連載 精神科医の家族論・12【最終回】
家族以外の人間の存在
服部 祥子
pp.230-233
発行日 2010年3月15日
Published Date 2010/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101566
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この優しきメンターたち~家族を支える助っ人
家族以外の人間が関与することによって家族関係は好転も暗転もする。ことに実の家族だけでは通り抜けられないような苦境や困難が,家族以外の重要な他者によって大きく変わりうる。たとえばメンターのような人物の登場によって。
アメリカで暮らしていた頃,友人に「あなたはメンターをもっている?」と問われたことがある。聞き慣れない言葉にとまどっていると,彼女は親切に解説をしてくれた。メンター(Mentor)とはもともとギリシャ神話に出てくる人物で,親友のオデュセウスがトロイ戦争に出征して20年間故郷に帰ることができなかった間,その息子テレマコスを父親代わりとなって保護し,教育したそうである。この故事から,自分を支え,助力,教育,忠告をしてくれる人をメンターとよび,アメリカでは家庭においても職場においても,こうした人物をもっているか否かが生きていく上に重要な鍵になるという。メンターという語は日本にも輸入され,時折耳にするが,いわば日本語の「育ての親」に近いニュアンスがあるようだ。
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