訪問看護と介護 15巻3号 (2010年3月)

特集 退院調整のパートナーシップをどう構築するか

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急性期を脱した患者が住み慣れた地域・環境で療養生活を送るために必要となるのが退院調整。しかし,現状としてはスムーズに在宅サービスへと移行できているわけではありません。病院と在宅の意識の違いとパートナーシップを理解し,もう一歩進んだ退院調整を実現するための実践を紹介します。

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 わが国は少子・高齢化に伴って急激に超高齢社会を迎えています。

 介護を必要とする高齢者が増え続け,ますます医療費は増大し,これまでのような病院や施設中心の医療では需要に対応できなくなっています。このような社会背景から退院後の在宅ケアへの移行が推進され,一人の患者が入院し,治療を受け,退院後その治療を継続していくための地域ケア連携システムの構築が強く求められています。

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 本誌読者に医療連携の重要性を改めて説明する必要はないと考えられるが,大病院内では医療連携に関する協力や理解を得ることは極めて困難であり,直接収益に結びつかないため重視されない傾向がある。しかし,今後は地域医療機関のみならず,地域中核病院との連携構築や,患者さん・ご家族との情報共有が求められている。

 本稿では医療機関を地域医療機関・地域中核病院・大病院に分類し,大病院で医療連携に携わる一医師としての考えを述べていきたい。

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 医療機関では現在,退院調整が積極的に進められている。しかも,従来のように専ら社会福祉士が主導するのではなく,看護職が主導するケースが増えてきている。

 退院調整は,医療機関で疾患に対する一定の治療を終えた患者が入院前の生活に戻ることを支援するものであり,最大のポイントは,患者や家族が入院前の生活,あるいは新たな療養生活を継続できるよう支援し,調整することにある。そのため退院調整には,患者や家族を支援する人ないし社会資源の調整等が必要になるのだが,多くの先行研究で示されている通り,医療職をはじめとする関係者らが医療機関内の調整に窮しているようではうまくいかない。改めて述べるまでもなく,医療機関内の調整が円滑に進むだけでも十分とはいえない。

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はじめに

 住み慣れた家で最期まで過ごし,家で死にたいという気持ちは多くの人がもっているものである。厚生労働省の調査では,60%以上の患者が在宅での最期を希望しているが,現状では患者が最期を迎える場所は自宅が8%と少なく,病院が81%である。

 当院では,約20年間で400名ほどの在宅看取りをしたが,このなかには家族がバラバラなケースなど看取り困難例も多く含まれている。いずれも残された家族が笑顔にchangeするよう家族看護の実現に力を注いできた1)。平成20年7月川越博美,宮崎和加子氏が併設訪問看護ステーションを訪れ,教育的訪問看護を実践2)したことがきっかけとなって,スタッフが目覚め,家族看護の取り組みはさらに活発化した。

 翌月にはケアマネジャーの資格をもつ訪問看護部長がTHP(トータルヘルスプランナー:多職種協働のkey person)として活躍できるシステム3,4)が完成し,8月からの17か月間,在宅看取りは68名,内,がんの看取りは48名(独居がん6名),入院1名で,がんの在宅看取り率は98.0%になり,特筆すべき点として独居がんもスムーズに看取ることができるようになった5)

 訪問では,在宅で療養されているほとんどの方がとてもいい笑顔を浮かべられ,その笑顔を見た家族の方も笑顔になる。住み慣れたリラックスできる場所にいるという安心感なのだと思う。

 あるイレウスの70歳女性は鼻管だけでなく,サンドスタチンやモルヒネの持続皮下注射5)を受けながら“今が一番幸せ”,さらに“PCAが命綱”と語った(図1)。病院では辛いスパゲッティ症候群も,自宅では笑顔となれるのだ。

連載 マグネットステーション インタビュー・27

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新規の申し込みは断らない

木村 運営方針を聞かせてください。

平原 利用者さんが訪問看護を欲しているときに,タイムリーに訪問看護に入れるようにしておくというのが方針です。

 新規の申し込みは断わらないという私のこだわりがあるのですが,そのためには体制をきちんと整えないと,スタッフが悲鳴をあげてしまいます。先月は13名,その前は18名と,毎月10名以上の新規の方を断わらずに,タイムリーにおうかがいするというのはとても難しいことなので,そのつど職員に説明しながら理解を求めて運営しています。

連載 訪問看護 時事刻々

訪問看護支援事業 石田 昌宏
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 “これからは地方より都市部での高齢化が急速に進む。しかし都市部では地価の高さなどで施設整備は進まず,今後在宅ケアをどうやって伸ばしていくかが喫緊の課題である”1月に行なわれた厚生労働省の「訪問看護支援事業に関する検討会」は,このようなメッセージで始まった。

 「都会は地方に見習え」と言い切った看護部長に出会ったことがある。一般のイメージが「都会は進んでいる」だとするとまったく逆だ。

連載 在宅ケア もっとやさしく,もっと自由に!・6

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 放射線治療による腸炎のために経口摂取を控えたまま退院された患者さんが,在宅でもIVHを必要とし,訪問看護が入りました。

 徐々にIVHをやめていく方向で迎えた退院2週間後の外来受診日。この日,IVHをやめるか続けるかが決まります。やめるのであればその後の在宅療養の計画も変わるため,がんセンターへの外来受診に同行しました。

連載 訪問看護普及・拡大プロジェクト・6【最終回】

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 過去5回にわたって,事業の概要ならびに調査内容および結果を報告してきた。第6回はこの調査研究事業の総括をするとともに訪問看護事業が発展するための政策提言を述べる。

連載 訪問看護師による看取りの検証・6【最終回】

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 本連載の第1回(本誌14巻10号)で述べたように,戦後の日本社会は病院で死ぬのが「あらゆる手段を尽くしたまともな死」という文化を育ててきた。不治の病であればなるべく自宅で過ごしたいと考えていても,最期の時は病院やホスピスに入院することを希望する人は多い1)

 心臓マッサージや人工呼吸器装着などの蘇生手技が,いわば臨終の際の儀式のように定着している今日の社会で,あえて「自宅で死を迎えることを決断」することには,本人も家族もケア提供者も不安や疑問が一杯である。

連載 せんねん村村長 老いを地域で活かす・6

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 老人保健施設の開設準備中は,「次の仕事は特養」と思ったものですが,せんねん村の開設準備中にはなぜか「次の仕事は子どものことを」と思いました。新しいことを手がける度に,地域で果たすべき役割に気づく機会が用意されているのでしょうか。この地域で必要とされるものを知らされている思いがします。

連載 精神科医の家族論・12【最終回】

家族以外の人間の存在 服部 祥子
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この優しきメンターたち~家族を支える助っ人

 家族以外の人間が関与することによって家族関係は好転も暗転もする。ことに実の家族だけでは通り抜けられないような苦境や困難が,家族以外の重要な他者によって大きく変わりうる。たとえばメンターのような人物の登場によって。

 アメリカで暮らしていた頃,友人に「あなたはメンターをもっている?」と問われたことがある。聞き慣れない言葉にとまどっていると,彼女は親切に解説をしてくれた。メンター(Mentor)とはもともとギリシャ神話に出てくる人物で,親友のオデュセウスがトロイ戦争に出征して20年間故郷に帰ることができなかった間,その息子テレマコスを父親代わりとなって保護し,教育したそうである。この故事から,自分を支え,助力,教育,忠告をしてくれる人をメンターとよび,アメリカでは家庭においても職場においても,こうした人物をもっているか否かが生きていく上に重要な鍵になるという。メンターという語は日本にも輸入され,時折耳にするが,いわば日本語の「育ての親」に近いニュアンスがあるようだ。

連載 ほんとの出会い・48

善光寺から親鸞へ 岡田 真紀
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 昨秋,信州上田に母と温泉旅行をした。私は海野宿で江戸時代の風情の残る旅籠屋造りや海野格子の商家が並ぶ北国街道を散策したかったのだが,母は善光寺に行きたいと言う。いわゆる名所旧跡は人がわさわさしていそうで苦手なのだが,これは親孝行旅行,「母に引かれて善光寺参り」となった。

 ところが行ってみると,なんとも魅力的な所だった。善光寺平を見はるかす大門,壮大な大伽藍,参道には多くの宿坊が軒を連ね,土産物店にも長い歴史を感じさせる落ち着きがある。観光地ではあるもののさすがに1000年を超えて人々の深い信仰に支えられてきただけに,寺院とそれを取りまく町自体に重々しさがある。

連載 お母さんといっしょ・15

誰か私を介護して… 横谷 順子

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 わが国では近年特に在宅医療の充実が期待され,それを担う重要な役割をもつ訪問看護師の人材育成が関心事となっている。しかし,訪問看護事業所の規模は小さく,教育担当者を専任で配置できないことが多いため,訪問看護ステーション管理者(以下,管理者)がスタッフ教育を担うことが多い1)

 そこで管理者が新人看護師に一定期間どのように関わっているのか明らかにする研究を行なった。その結果,管理者は新人看護師が経験する“ゆらぎ”に対し丁寧な関わりを行なっていることが明らかになった2)。管理者は,新人訪問看護師にゆらぎを乗り越えさせ看護師としての自信を回復させるとともに,訪問看護のおもしろさに導くような働きかけを行なっていた。

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息苦しさにどう対応するか

 原因の種類にかかわらず,患者さんの訴える苦痛と不快な症状を和らげようとする試みを緩和ケアと呼ぶ。この緩和ケアの代表的問題として苦痛painがある。

 英語のpainを日本語で表現すると,苦痛に近い。痛むだけならhurtという言葉があり,針で指先を刺したような場合,英語ではhurt meという。これには苦しみは含まれない。苦しみの代表は,息苦しさであろう。

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■目的

 在宅医療の原因疾患としては脳血管障害や心筋梗塞,糖尿病などの血管性障害が多い。

 現在,この誘因の1つとしてメタボリックドミノという概念が広く認識され,青・壮年期からの適切な栄養管理が重要視されているが,一方でこれらの疾患が重症化して在宅療養に至った患者に対しては栄養管理の重要性が認識されていない。

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 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は徐々に全身の筋肉が動かなくなる難病で,発症割合は10万人に1人程度。有効な治療法はなく,病状の最終段階では,呼吸困難が起こり,人工呼吸器を装着するのかどうかという選択が患者と家族に迫られる。患者数は2008年3月現在で約8000人といわれているので,読者の中には在宅療養の患者に関わった経験がある方も少なくないと思う。

 私は,臨床実習指導で十数年間にわたり神経内科病棟へ行っていた。しかし,学生には一度もALSの患者を受け持たせたことはない。それは短期間の実習では,学生が患者を理解し,看護を実施することが難しいだろうという,病棟側の判断があったからである。

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編集後記 伊藤 , 富岡
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●〈……何度も何度も(利用者のことが)夢に出てきて。私たち布団残業っていうんですけど,布団にはいっても利用者さんのことずーっと考え,明日はどうしようって……〉これは特別記事(中村論文)の,新人の苦悩と成長を見守るステーション管理者が語ったインタビューの一部です。大変だけれど,そこを乗りこえたら達成できるよと,利用者さんやご家族に寄り添いながら行なっていく訪問看護の魅力が伝わってきました。……伊藤

●今号の特集は退院調整がテーマです。制作の途中,「カンファレンスは病院ではなく,利用者の家で開くべき」とのお話もうかがいました。「そもそも退院調整は病棟から在宅にお願いするものなのに,在宅側が病棟に出向くことで,病棟から一方的な連絡をされる場となってしまっている」「病棟看護師が家に出向けば病棟側も実際の利用者の退院後が容易に想像できるし,高齢で家にいる実際のキーパーソンから話を聞くこともできる」。相互理解に基づくパートナーシップの構築を願います。……富岡

基本情報

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訪問看護と介護
15巻3号 (2010年3月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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