代表である小児外科医の吉岡秀人により、2004年に国際医療奉仕団としてスタートした。2008年に特定非営利活動法人となり、現在に至る。

 国際医療組織といえば欧米発信のものが多いなか、私たちは日本発信の、日本人医療者からなる団体である。その9割は看護師であり、また女性である。

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はじめに

ホスピタル・プレイ・スペシャリストについて

 ホスピタル・プレイ・スペシャリスト(以下、HPS)は、遊びを使って病児や障害児を支援する専門職である。日常的遊びや療養的遊び、きょうだい支援を通して、遊びがもつ治癒的な効果をケアプランに融合させる

 日本では2007(平成19)年度から、文部科学省委託事業として静岡県立大学短期大学部が初めて養成教育に着手した*1。長い歴史と経験豊富な英国のHPSをモデルとする一方、日本文化にも適したカリキュラムのもと、実施した3年間計6期で73名のHPSを輩出した。HPSの共通理念「すべての子どものために、すべては子どものために」に従い、疾病や障害が重い子どもの生活にも遊びは不可欠とし、子どもの遊ぶ権利を擁護するために活動している。

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ニュース―看護と介護のこのひと月

INFORMATION お知らせ

今月の5冊

投稿規定

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 杉本 , 青木
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長年の友人の子がダウン症とわかりました。でも、お正月を過ごしたこの実家は、意外なほどにぎやかで、笑顔で満ち満ちていました。おじいちゃんもおばあちゃんも、友人夫婦も姉夫婦も、まだ幼い兄弟も従姉妹たちも、居間に陣取ったこの子に代わる代わる話しかけたり、ちょっかいをかけたり。何しろ、この子が本当によく笑うのです。とても小さな手足をちょこちょこ動かして、あまりに無垢に、何の心配もなさそうに。どうしようもなくかわいくて、ジンワリ温かいものが込み上げました。数か月~数年はやく生まれたにすぎない子どもたちも、当たり前にこの子を世話しようとしています。わが友も、驚くほど頼もしい母親になっていました。私の宝物です。彼らが笑えなくなる日が絶対来ないように守りたいと思いました。…杉本

遊びをせんとや生まれけむ――12世紀の流行歌の一節が、NHK大河ドラマの冒頭で流れるのを毎週聴いています。人は誰も「遊び」で学び、育つ。幼少期、私は市役所から障害者手帳を交付されてバス乗り放題の身分だったのですが、療育学級に通うのが億劫な際には、施設の珍しいおもちゃで遊べたり、遠足に連れ出してもらえた楽しみが励みになったことを覚えています。幼い日だけでなく、死を迎えるその時まで、ずっと人は遊ぶことで生きるのだと思うようになりました。◎正月には、東大寺でその隣接する療育病院の児童、ご家族と引率スタッフの皆様の参詣に遭遇しました。本号特集のことを考えながら歩いていたときだけに、2012年の変化の“時運”に導かれた思いで、この後記も書いています。…青木

基本情報

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訪問看護と介護
17巻3号 (2012年3月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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