“国試の「正解」に異議あり”を受けて
シミュレーション教育に利用してみる
相澤 純
1
1岩手医科大学医学部 医学教育学講座・麻酔学講座
pp.1310-1314
発行日 2018年12月1日
Published Date 2018/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201275
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医師国家試験の出題基準が今回の国試から改定されているが,その中で2次・3次救急患者の治療〜脳心肺蘇生の項目で「人工呼吸」とされていた文言が,「呼吸療法〜酸素投与法,人工呼吸療法」へと変更された。このこともあり,今回の国試では酸素療法に関連する出題が増加するとにらんではいたが,蓋を開けたら筆者の予想以上に酸素投与関連の出題が増えた印象があり,またそれに関連して気道確保や人工呼吸についても出題されていた。
本稿テーマの設問(問題No.112E 42)も,そのうちの1題である。最初にこの設問を見たときは筆者も好意的にとらえた。しかし,よくよく考えてみると髙田真二氏の指摘1)のとおりで,いろいろと疑問が湧いてきた。確かに,抗凝固薬を内服している状態では経鼻的な処置は出血の危険を伴うし,絶飲食が明らかでない状況での声門上器具の使用も誤嚥の危険を伴うので,今回の正答が経口気管挿管であることは,消去法から導かれるのではあるが……
・舌根沈下(ということは自発呼吸運動は残存している)に対応できない医師が
・自発呼吸のある患者に対して
・循環動態の変動を最小限にとどめた愛護的ですみやかな気管挿管が実施できる
か,非常に疑問である。さらに,この設問を繰り返し学修することで,これからの医学生に「この状況下では経口気管挿管をまず行うべき」という思考回路ができてしまうことはもっと問題である。
この設問の問題点については既報1〜3)を参照していただき,医学教育を専門としている麻酔科医の立場から,「これをどのように学生や研修医に教えれば最も効果的なのか?」について考える。
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