LiSA 25巻12号 (2018年12月)

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はじめに

平成30年度診療報酬改定で麻酔領域全体ではプラス改定だったものの,全身麻酔本体の点数がマイナス改定となった。本稿では,厚生労働省の資料からこれらの改定の意図を読解したい。また,「診療報酬点数を付けて欲しいのに付かない」「点数を上げてほしいのに上がらないのはなぜか」という疑問について考える際に必要となる医療費や診療報酬制度の基礎知識や背景を解説する。

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脊髄幹麻酔に関連する神経障害の既往のある患者の麻酔方法を考えるとき,何を基準にするのかが,今回のテーマである。

 過去に脊髄幹麻酔に関連する神経障害のエピソードがあると,脊髄幹麻酔の施行が忌避される傾向がある。周術期の神経障害の原因はさまざまであり,麻酔やその手技が原因でないことも多い。やみくもに脊髄幹麻酔を避けるだけでは再発は予防できない。前回その障害がなぜ起こったのか考察して,麻酔法の選択や術中術後の体位や肢位などを顧りみて,周術期管理の改善に生かしていくことが大切である。

 いきなり選択肢を狭めず,原因をしっかりと考察したうえで,それぞれの麻酔方法のメリット,デメリットについて熟考する。そして,何を選択しようがデメリットはなくならないのであるから,事前に患者への説明をしっかりと行い,信頼関係を作っておくことが大切である。

予告編
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活動性肺炎を合併した大腸イレウス

次号の症例カンファレンスの提示症例を,一足先に紹介する。

自施設にこのような症例が来たら,どのような麻酔計画を立てるか,事前に考えておいてほしい。

次回,各施設のPlanをお楽しみに!

徹底分析シリーズ もう一度始める神経ブロック

巻頭言 森本 康裕
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日本国内で超音波ガイド下末梢神経ブロックが臨床応用されるようになって,10年が過ぎた。一部の麻酔科医だけの技術であった神経ブロックは,広く行われるようになってきた。新しい神経ブロック手技が次々に発表され,今では1か月に一つくらいのペースで新しい名前のブロックが発表されている。LiSA誌上でも「blockstories:超音波ガイド下末梢神経ブロック 実践49症例 その後」という不定期連載で,そうした最新のトピックをフォローしてきた。

 しかし,そうした最先端の情報とは別に,「基本的なブロック手技が確実に施行できること」が最も重要ではないかと考えるようになった。何となくエコーを当てて,「神経はこのあたりかな」くらいの描出で局所麻酔薬を投与して,超音波ガイド下神経ブロックと称している施設も多いのではないか。

 そこで今回,もう一度基本から考えて,確実に効果が実感できて,しかも安全に神経ブロックを実践できるようにしようと,「もう一度始める神経ブロック」というタイトルで本徹底分析を企画した。

「何となく行っているが効果が実感できない」

「やってみたけど難しいのでやめてしまった」

「周囲に指導してくれる人がいなくて実践できない」

そんな方々,もう一度神経ブロックの基本を勉強してみませんか?

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筆者が超音波ガイド下末梢神経ブロックを始めてから,10年ちょっとが経過した。当初は一部の“新し物好き”が行っていたが,今やほとんどの施設で行われるようになった。当時は英語の教科書しかなく,情報の入手も容易ではなかったが,今では教科書も多くあり(表1),必要な知識を日本語で得ることができる。募集開始と同時に満席となっていたハンズオンセミナーは,開催数が増え容易に受講できるようになった。また,超音波装置も神経ブロックに適した装置が普及した。いろいろな面で神経ブロックがやりやすい環境が整ってきた。

 ところが,学会などでいろいろな麻酔科医と話をしてみると,神経ブロックの現状はそれほど明るくないこともわかってきた。特に多いのが,最近の流行だからと始めてみたが,いざ自分でやってみると難しい。しかも本当に効果があるのかわからず,やめてしまったというものである。さらに話を聞くと,そうなる理由もみえてきた。

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麻酔科専門医資格を来年取得する予定の麻酔科5年目のK先生は,重篤な心血管系合併症をもつ55歳の男性の足関節手術を担当するとき,「区域麻酔法」ではなく「全身麻酔法」を選択した。この選択にはK先生の苦い経験が影響している。

 以前,よく似た症例に対して,神経刺激併用超音波ガイド下(膝窩アプローチ)で坐骨神経ブロックを行ったが,坐骨神経領域の鎮痛は完璧だったにもかかわらず,手術開始時の皮膚切開から痛みのコントロールができず,全身麻酔に切り替えなければならなかったのである。K先生は,このような経験を繰り返さないため,重篤な心血管系合併症を併発している患者にさえ,神経ブロックではなく全身麻酔法を第一選択として手術を行うようになっていた…。

 本稿では,K先生のような過去の苦い経験から神経ブロックをやめた麻酔科医が,もう一度,神経ブロックを行うきっかけになるように「有効な神経ブロックの活用法」を解説する。

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超音波ガイド下末梢神経ブロックは,船旅に似ている。まずは行き先(麻酔法)を決め,海図(解剖)を確認し,暗礁(血管・肺など)を考慮して航路(穿刺経路)を決めていく。操船(穿刺)では,レーダーや魚群探知機(超音波装置)で思わぬ地形の変化(破格)や天候(全身状態)にも対応しながら,目的地(目標部位)を目指す。

 解剖を理解せずに行う神経ブロックは,あたかも海図なしで見知らぬ海に船出するようなものである(座礁・転覆するかも…)。しっかり準備して出かけよう。Bon voyage!

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超音波ガイド下末梢神経ブロックを行ううえで,非常に重要になるのが超音波装置の選択である。超音波装置の進歩があったからこそ,ここまで手技が普及した。

 本稿では超音波装置を使用する際の設定,知っておきたいいくつかの項目について説明していく。

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神経ブロックの実践で最も苦労するのは針の描出である。せっかくきれいに神経が描出できても,針が見えなければ安全で確実な神経ブロックはできない。「針はどこだ」とプローブを動かして,やっと見つけたら肝心の神経が見えなくなっていた,なんて経験はないだろうか?

 本稿では,針描出のコツを神経ブロックの実際の進行に沿って解説する。

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大学病院での後期研修も3年目に入った頃,初期研修医のときに上司の姿から見いだした「いざというときの麻酔科医」には,依然としてほど遠い自分に,ふと焦りを覚えた。手厚い指導にすっかり受け身になっていたことを反省し,ならば心機一転と,翌年から全国行脚に出ることを決意した。限られた期間で苦手を克服し,専門性を高めるには,エキスパートのもとで集中的に学ぶのが一番早いと考えた。

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この十数年間は超音波装置の画質向上により,麻酔科領域でも多くの場面で超音波が大活躍である。筆者も中心静脈穿刺から始まり,観血的動脈圧ライン留置,そして末梢神経ブロックに超音波を活用している一人である。

 しかし,いずれの手技も体表解剖にもとづくランドマーク法で行っていた歴史のほうが長く,その知識,技術をバックボーンとして現在の超音波ガイド下法がある。医師になったときすでに超音波装置は身近にあり,超音波装置とともに手技を覚えてきたという若手も,ぜひ,先達の試行錯誤の賜物であるランドマーク法(神経刺激法も含め)の技術と合併症を避けるための注意点などを知って,各種手技に臨んでほしい。

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医師になって6か月の研修医の頃,腰椎椎間板ヘルニアによる大腿部痛の患者に,鎮痛目的で初めて大腿神経ブロックfemoral nerve block(FNB)を行った。鼠径溝付近で大腿動脈を触知し,その外側に針を垂直に刺入,放散痛が出たところで1%リドカインを3mL注入したら非常によく効いた。それから17年経つが,今は手術室で超音波ガイド下にて同じくFNBを行っている。

 術後鎮痛目的,もしくは手術麻酔としてFNBの適応となる手術は,人工膝関節置換術,人工股関節置換術,下肢の骨折の手術など多岐にわたる。思い返せば,医師となってからずっとFNBを行っている。筆者は,気管挿管と比べても圧倒的に施行回数が多い。麻酔科医になじみ深いFNB,もう一度その詳細に迫る。

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「腹直筋鞘ブロック? 腹直筋の後ろに局麻を入れるんだよね? 超音波で腹直筋はすぐわかったけど,私の針は相変わらず見えないし,途中から筋注っぽくなるし,そもそも腹膜ぎりぎりで怖いのよ。創が腹部正中だけの手術は少ないし,効果がはっきりしないから,最近はやる回数減ったかな…」。

 こんな声をたまに聞きます。でも下線を引いたポイントは,これから説明するたった三つの工夫ですべて解決です。理想的な部位に薬液を注入しやすく,エンドポイントがはっきりしている腹直筋鞘ブロック。さあもう一度,やってみませんか。

“国試の「正解」に異議あり”を受けて

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医師国家試験の出題基準が今回の国試から改定されているが,その中で2次・3次救急患者の治療〜脳心肺蘇生の項目で「人工呼吸」とされていた文言が,「呼吸療法〜酸素投与法,人工呼吸療法」へと変更された。このこともあり,今回の国試では酸素療法に関連する出題が増加するとにらんではいたが,蓋を開けたら筆者の予想以上に酸素投与関連の出題が増えた印象があり,またそれに関連して気道確保や人工呼吸についても出題されていた。

 本稿テーマの設問(問題No.112E 42)も,そのうちの1題である。最初にこの設問を見たときは筆者も好意的にとらえた。しかし,よくよく考えてみると髙田真二氏の指摘1)のとおりで,いろいろと疑問が湧いてきた。確かに,抗凝固薬を内服している状態では経鼻的な処置は出血の危険を伴うし,絶飲食が明らかでない状況での声門上器具の使用も誤嚥の危険を伴うので,今回の正答が経口気管挿管であることは,消去法から導かれるのではあるが……

・舌根沈下(ということは自発呼吸運動は残存している)に対応できない医師が

・自発呼吸のある患者に対して

・循環動態の変動を最小限にとどめた愛護的ですみやかな気管挿管が実施できる

か,非常に疑問である。さらに,この設問を繰り返し学修することで,これからの医学生に「この状況下では経口気管挿管をまず行うべき」という思考回路ができてしまうことはもっと問題である。

 この設問の問題点については既報1〜3)を参照していただき,医学教育を専門としている麻酔科医の立場から,「これをどのように学生や研修医に教えれば最も効果的なのか?」について考える。

連載 ふぁ〜まこKD 第12話【最終回】

サイズと薬物動態(2) 小原 伸樹
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これまでのあらすじ:

時は流れ,小串(大先生),雨宮両先生も,いまや立派な指導者になっています。

連載

THE Editorials
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Anesthesia & Analgesia

Editorial:

Egan TD, Svensen CH. Multimodal general anesthesia:a principled approach to producing the drug-induced, reversible coma of anesthesia. Anesth Analg 2018;127:1104-6.

Article:

Brown EN, Pavone KJ, Naranjo M. Multimodal general anesthesia:theory and practice. Anesth Analg 2018;127:1246-58.

■バランス麻酔からmultimodal general anesthesiaへ

私が1980年代に麻酔科研修医であった頃は,ハロタンと亜酸化窒素を用いたGOF(Gはガス,Oは酸素,Fはハロタンの商品名フローセン)麻酔か,フェンタニルと比較的大量のドロペリドールを用いたニューロレプト麻酔neuroleptic anesthesia(NLA)であった。GOFの場合には,オピオイドを使用しないのが日本では一般的であった。その後,麻酔薬と鎮痛薬,筋弛緩薬を,鎮静・健忘,鎮痛,不動の目的で使用するというバランス麻酔という概念が登場し,広く実施されるようになってきた。

 鎮痛は全身麻酔の基本的要素と考えられるが,痛みは,刺激が加わったときに不快に感じるという感覚であり,全身麻酔中には存在しないと考えられる。術中に患者が動いたりすると,外科医は「患者が痛がっている」と言うことがあるが,外科刺激などの侵害刺激に対する逃避反射による体動と解釈するのがより正しい。高血圧や頻脈が起こると「浅麻酔では?」と言うが,これもまた侵害刺激に対する自律神経系反応というほうがより正しいであろう。Brownらの提唱するmultimodal general anesthesiaでも,全身麻酔中の「痛み」と「侵害刺激に対する反応」は分けて考えられ,術後鎮痛については別に扱われている。

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こんにちは!ワイン安部です。

11月23日に浜松で行われた学術集会では,多くの方にお越しいただき,たくさんの励ましの声や執筆のヒントをいただきました。ありがとうございました。

これからもより楽しく読みやすいコラムを書いていきます。

今回は,シャンパンやスパークリングワインの専門用語についてご紹介します。

Tomochen風独記

㊽ クリスマスツリー 山本 知裕
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年末年始といえばクリスマスとお正月ですが,ドイツ人にとってクリスマスはお正月よりも格段に大切な,冬のメインイベントで,家族と一緒に家で過ごします。一方,年越しは1年で唯一花火ができる日でもあり,友達と一緒ににぎやかに祝います(2015年12月号)。雰囲気的にも宗教的にも,日本のクリスマスとお正月の過ごし方が逆転している感じです。

 今回はそのクリスマスWeihnachtenには欠かせない,クリスマスツリーWeihnachtsbaumについて紹介します。ちなみにドイツでは,クリスマスツリーWeihnachtsbaumよりも,もみの木Tannenbaumと言うほうが多いです。

Medical Books 自薦・他薦

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LiSA VOL.25 総合目次[NO.1〜12, 別冊]

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目次

基本情報

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LiSA
25巻12号 (2018年12月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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