訪問看護と介護 15巻4号 (2010年4月)

特集 多様なニーズに応える訪問看護

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住み慣れた地域で,その人らしい療養生活を送るにあたってのニーズは多種多様です。そのニーズに対し,看護師だからこその判断で,ケアを実施しているケースが少なくありません。また,看護以外の専門知識を活かした訪問看護を提供している実践者も増えてきました。実践の数々を通し,訪問看護のもつ豊かさを特集します。

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はじめに

 住み慣れた地域で,その人らしい療養生活を送るために提供される訪問看護。そのニーズは多種多様です。ことに昨今の入院期間の短縮化に伴う急性期病院からの退院の受け入れや,高齢化に伴う在宅ターミナルケア,介護保険の浸透とともに掘り出される在宅療養者の医療ニーズなど,訪問看護の現場では,そのニーズの多様さに対応する柔軟性と,新しいことへの探究心,具体的な研鑽方法が求められています。

 在宅の現場では,場合によって医師より看護師が先行して判断し,ケアの内容を決め,医療処置を実施している場面もあります。

 包括的指示の内容の曖昧さは,ある意味,寛容であり,ある意味,責任の所在の不明瞭さを招いていますが,訪問看護はあらゆる場面で,療養者の全体像をしっかりとアセスメントし,必要なケアを組み立てていく専門性を有しながら,この包括指示に対応します。

 この専門性は,ある狭い分野に特化するかたちではなく,プライマリケアとしての総合的な判断やケアが実施できるという意味で,究極のジェネラリストといってよい専門性です。

 昨年来,厚生労働省で開かれている「チーム医療の推進に関する検討会」では,チーム医療における看護師の役割について,従来の考え方から拡大されたかたちで議論が進められています。検討会の委員のひとりとして,訪問看護の現場から「在宅医療におけるチーム医療の実際」をプレゼンテーションした経験をふまえ,多様なニーズに応えるということはどういうことなのかを考えてみます。

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求められる緩和ケア

 「残された時間を住み慣れたわが家や地域で過ごしたい」「受けられる治療法がないのなら入院はしたくない」「一度は家に帰してあげたい」等の思い,しかしその一方で在宅での生活や今後の病状に対するさまざまな不安を抱きながら,利用者や家族は在宅に戻られます。また入院か在宅かの選択で在宅ケアを選ばれ,病状の進行から緩和ケアへ移行するケースもあります。

 「一人ひとりが安らかで満足されるような看取りを支えたい」との思いで,試行錯誤をくり返しながら,訪問看護ステーションコスモス(以下,コスモス)は地域に根差し,緩和ケアを提供する道を歩んできました。2008年のコスモス全体利用者死亡数は52名,そのうち在宅での看取りは33名となり,年間50名前後の方々の人生の終焉に関わらせていただいています。

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 食は生活のなかで大きな役割をもち,人が生きていくうえでも大切です。その食事をよりおいしく,十分な量いただくためには,適切な排泄コントロールが欠かせません。適切な排泄のリズムを整えるため,訪問看護師が介入し,コントロールしていくことは多くあります。

 ただ,排泄というプライベートな領域を他者に委ねることなく最期まで自立していたいと考える人は多く,高齢であっても,麻痺があり身体を思うように動かせなくても,排泄に関しては自分の強い意思と羞恥心をもち続けていると考えてよいでしょう。「この歳になって,人様に下の世話になるなんて……」という言葉を聞くときや,動かない手で必死に陰部洗浄を阻止しようとする姿をみるとき,そのことに改めて気付かされます。

 目の前の人を少しでも「楽にしてあげたい」「日々の生活を穏やかに過ごしてもらいたい」と願うあまり,ついつい力が入り看護師本位のケアになっていることもあるため注意が必要です。排泄ケアはその人の思いに配慮しながら,謙虚な気持ちで取り組まなければなりません。

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 病院と違い在宅では,それぞれ異なる考えをもった複数のサービス提供者が関わり,療養者の生活を支えているという背景があり,情報の共有,ケアの統一においては苦慮する場面も多い。特に長期化する褥瘡ケアの連携を考えたとき,サービス提供者が多職種多数であるという在宅の特性,そのなかに潜在する褥瘡治療の問題点を十分認識する必要がある。

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私の生い立ち

 私には,先天性の脳性小児麻痺で,重い知的障害を抱えている4歳年上の兄がいる。私が小学生のとき,両親は兄をわざと2年留年させ,2人手を繋いで一緒に学校に通わせた。まず兄を養護学級の教室に座らせ,それから自分の教室に向かうのが私の毎日だった。

 通学途中,「養護の妹,ヨダレくり,汚い」といわれ,泣いたこともある。たまらず母親に相談すると,「『今に見ておれ』と思って,いつかその人たちを見返す人になりなさい」といわれた。

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 フォトセラピーとは,写真や撮影行為を通して心と身体を元気にしていくプログラムの総称である。その分野は,カウンセリング&コーチング,レクリエーション,ケア,教育など,広範囲に及ぶ。

 NPO法人日本フォトセラピー協会(以下,JaPTA)では,写真のもつ「人を元気にする力」「人を成長させる力」に着目し,写真を通して毎日を楽しく人生を豊かにしていく「フォトセラピー」および「フォト・コミュニケーション」を広く社会に提案することを目的に,フォトセラピーの研究・開発,普及活動,人材育成などの活動と,その支援を行なっている1)。そのなかで医療・介護の分野に特化したものが「フォトケア事業」である。

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 ケアの視点からアロマテラピーやアロママッサージ,フットケアを訪問看護の実践のなかに位置づけると同時に,精油の安全な利用環境を整え,10年が経ちました。最初の頃は,何かあったときの責任は誰がどうやってとればいいのかという不安が常について回り,いまでも弱くなったとはいえ消えていません。それは,精油を使用している人間一人ひとりがいつも同じではないからです。

 今でも忘れられない一本の電話があります。「アロマのことについて,聞きたいことがある」,養護学校の高等部1年の男子のお母さんからで,「いつも子どもに使っているオイルの匂いが以前と違うので変えてほしい」という内容でした。

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 在宅療養推進という社会のニーズに対応するなかで訪問看護ステーションが担う役割は大きい。ここ数年ステーション数は伸び悩み,訪問看護師も慢性的に不足しているが,それでも訪問看護師はひたむきに訪問看護の実践に取り組んでいる。

 訪問看護ステーションに関する調査研究1,2)で,管理者の教育や人材育成への取り組みが職員の定着を促進することが明白になった。また,安定した経営のもと労働環境もよく,職員の定着率がよいことが大規模ステーションのメリットとして示されている。これらに基づきステーションの規模の拡大や,人材育成の教育体制の整備などがすすめば,現状の好転は可能である。

連載 マグネットステーション インタビュー・28

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乙坂 「かがやき」設立の経緯と現状を教えていただけますか。

望月 設立は1998年です。私が入ったのは2000年ですが,当時スタッフは4人ぐらい,利用者さんは50~60人でした。2001年暮れに駅に近い現在のビルに移り,それからスタッフも,利用者さんも増えて,規模が大きくなってきました。2006年4月に所長を引き継ぎ,現在は常勤スタッフ6名,非常勤スタッフ14名(常勤換算14.1),事務職が3名(常勤換算2.1)で,利用者さんは197人,ここ数か月の訪問件数は,1000件を超えています。

 藤沢市内では大きいステーションであり,神奈川県看護協会立ということで印象がいいのかもしれません。ケアマネジャー連絡協議会などの活動にも積極的に参加しているので,顔の見える関係になっていることもプラスですね。

連載 訪問看護 時事刻々

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 診療報酬の改定が発表され,各訪問看護ステーションでも新年度からの準備が始まっていることだろう。まずはその内容をみてみよう。

 がん末期の利用者に対し訪問看護療養費を同時に算定できる訪問看護ステーションが3か所まで,特別指示書が出ているあいだの利用者に対しては2か所まで増やされた。訪問看護の頻度を増やすのにいい変更だろう。病院からの訪問とステーションからの訪問を上手に組み合わせて,病院から在宅生活への移行をスムーズに行なうためにも使えそうだ。

連載 在宅ケア もっとやさしく,もっと自由に!・7

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訪問看護をしていてうれしいのは……

 SLE(全身性エリテマトーデス)・間質性肺炎などがあってターミナルを迎えた方(90歳)のご家族から,「呼吸が止まりそうです」と緊急コールがありました。

 そのときに「どうぞご家族でゆっくりとお別れの時間をもってください。のちほど伺います」と,ずっとこのご家族にかかわってきた若いスタッフが答えたことで,「家族皆で最期の一息が止まるのを見届けることができました。あの一言がありがたかった」と,ご家族から感謝の言葉をいただきました。

連載 すっきり&やすらぎアロマ・1【新連載】

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 ふつうアロマというと,精油(エッセンス)そのものか,それを用いたアロマセラピーをいうことが多いのですが,アロマ(aroma)はもともと良い香り,芳香の意味。

 そこでこの連載では,アロマセラピーだけでなく,精油のもとともなっている良い香りを放ち薬効をもつとされるさまざまな植物(ハーブ)も紹介し,在宅ケアのなかで楽しみながらアロマを活用する知識や方法をご紹介します。訪問先ではもちろん,ケアをされる方々のセルフケアにも有用な内容にしていくつもりです。

連載 せんねん村村長 老いを地域で活かす・7

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 私が確信しているのは,人は生まれてくるだけでも生命力を与えられているということと,そのうえ秘められた力をもって生まれているということです。それを引き出してあげるように働きかけるのが,保育や教育だと思っています。さらにいえば,その力の基本は“五感力”。人間が自然の存在である証は五感が示しています。

 そこで,新しい保育園(以下,新園)の保育の理念は「五感力を育む保育」としました。自然に備わっているはずの力を引き出したいと願っています。新園では,市内初の障がい児保育も行なう予定です。

連載 ほんとの出会い・49

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 身近な人がふっと自分が知っていたその人と違うように思えることはないだろうか。親しくしていた(と思っていた)友人が,いきなり怒り出し二度と会うことがなくなったこともあった。

 病や老いによって,かつての人とは違ってしまうこともある。長姉は今から25年ほど前,40代に入ったばかりのときにクモ膜下出血に襲われた。母が父の看病や仕事で忙しい時には,母親代わりに台所に立ち,家を切り盛りしたしっかり者の姉が一夜にして別人になり,言葉のコミュニケーションはほとんどとれなくなってしまった。

連載 読むことと旅すること 人との出会いに魅せられて・1【新連載】

「ひきこもり」考 服部 祥子
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 私は読むことが好きです。本の中で何度人との出会いに魅せられたことでしょうか。子ども時代にはじめてきちんと読んだ本は『赤い鳥』でした。うろ覚えですが,たしか二部に分かれていて,前半は鈴木三重吉の「あかいとり ことり なぜなぜあかい あかいみを たべた」から始まる平仮名ばかりの童謡のような詩が並んでいました。幼い私は一字一字指をそえて,声を出して読みました。後半部は年長児向けの漢字も入った日本昔ばなし風の物語や外国もののストーリーの数々で,7,8歳でそれが読めるようになった私は,急にお姉さんになったような誇らしい気持ちで何度も読み返しました。それ以来60年余,本を読むことは私の生活のもっとも大切な一部になりました。呼吸をするのと同じくらい自然で,手放すことのできない楽しみです。

 私は旅することも好きです。憧れの先人の足跡を辿る旅にしばしば出かけますが,風景の中で耳を澄まし目を凝らすと,その人が新たな面影となって私の前に現われるような興奮を覚えることがよくあります。また旅することで思いがけない出会いもあります。つい先頃,学会もかねて遠い町に旅をしました。帰途私の講演を聞いたという男性と偶然同じ車に乗り合わせた時,「目を輝かせて,詩人のように話す方ですね」と言われました。これは,これは。70歳の老女にこんな言葉をかけてくださるなんて……。今まで会ったことのない心理学者であるその人の言葉は,空港までの束の間のひととき,花束をもらった女学生のように私の胸をときめかせました。そんな旅の余韻が好きです。

連載 お母さんといっしょ・16

読者の声

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3月号の【誰か私を介護して…】を読んで

西澤  惠

3月号特集「退院調整のパートナーシップをどう構築するか」を読んで

藤田 和丸

2月号の特別記事を読んで

久保 成子

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 前号では基礎編として呼吸リハビリテーションの基本について述べた。そのポイントはエネルギー消費の少ない,その意味で身体的負担の少ない活動を心がけよう,ということであった1)

 これを自動車にたとえていえば,今まで乗っていた3ナンバーの中型車から経済的な軽自動車に乗り換えるようなものである。たしかに,動力性能は落ちるかもしれないが,燃料消費は確実に少なくて済む。そのようにして走り続けよう,今後も活動水準を維持しよう,というのが第二のポイントである。だから,呼吸リハビリテーションは経済的な活動は推奨しても,ベッドの中に留まったままの怠惰な生活からは距離を置いている。ベッドに留まり続けることは呼吸の問題にとどまらず,廃用症候群まで引き起こすからである。これは命取りになることもあり侮れない2)

 本稿では応用編として「朝起きてから夜寝るまで」,エネルギー消費を抑えるにせよ,動作の能率を上げて,活動そのものはあきらめないという立場から,呼吸リハビリテーションの実践,あるいは,日常生活への応用について解説したい。

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 本研究では,訪問看護師の在宅人工呼吸療養者支援の現状および研修参加のニーズを明らかにする。アンケート調査の結果,支援の際困難と感じたものは「排痰ケア・呼吸理学療法」「人工呼吸器の管理」が多く,これまで参加した研修,今後参加したい研修についての回答からも,「人工呼吸器の管理」と「気道ケア・呼吸理学療法」が最も参加ニーズの高い研修内容であると示唆された。

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 2月21日(日)に聖路加看護大学(東京都中央区)で「30年後の医療の姿を考える会」第4回市民公開シンポジウムが開催された。テーマは「メディカルタウンの再生力―がん患者が自分の力を取り戻せる支援とは? イギリスのがん患者支援,マギーセンターから学ぶ」。

 同会会長の秋山正子氏(白十字訪問看護ステーション)による「はじめに」のあと,柳田邦男氏(作家)から「日本におけるケアやサポートの取り組みを大きく進化させる次の道は日本版マギーズセンターの設立」と本シンポジウムの意義を称えるメッセージの代読が行なわれた。

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編集後記 富岡 , 伊藤
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●今号の特集では,いま在宅の現場で訪問看護になにが求められているのかに焦点を当てました。「ニュース」でも取り上げた「特定看護師」の制度の検討にあわせ,看護師が行なえる侵襲性の高い医行為の補助についての検討も始まりそうです。実際に現場で活躍する読者の皆様は,特集をご覧になってどのような感想をおもちでしょうか。萩原氏が「訪問看護の個別性」にふれていらっしゃいましたが,このようなことで困っているというお話も含めて「読者の声」としてFAXやE-mailで編集室までご教示いただけますと幸いです。……富岡

●3年目となったマグネットインタビュー,本号のインタビュアは訪問看護師の乙坂佳代さんです。管理者研修の講師も務める乙坂さんは,所長の望月さんと初対面ではありません。所長の語るステーション運営の実際に,「それは大事なことですね」と大きくうなずく一方で,「もともと,そういうポリシーで?」と,所長の大きな変化について語りを引き出されてもいました。語ることで確認でき,気づくことがある。それはとても価値のあることと思いました。次号は静岡県のステーションに伺います。……伊藤

基本情報

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訪問看護と介護
15巻4号 (2010年4月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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