訪問看護と介護 15巻2号 (2010年2月)

特集 廃用症候群を予防する

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入院治療から在宅に戻ってきた高齢者には,何より廃用予防の視点をもったケアが必要です。術後であっても過度の安静は廃用症候群をひき起こし,一方,慢性期の不活発な生活は,その人の生きる意欲を失わせ,うつ状態につながりかねない。

こうしてみると,廃用予防は高齢者ケアの最前線といえるかもしれません。

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 何らかの基礎疾患を抱えながらも家での生活を続けていた利用者さんが体調を崩して入院。加療により体調は回復したけれど,病気の後遺症や入院生活により身体機能の低下した状態で退院となる……。訪問看護をしているとそんな場面に多く出合います。

 歳を重ねるごとに身体機能が少しずつ低下していく,それは避けて通れない現象です。しかし「自分らしく生活する」という視点で考えていくことが,在宅では機能低下の予防に繋がっています。

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 当院は606床の急性期病院であり,平均在院日数(10.6日/2008年)と入院期間の短縮化に努めている一方で,病状の増悪・低栄養・術後の合併症などによりADLが低下した廃用症候群患者の平均在院日数は76日(2007年)と長期に及んでいます。早期退院・自宅退院にむけて,急性期より早期離床を行なうことは廃用症候群を防ぐ大切な手段であり,私たちリハビリテーション科(以下,当科)の役割は大きいと考えています。

 当科では適応患者が全科にいると考え,どの入院患者においてもリハビリテーションの必要があれば引き受ける体制をとっています(図)。

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 近年,高齢化の進展がめざましく,手術を受ける高齢者の数も激増しています。一方,医療制度改革により在院日数が短縮化され,医療の構造は入院から地域・在宅へと転換が進んできました。それに伴い,リハビリテーション医療は,急性期,回復期,維持期という病期別の分類が定着し,包括的な介入が普及しつつあります。

 当病棟は外科・皮膚科・小児科の混合病棟で,胃癌,大腸癌,食道癌,肝癌などの消化器疾患を中心に,甲状腺や乳腺疾患,ヘルニア,痔なども含め,年間約1400件以上の手術が行なわれていますが,数年前まで,「リハビリは急性期を乗り切ってから」という考えのもと,急性期患者に対するリハビリはほとんど行なわれていませんでした。

 ところが手術を受ける患者の高齢化に伴い,術後に廃用症候群や嚥下障害を併発し,回復が遅延し,何らかの介助が必要とされながら自宅退院となるケースが増えていることが明らかになってきました。

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口腔領域の廃用症候群

 高齢者が入院治療による長期の臥床を余儀なくされると,運動機能や生活機能が低下し,合併症や廃用症候群を併発し,入院が長期化することが知られています。高齢者の心身機能の低下は,老化によるものと考えがちですが,実は廃用症候群が見逃されていたことがわかってきました。

 口腔においても咀嚼機能,摂食・嚥下機能を長期に使わないまま放っておくと廃用症候群が生じます。これは,誤嚥性肺炎や食べ物による窒息を引き起こし,生命を脅かします。たとえば図1~3に示すように,経管栄養や不十分な補綴処置の結果,咀嚼筋や顎骨の萎縮をきたします。これらの状態は,高齢者のQOLを著しく低下させる要因なので,適切な歯科医療・口腔ケアの提供が必要となります。

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 廃用症候群はわかりにくい言葉である1~3)。英語ではdisuse syndromeという。「使う」という動詞useに,「非-」という接頭語dis-が付いているので「使わないこと」に関係して発生するらしいことはわかる。しかし,どこを使わないと,どのような症状が発生するのか,どのくらいの時間使わないでいると発生するのかはわからない。そのために,防ぎようがないのではないか,とも思われ,その一方で,いとも簡単に予防可能,という人もいる。臨床的には,いずれも誤りであろう。

連載 マグネットステーション インタビュー・26

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小児の看護からすべてが見える

木村 小児の訪問看護利用者が多いと聞きました。

梶原 130人の利用者のうち,いわゆる小児領域の利用者は74人です。25人が介護保険で,残りは医療保険のターミナルや難病の方です。

連載 訪問看護 時事刻々

診療報酬改定 石田 昌宏
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 10年ぶりのプラス改定となった診療報酬。そもそも民主党も自民党もマニフェストにプラス改定を謳っていたから,ほっとしたというより,わずか0.19%だけかと残念な気がした。高齢化の進展や財政の圧迫を考えれば,大きな伸びは最後のチャンスかと感じていたから,これからの見通しを下方修正しなければならないというのが,私の今の正直な思いである。

 それにしても診療報酬アップは実に難しい。パーセントでわかりにくければ金額に換算すればわかるが,1%上げるということは3600億円くらい増えるということである。あまり意味のない計算かもしれないが,看護師一人の人件費を500万とすると,7万2000人分に相当。今の訪問看護ステーションの総従事者数(常勤換算)よりも多い。今後,もし大幅なアップが見込まれるとしたら,それは社会保障の枠組みの中で診療報酬を考えるのではなく,そもそも日本は国のあり方として医療をどれくらい重要視するかという,国家観についての議論をしっかりとできる時であろう。そういう政治家を国民が輩出しなければならない。

連載 在宅ケア もっとやさしく,もっと自由に!・5

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 急性期症状の対処のために入院して2~3週間ベッド上の生活をしただけで,廃用症候がでて心身の働きが落ちます。退院となると,退院後の生活に即したリハビリが必要で,ここがうまくいかないと,廃用はそのままで寝たきりになり,さらにさまざまな合併症を引き起こし,意欲が失われ,うつ状態となってしまうこともあります。これは在宅でよく遭遇すること!

 退院後の在宅ケアにつないだときに,在宅ケアチームがどう動くかが問われます。地域のサービスの組み合わせをどう使うのか,介護者の姿勢,家族の介護力も考慮します。

連載 訪問看護普及・拡大プロジェクト・5

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 前回は,全国の訪問看護ステーションを対象に実施したアンケート調査のデータを用いて,事業所の経営安定に関わる要因について分析した。

 今回は,平成21年度介護報酬改定において「看護職員による居宅療養管理指導」1)の創設につながった「訪問看護の利用促進に向けたモデル事業」の結果を報告する。

連載 訪問看護師による看取りの検証・5

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 「家族に迷惑をかけたくない」「誰の世話にもならず死にたい」という言葉を聞く。「年をとってもピンピン元気で,最後はころりと死にたい」という,いわゆるPPKを願う人も多い。しかし,自然界で生き,寿命がくれば死んでいく野生動物と違って,人は社会のなかで家族や仲間と共に互いに親交を深めながら生き,そして最期は誰かの世話になって死んでいくものではないだろうか。

連載 わたしのことをわたしから・34

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 相変わらず不自由な日々を送っています。しかし,病態はその日々の中で変化しています。

 では,最近の“わたしのこと”をお知らせします。

連載 せんねん村村長 老いを地域で活かす・5

PRとアウトリーチ 中澤 明子
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 1998年から2000年にかけて,せんねん村はたっぷりと時間をかけて開設準備を行なうことができました。建設予定地が二転三転したためです。準備会議の後に建築設計者たちとよく食事をしましたが,当時はお酒をたしなみましたので,よい気持ちになってアイディアが浮かび,それを実現させるということもよくありました。たとえば,せんねん村という名前もそうです。計画当初は「きららの里(仮称)」という名前を考えていたのですが,ある事件が起こり変更したのでした。

連載 精神科医の家族論・11

祖父母と孫 服部 祥子
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祖父母から孫へのまなざし~現役卒業という時間のなかで

 人は生まれ,子どもの時間を生き,多くの場合成人すると仕事を持ち,家庭にあっては家族,ことに子どもを得てこれを養い,育てるという,いわば人生の現役としての時間を生きる。そして時が流れ,職業人としての終わり,子どもの独立とともに親としての役割の幕引き,が訪れる。現役卒業である。その頃,わが子は社会人となり,親にもなり,かつての自分と同じ現役の時間を生きており,祖父母となった自分は一つ上の世代に身を置く。そこからかつてのわが子と同じ子どもの時間を生きる孫と対面するわけである。親であった時とは違うことは必然であろう。

 まず祖父母には長い時間を生きて,良くも悪くも多くの経験を積み重ねてきたという実績がある。かつては大切と思ったものがさしたる意味がなく,不運や不幸を嘆いたりうらんだりしたことがかえって人生をプラスの方向に導いたというような価値観の変転がある。これは長く生きてみたからわかったのである。そこで孫という若い芽や若葉が育つのを眺める際,ついその視点から親の考えを批判したり,やり方に口出ししたり諌めたりしたくなる。かつての自分と同じように未熟なことをしている親に向かって。

連載 ほんとの出会い・47

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 アフガニスタンで水路を開き,荒れ果てた大地に緑をもたらしたペシャワール会の医師中村哲さんが若い人たちと対談するのを聞く機会があった。教師志望のある女性が,「人はなぜ生きるのか」というとても大きな問いを中村さんに投げかけた。中村さんは,「自分も若いころはそういうことをよく考えたが,そういう問いはしてはいけないものだと今は思うようになった。人は自分で生きているつもりでいるが,いろいろな人のおかげで生かしてもらっている。どの命もそういう意味でかけがえがなく,大切なもの。人には生きる意味があるかを問う権利はなく,自分が今やりたいこと,しなくてはいけないと思うことをして生きていけばいい」と言われた。そして,アフガニスタンでの大事業も「目の前に倒れている人がいたら助け起こすのと同じで,当たり前のことをしているだけ」とも。

 中村さんは戦火のなかでの大規模な土木事業をこのように自然体で続けている。医療行為以前に,飲み水が汚染されている,食べるものがないと,命が脅かされている人のために,井戸を掘り,水路を開き,人がまず生きていける状況を知恵と力をふりしぼってつくりあげる。「平和とは命を守ること」と考えると,「命」からぶれることない中村さんこそノーベル平和賞に値するとつくづく思う。

連載 お母さんといっしょ・14

朝まで生介護 横谷 順子

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 2009年12月12日(土)に全国町村会館(東京都千代田区)で「在宅医療と医療・介護制度改革シンポジウム」が開催された。

 先の総選挙で初当選を果たした山崎摩耶氏(衆議院議員)による「これからの我が国の社会保障政策と在宅医療・介護の将来」では,直面する課題として診療報酬改定を挙げ,適切な医療費を考える民主党議員連盟の活動を紹介。意気込みを語る一方,政権が交代したにもかかわらず2008年と2010年の基本方針に差がないことへの懸念も示した。質疑応答での「医療・介護のグランドデザイン」の具体性への質問に,山崎氏が「心配には及ばない。時間をかける必要があるものということ」と返答する場面もあった。

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 車いすを使用される方の移動には,電車やバスなどの公共交通機関より,ドアツードアである福祉車両のほうが便利であることは共通理解と考える。療養通所介護や小規模多機能,デイなどの通所サービスの送迎に使われるのは福祉車両が多いであろう。

 その福祉車両は運転する側と乗車する側の双方にとって安全なものでなければならない。そのため,知識・認識というソフトと,車いす・固定装置・シートベルトなどのハードの両面が重要である。

 本稿では介助者側に必要と思われる知識として,車いす乗降方法・固定方法,車いす使用者のシートベルト装着方法,車いす選択のポイントを述べる。

特別記事 シンポジウム「この町で健やかに暮らし,安心して逝くために―緩和ケアが実現できる地域づくりをめざして」

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 西原明さんにはじめて会ったのは2008年の6月。大腸癌の再発・転移があり,「余命はあと1年」と告知されて半年後のことでした。

 毎日新聞の萩尾信也記者とともにあらわれた西原さんは,残された時間を「できるだけ自宅で過ごしたい」と希望されました。しかし,仕事をもつ奥様との二人暮らしであることから,緩和ケア病棟も視野に入れながら,地域の在宅医療とつなげていく方向で考えていくことになりました。

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 自宅で最期を迎えたいと希望される方が,大変多くなっています。個人としての自覚も増してきているのだと思います。

 現在は,癌に対しても「癌です」と病名をキチッと説明することが普通にされています。事実を知らされ,次に考えるのは療養の場をどこにするか。選択肢は,病院か,自宅か,ということになります。

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 新宿・高田馬場にある教会に,「東京自殺防止センター」という,年中無休で電話相談を受けているNPO法人があります。牧師の西原明さんと奥さんの由記子さんが,大阪で1978年に立ち上げ,東京では1998年に始めた電話相談です。

 私が初めてお会いしたのは7年前です。当時,私は自殺の取材をしておりまして,その中でご夫妻に出会いました。後に,僕自身もボランティアの研修を受けて,電話相談のお手伝いをしてきました。特に,大みそかから正月にかけての年越しの電話番は,毎年,西原ご夫妻と一緒に年を明かすのが恒例になっておりました。

家族の思い 西原 由記子
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 中村先生の訪問のお話と,萩尾さんの写真を見て,なるほど,なるほどと思いました。地域の医師と,訪問看護ステーションの皆さん,それからブース記念病院に入院させていただいて,いろんな方々が,皆つながりあって,1人の命の最期を全うできるようにしてくださったというふうに実感しております。

 西原は非常に呑気な面と,頑固な面とありました。自宅は,寝室とリビングルームがちょっと離れているんですが,「オーイ」と声がかかる。あまり声を出すと消耗するだろうと思って,スイスで買ってきたカウベルの小さいのを鳴らすことにしたら,しょっちゅうガラガラーンと鳴らすんです。それに加えて,何だかんだと言うのです。

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 西原さんは,当ステーションの訪問看護師2人がお手伝いさせていただきました。私は,管理者として,西原さんご夫妻のご意向をどのように受け止めて,医師やケアマネジャーと連携を取っていったかをお伝えしたいと思います。

 訪問看護は,2009年1月6日が初回訪問でした。中村先生からは,お正月の2日にメールをいただいて依頼は受けていたのですが,珍しくステーションの静かなお正月で,初仕事が5日でしたので,ほんとうに申し訳なかったのですが,ご連絡して,翌日,初回訪問が行なわれました。

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 私は西原明さんの最期にかかわらせていただいたホスピス医です。西原さんについて,それぞれの立場から語っていただくと,一人の人がいろんな顔をもっていることがわかり,そのどれもが西原さんその人であるというふうに思います。

 写真は,2008年12月16日,毎日新聞の1面に掲載されたものです。武市さんというプロのカメラマンが撮った写真です。普通の人だったら,なかなかカメラを意識して,こんな顔はできない。これができるのが,彼の凄さではないかと思います。この写真が掲載された日の翌日,中村先生から,病院の連携室を通して西原さんを紹介されました。西原さんは,奥様と,毎日新聞の萩尾さんと3人で,中村先生の紹介状(確かレスパイトと,何かあったときに最終的にお願いするかもしれないという内容)持参で外来に来られました。

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編集後記 伊藤 , 富岡
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●「廃用」という漢字からその意味が伝わりにくい。とても大事なことなので,もっとわかりやすい表現ができないものかと思います。歩かないと手足の筋力がなくなるように,口から食べることをしなくなると口腔内の機能が衰え,舌も萎縮していく。廃用予防は生活の場である在宅で必須のケアであることがわかります。少し違うかもしれませんが,個人的にはかつての校長訓示「習慣は第二の天性」が思い出された特集でした。……伊藤

●「マグネットステーション インタビュー」での梶原氏の言葉,「医師はあくまで治療をする人。抱えている病気を障害として,その医療のどこをどう変えていけばこの子なりの日常の健康に活かせるかを考えるのが,看護師の仕事ではないでしょうか」に,看護師だからこそ発揮できる力をまたひとつご教示いただいたように思います。「訪問看護普及・拡大プロジェクト」では青島氏に「看護職員による居宅療養管理指導」につながったモデル事業について改めて解説をお願いいたしましたのでご覧ください。……富岡

基本情報

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訪問看護と介護
15巻2号 (2010年2月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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