訪問看護と介護 10巻2号 (2005年2月)

特集 災害時,在宅療養者をどう守るのか

【1】昨年の災害を経験して

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救護班第2班として現地へ

 「ここの救護所は介護もやるのよ」

 先発班の看護師長の引き継ぎ第一声だった。

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2004年は全国各地で大規模な自然災害が発生した。新潟県では,7月中旬に発生した集中豪雨による水害,そして10月に発生した中越地震によって大きな被害を受けた。見附市でただ1つの訪問看護ステーションである当事業所も,この2つの災害に相次いで見舞われた。いずれの災害の時も当事業所が壊滅的な被害を受けることはなかったが,見附市よりももっと被害の大きかった地域では,訪問したくてもできず,事業所自体が活動できなかったところもあると聞く。本稿では,当事業所が経験した2つの災害についてまとめた記録を紹介する。

●訪問看護ステーションみつけについて

 訪問看護ステーションみつけは平成11年に開設し,約100名の訪問看護利用者と,約60名のケアマネジメントの利用者を常勤看護師5名(ケアマネジャー兼務は4名),非常勤3名で訪問している。見附市唯一の訪問看護ステーションということもあり,ALSの方や,在宅酸素,BiPAPを必要とする方など,医療依存度の高い利用者さんも多く,特別管理加算がついている人が40%を超えている。

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昨年日本に上陸した台風23号は,10月20日,豊岡地方において未曾有の被害をもたらした。豊岡市での浸水による被害は,全壊195棟,大規模半壊814棟,半壊1972棟,床上浸水231棟,床下浸水2682棟で,市街地の約9割が被害を被った。

 現在,市街地は,一見何もなかったかのようにきれいになった。しかし,ひとたび被災した家の中に入ると,まだ畳が入らず,建具も外されたままでがらんとしたところも多い。当訪問看護ステーションは建物の3階にあるが,まだ仮設による電気供給のため,節電が必要で,この冬は石油ストーブで暖を取りながらの運営になるかもしれない。

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福井赤十字訪問看護ステーションは,福井市の南部に位置し,母体病院である福井赤十字病院の訪問看護室を引き継ぐかたちで1999(平成11)年に在宅介護支援センターとともに開設した。翌年には居宅介護支援事業所も併設している。

 2004年7月,活発な梅雨前線が北陸地方をゆっくり南下したのに伴い,17日夜から18日にかけて,北陸地方と岐阜県は集中豪雨に見舞われた。特に,18日朝から昼前にかけて福井県で非常に激しい雨が降り,足羽川の堤防決壊,一乗谷川の氾濫などにより,市内各地域で甚大な被害を受けた。今回の災害において母体病院は災害拠点病院として機能した。地域での支援を業務としている私たちの訪問看護ステーションにとっては初めての経験であり,今回の被災経験を振り返ることで,これからの活動につなげたいと考える。

【2】在宅療養者を守るための地域のしくみづくり

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神奈川県平塚保健福祉事務所管内の病院,訪問看護ステーション,在宅介護支援センター,市役所,町役場,保健福祉事務所など31施設の看護職で構成する継続看護連絡会では,地域ケアの課題や連携に関する検討や学習会を開催しています。この連絡会では検討課題の1つとして在宅療養者の防災対策に取り組んでいます。このきっかけは,阪神淡路大震災でした。私たち看護職は地域で受け持ちの患者さんを担当してケアしていますが,災害が起きた時,1人ひとりの家庭にかけつけることは困難です。では,事前の防災対策として何ができるのでしょうか。本稿では継続看護連絡会を中心とした,在宅療養者の防災対策の実践を紹介します。

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訪問看護ステーションふしみ(以下,「当事業所」)は静岡県の伊豆の玄関口に位置し,東洋一の湧水を誇る柿田川のある清水町唯一の訪問看護ステーションとして1996(平成8)年11月に開所しました。職員は看護師5名(常勤4名,非常勤1名)で,理学療法士が2名(非常勤)です。利用者さんの状況を表1に示します。

 当事業所は,2004年に日本医療機能評価機構より認定を受けた三島共立病院を母体とした医療法人社団静岡健生会に属しています。同法人では,5訪問看護ステーション,1病院,3診療所,4デイサービス,1デイケア,2ヘルパーステーションのほか,数か所に居宅介護支援事業所を経営し,医療・福祉の両面から利用者様が最後まで住みなれた場所で療養できるよう,地域全体で支えあうネットワーク作りに取り組んでいます。

連載 マンスリーダイジェスト

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「痴呆」から「認知症」へ

厚労省が呼称変更

2004/11/19

 厚生労働省は,「痴呆」に替わる呼称を「認知症」とすることで合意した。最終的には12月24日の検討会でまとめる報告書で決定し,認知機能のすべてではなく一部に障害がある場合も「認知症」として認めるという条件づけも行なう。

 同省は,「痴呆」という用語が蔑視的・差別的な意味合いを含むとして,これに替わる用語を検討する検討会を6月に設置。9月にはホームページなどで,「もの忘れ症」「記憶障害」など6つの候補について意見を募集し,6333件の応募があった。

 今後は,年明けの通常国会に提出する予定の介護保険法の改正案で,「痴呆」の用語を「認知症」に変更する。行政用語は法案成立次第,新呼称に改める。また,広報業務を推進し,痴呆の用語を使っている関連団体や学会をはじめ,一般への普及をめざす。

連載 訪問看護 時事刻々

官製市場の民間開放 石田 昌宏
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「混合診療の解禁」「株式会社による病院経営」「外国人看護師」……最近,これらの語句が新聞紙上を賑わしているので聞いたことがあると思う。ずいぶん大きな変化が来そうに感じて,将来を不安に思う人も多いだろう。

 もう昨年のことになってしまうが,クリスマスイブの日に,政府の規制改革・民間開放推進会議が「官製市場の民間開放による『民主導の経済社会の実現』」を副題にした答申を発表した。小泉内閣が始まってから,規制改革を実現させる力が強く働いているが,その根源の会議がこの推進会議だ。

連載 花凪の人々─なりたい自分になる介護・8

季節と人に寄り添って 木村 美和子
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「花凪は,季節に寄り添って生きていこう」と,活動を立ち上げた当初に夫と話していた通りに,3月3日には桜餅とうぐいす餅を作って桃の節句を楽しみ,4月の下旬に桜が咲きはじめると,夜は北海道神宮の夜桜を鑑賞しに行き,昼はのり巻といなり寿司を持って観桜会。どこに行くにもみんな一緒。体調の悪い下宿人が出ると家族の誰かが看病のために残らなければならないので, 「皆さん元気でいてくださいよ。頼みますよ」

 と毎日のように下宿人たちに言いながら,祈るように当日を待ちます。

連載 ドキュメント―介護アドバイザーが行く(14)

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前回,入浴委員会を立ち上げ,新たに青山幸広というアドバイザーが参加するところまでを紹介した。今回はまず,2001(平成13)年11月から2002(平成14)年11月までのききょうの郷について,入浴委員会メンバーである職員が,湖山医療福祉グループ公開講座で発表した内容の一部を紹介する。当時,ききょうの郷は開設6年目,1階は通所サービス,2・3階に100名の入所者がいた。この職員は入職5年目を迎えていた。

連載 口腔ケアを待つ人々・10

災害時の口腔ケア 迫田 綾子
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新潟は雪が降り積もっているのでしょうか。新潟中越地震から3か月が経とうとしています。亡くなられた方や怪我をされた方に,ご冥福とお見舞いを申し上げます。まだ避難している方も多いことでしょう。寒い冬,風邪やインフルエンザ,肺炎といった呼吸器疾患に十分注意して乗り切ってほしいと思います。

 昨年,現地に入った神戸の歯科医師のレポートによると,被災地の歯科医院の中には,診療所が崩壊し,再開が困難なところもあるといいます。そのため,歯の痛みや義歯不適合により食事に支障を生じていても,治療ができない人が多々いるのではないかと思われます。

連載 人工呼吸器とともに生きる・2

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前回は,ALS患者である高澤信一さんの発病以降の経過と療養生活について紹介しました(表1)今回は,高澤さんの利用しているサービスについて,週間予定表などを用いて説明します。

 高澤さんは,毎日1回の訪問看護と週2回の訪問入浴,週3回の訪問リハビリを定期的に利用しており,訪問看護を中心としたサービス利用を行なっています(表2,3)。在宅生活を始めて1年以上経た現在も,妻の介護に加えて,1日に1回1時間半の訪問看護を利用することで,安定した日常生活が実現しています。

連載 診療所日誌・2

診療所の朝 小笠原 望
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ぼくの診療所の朝は早い。8時から診療を始めるのだが,7時に診療所を開けると,受付に名前を書く(「順番を取る」と近所の人が言う)ために,ぽつぽつと患者さんや家族の人が訪れる。田舎のかかりつけ医が全部を予約診療にするのもどうかと思い,今は午後の一部だけ予約制にしている。

 四万十川に架かる赤鉄橋は,全長600m以上はあり,診療所から鉄橋を渡ると中村の町に入る。この鉄橋を歩いて,町から受診する人もいる。橋の上は川風がけっこうきつく,とくに冬はお年寄りが歩くにはなかなか大変だ。宮崎さんはこの鉄橋を手押し車を押してやって来る。それも,朝早くに一度「番を取りに来て」から,都合2往復するのだ。

連載 リフレッシュのすすめ・2

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 今回は私のリフレッシュ法について聞いてもらう。まずは私の紹介からスタートしたいと思う。もし人生50年といわれた時代に生きたのならば,最後の年になってしまった。介護職について4年と5か月。

 家族は妻1人(当たり前ですね),子ども3人,両親2人である。妻は看護師として現役でばりばり仕事をしている。母は昨年介護認定を受けて要介護2と判定され,日中父が1人で母の面倒をみながら家を守ることは難しくなってきた。そこで,私が勤めている介護老人保健施設「生きいき倶楽部」の通所ケアを利用することになった。これは家族会議を開いて検討した結果だが,満場一致で賛成が得られた。こんな家族と楽しく暮らしている。

連載 介護者を地域でサポートするしくみを探して・4(最終回)

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この最後のコーナーでは,立ち上げから3年間の活動についての振り返りと今後の展開について述べたいと思います。

 これまで「介護者のケア」を社会化し具現化するため,いくつかの事業を手がけてきたわけですが,成果としては主に社会への啓発,場づくり,人づくりの3点が挙げられると思います。

連載 ケアの方舟・8

最後の片付け 石原 雅彦
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男に比べて女は片付けものが上手である,というのは暴言だろうか。

 「それは暴言よ,男が片付けものをしないから,女は仕方なく片付けもの上手にならざるをえないんじゃないの!」と言われると耳が痛いけれど,子ども時代に女より片付けものが上手な男友達を探すより,男より片付けものが下手な女友達を探すほうが難しかったので,やっぱり女は根っから片付けもの上手だよなぁ,と思うのだ。

焦点 台風23号・バス水没事故 そこに看護師たちがいた

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2004年,日本列島を縦断した大型台風23号は,各地に深い傷跡を残した。九州,中国,四国,近畿,東海地方を中心に河川のはんらんが相次いだ。警察庁によると全国で79人が死亡,12人が行方不明(10月23日調べ)になり,111人の死者・不明者を出した1979年の台風20号以降で最悪の被害となった。

 そして,京都府舞鶴市では,観光バスが水没し,乗客37人がバスに取り残される事態となった。バスの屋根の上で一晩を過ごした37人は,21日早朝,海上自衛隊のヘリコプターとボートで全員が救助された。

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昨年,日本列島に上陸した台風は10個を数える。10個目の台風23号は超大型であった。10月20日夜,私たちが乗った観光バス「トマトバス」は,京都府舞鶴市で水没し,37名全員が屋根の上に取り残された。旅行先の福井県芦原温泉から自宅のある兵庫県豊岡市に帰る途中であった。

 平均年齢67歳の団体客は,兵庫県市町村職員年金者連盟豊岡支部の者だった。全員が顔見知りだったこともあり,結束し知恵を出しあって約10時間,嵐の中を耐えて無事生還した。その中に,公立豊岡病院の元看護師が9名いた。

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水没したバスに乗っていた9人の看護師は,公立豊岡病院のOBたちである。10月20日,バスの水没と時を同じくして,豊岡病院も危機にさらされていた。兵庫県豊岡市では,台風23号がもたらした大雨で,市の中心を流れる円山川が決壊寸前。市内全域に避難指示が出された。

 23時12分,円山川の堤防が約50mにわたって決壊した。決壊現場の対岸に位置する公立豊岡病院では,1階部分が一部床上浸水し,受電設備の故障による停電,断水,貯蔵倉庫の浸水,医療機器の故障などが生じていた。職員たちは,それらへの対応や,入院患者の移送,水につかったカルテ書類の避難に奔走していた。

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小林豊子さん(71歳)は,公立豊岡病院に44年間勤務し,うち15年は総婦長を務めた。退職後は社協のボランティアとして,入浴サービスや被災者への傾聴など,多忙な日々を送っている。

 10月20日,一行は1泊2日の予定で芦原温泉に泊った翌朝,「台風が来ているからなるべく早く帰ろう」ということになり,帰路についた。土産物店に寄り,舞鶴自動車道まで来ると,自動車道は土砂崩れで通行止めになっており,下の一般道を走ることになった。

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1995(平成7)年,特別養護老人ホーム(ショートステイ)のR苑事件が起き,1997(平成9)年,老人保健施設Y園事件が起きた。これらは入所中の老人が食物を誤嚥し,死亡した事件である。いずれも,遺族が損害賠償を求め,裁判となった。R苑事件では,施設職員が適切な処置を怠ったため起きた事故で施設側に過失があるとし,遺族への損害賠償の支払いを命じた1)。Y園事件では,施設側に過失はなかったとして遺族の損害賠償請求を棄却した6)。2つの事件とも控訴審で和解が成立した。

 いずれも施設入所中の事件であり,在宅での事件ではないが,老人を対象とした看護,介護事件であるので,老人の誤嚥を防止する上から,また,事故発生時,どのような救命救急処置が求められるのか,さらに日頃からどんな教育,訓練,連携が必要かを考察し,同様の事故防止に役立てたい。

基本情報

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訪問看護と介護
10巻2号 (2005年2月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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