特集 退院調整のパートナーシップをどう構築するか
病院の意識はこう変える―文化の変容を呼び起こす実践
小笠原 文雄
1
1小笠原内科
pp.191-196
発行日 2010年3月15日
Published Date 2010/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101557
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はじめに
住み慣れた家で最期まで過ごし,家で死にたいという気持ちは多くの人がもっているものである。厚生労働省の調査では,60%以上の患者が在宅での最期を希望しているが,現状では患者が最期を迎える場所は自宅が8%と少なく,病院が81%である。
当院では,約20年間で400名ほどの在宅看取りをしたが,このなかには家族がバラバラなケースなど看取り困難例も多く含まれている。いずれも残された家族が笑顔にchangeするよう家族看護の実現に力を注いできた1)。平成20年7月川越博美,宮崎和加子氏が併設訪問看護ステーションを訪れ,教育的訪問看護を実践2)したことがきっかけとなって,スタッフが目覚め,家族看護の取り組みはさらに活発化した。
翌月にはケアマネジャーの資格をもつ訪問看護部長がTHP(トータルヘルスプランナー:多職種協働のkey person)として活躍できるシステム3,4)が完成し,8月からの17か月間,在宅看取りは68名,内,がんの看取りは48名(独居がん6名),入院1名で,がんの在宅看取り率は98.0%になり,特筆すべき点として独居がんもスムーズに看取ることができるようになった5)。
訪問では,在宅で療養されているほとんどの方がとてもいい笑顔を浮かべられ,その笑顔を見た家族の方も笑顔になる。住み慣れたリラックスできる場所にいるという安心感なのだと思う。
あるイレウスの70歳女性は鼻管だけでなく,サンドスタチンやモルヒネの持続皮下注射5)を受けながら“今が一番幸せ”,さらに“PCAが命綱”と語った(図1)。病院では辛いスパゲッティ症候群も,自宅では笑顔となれるのだ。
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