JIM 5巻11号 (1995年11月)

特集 外来診療における画像診断

胸部単純X線写真

正常像 土井 修
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 正面像は通常,背腹方向撮影を撮るが,できれば左側面像を同時に撮ることが勧められる.

 病変の検出という点から見ると,正面像で全く見えず,側面像でのみ拾い上げられる病変は少ないとされるが,それは正面像が十分な画質を有し,読影者が意識して縦隔や横隔膜ドームに重なっている肺野をも読影することが前提条件であり,日常の診察では側面像で小結節影や限局した浸潤影が容易にとらえられることも,それほどまれではない.

気管支肺炎 松迫 正樹
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■症例

 患者 53歳,女性.

 入院の2週隠前から発熱・咳があり,近医を受診.抗生剤を服用するも改善せず,胸部X線写真上異常影を認めたため検査目的で入院.喫煙歴(-).

 入院時検査所見 体温36.4℃,WBC7,600/mm3,Hb11.4g/dl,CRP7.2, ESR89.

肺気腫 松迫 正樹
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■症例

 患者:70歳,男性.

 以前から湿性咳があり,5月から増強し,息切れを自覚し始めた.ばち指(+).喫煙歴40本/日×50年.小児喘息の既往歴あり.両側肺底部で呼吸音の減弱.血液ガス所見は,PO275.1Torr,PCO235.2 Torr,pH7.442.Hb12.6g/dl,WBC5400/mm3.在宅酸素療法の既往はない.胸部X線写真上,肺野の透過性増強,肺血管が末梢でまばらで追いにくい,胸骨後方の含気量増加,横隔膜の下降などの所見がみられ,肺気腫が疑われた(図1,2).

 CT上は,主として汎小葉性肺気腫を示す低吸収域(low attenuationarea;LAA)が広範に認められた(図3).

肺癌 野村 繁雄
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■自然経過が観察された肺腺癌

 患者:54歳,男性.

 約10年前より毎年検診を受けていたが,異常を指摘されなかった.1995年4月初めて胸部X線上左上肺野に異常陰影を指摘され当科に紹介入院した.喫煙歴:20本/日×35年.1990年12月の胸部X線像(図1)では左Sa3に線状陰影のみ,1992年7月には陰影とその外側に線状陰影(図2),1994年7月には陰影は増大し,中に線状陰影(図3),1995年4月には径2cm大の辺縁不鮮明で切れ込み,ケバ立ち,胸膜陥入像(図4)を認める.経気管支擦過診および生検で腺癌と診断された.

気胸 野村 繁雄
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■特発性自然気胸

 患者:37歳,男性.

 1995年1月23日より感冒様症状を訴え,近医を受診した.1月25日右胸痛,呼吸困難を認めるようになり,1月26日当科を受診した.

 喫煙歴:20本/日×13年.右肺の呼吸音減弱.胸部Xi線正面像吸気相(図1)では,右肺尖より上外側にかけて肺胸膜による毛髪線が胸壁より離れてみられ,その外側に血管影はみられない.呼気相(図2)で虚脱肺が明らかである.ブラは明瞭に指摘できないが,原因となる疾患がみられない点より特発性自然気胸と診断した.

胸水 野村 繁雄
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■癌性胸水が疑われた結核牲胸膜炎

 患者:88歳,男牲.

 1994年3月より高血圧にて近医を受診中,11月初旬より労作時息切れが出現し,胸部X線上霧胸水を指摘され(図1,2),精査目的で当院に入院した.喫煙歴なし.ツ反応陽性.胸水より悪性細胞,結核菌ともに検出されなかったが,ADA 40.2U/mlと高値を示したので結核性胸膜炎と診断し,抗結核薬の投与にて胸水は消失した.

Key Articles 福井 次矢
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 今月号の特集の各項目に関連する重要な文献は,筆者の先生方が各論文の末尾に記載されているので,必要に応じてそれらをご参照願いたい.ここではそのような文献との重複を避けて,私が日常診療の画像診断についての教科書や文献とのかかわりで最近感じたことを述べさせていただきたい.

1. Paul and Juhl's Essentialsof Radiologic Imaging. 6th ed J.B. Lippincott Company, Phila-delphia, 1993

腹部単純X線写真

正常像 川村 亮機
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 腹部単純X線写真(腹単)は,腹部の全体像を把握する画像診断として最も簡便・迅速で,かつ再現性に富む情報源であり,臨床所見(主訴,既往歴,現病歴,現症など)に基づいた腹単の読影によって,次のステップの診断手順や治療方法などを指示するパイロット(水先案内人)の役割を果たす.臨床所見を反映しない読影,例えば,下痢症における鏡面像を腸閉塞症としたり,開腹術後のfree airを消化管穿孔などと誤認したりすることがないよう,注意しなければならない.

イレウス 川村 亮機
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■単純性イレウス

 患者:51歳,男性.

 主訴:腹痛,腹部膨満.

 既往歴::25年前虫垂切除術,20年前十二指腸潰瘍にて胃切除術,19年前から数回腸閉塞症にて保存的治療を受けている.

 現病歴:排便・排ガスの停止,間欠的腹痛を主訴として本院救急外来を受診した.

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■十二指腸潰瘍穿孔症例

 患者:41歳,男性.

 主訴:腹痛,腹部膨満.

 既往歴:13歳で虫垂切除術.1週間前黒色便を認め,空腹時痛あり.アルコール依存症あり.

 現病歴:本院外来受診約2時間前から急に腹痛発作あり.嘔気・嘔吐はない.

尿管結石 川村 亮機
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■左尿管結石症

 患者:23歳,女性.

 主訴:左側腹部痛,背部痛.

 既往歴:2年前,尿管結石で治療.

胸・腹部以外の単純X線写真

副鼻腔炎 加藤 孝邦
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■症例

 患者:43歳,男性.

 数年前より軽い鼻づまりがあったが放置していた.春先に感冒に罹患したが,感冒様症状は改善した.しかしその後も鼻漏が続いていて,最近ときどき頭が重く感じることもある.

 副鼻腔は前頭洞,籠骨洞,上顎洞,蝶形骨洞と4つあり,主に上顎洞と飾骨洞の病変が多い.最近では副鼻腔の発育が良くなっていて,特に上顎洞と前頭洞が単純X線像では目立っている.

頸椎症 山田 明彦
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■頚椎症性神経根症(図1,2)

 患者:44歳,男性,公務員.

 5年前より,時々左肩関節痛を自覚していたが,6ヵ月前より左肩から左前腕にかけての放散痛が出現するようになり徐々に増強するようになった.単純X線ではC6/7間に骨棘形成を認め,斜位像では同部の椎間孔の狭小化を認めた.CT-Myelography (以下CTM)ではC6/7問で骨棘による左側C7神経根の圧迫が明瞭であった.上腕三頭筋の筋力低下,前腕尺側の知覚鈍麻があり,C7神経根造影において疼痛の再現性があり,C6/7間の椎問孔拡大術に加えて頸椎前方固定術を行った.

腰部脊柱管狭窄症 山田 明彦
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■腰部脊柱管狭窄症例(図1,2)

 患者:65歳,男性,無職.

 5年前より誘因なく,腰痛両下肢のしびれ感を自覚するようになった.1年前より,約100mの歩行により両下肢痛が出現し,間欠性破行(J4)を来すようになった.神経学的に両下肢反射は低下し,両下腿より両足にかけて知覚鈍麻を認めた.足背動脈はよく触知する.X線上L3よりL5にかけて変性側轡,関節突起の肥厚,骨棘形成,椎弓間間隙狭小化,およびたりを認めた.脊髄造影,CTM (CT myelography)などの検査により,L2からL5に至る脊柱管狭窄症と診断し,L2よりL5に至る椎弓切除術および後側方固定術を行い症状は軽快した.

心エコー

正常像 山本 邦彦
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 心エコー図法は,プローブ(探触子)を胸壁に当てるだけで像が得られるという簡便さと,被検者にほとんど苦痛を与えない非侵襲性のため,日常臨床で汎用されている.心エコー図法の特長は,心臓カテーテル検査法と違い,弁や他の構造物の断面が直接見られ,また心筋の厚さや収縮状態もリアルタイムで観察できることである.また,ドップラー法(特にカラードップラー法,J1)も心臓血管造影法のように造影剤を使用することなく,自然な状態での血流情報が得られるので,両者を併用すると,ほとんどすべての器質的心疾患の診断が可能といっても過言ではない.先天性心疾患,心臓弁膜症,心筋梗塞,心膜液貯留などでは,特に有用である.

 断層心エコー図法では種々のエコーウィンドウ(J2)が存在するので,それぞれのアプローチで何が観察できるのかを把握しておく必要がある.

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■大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症の1例

 患者:60歳,女性

 出産時に心疾患を指摘されたが,自覚症状がないため放置していた.半年前,仕事で無理をしたのを契機に,呼吸困難が出現したため,近医受診.加療を受けたが,心不全が増悪し,狭心症も併発したため,当科を紹介された.当科受診時,収縮期駆出性雑音と,高調な拡張期逆流雑音を聴取し,心電図ではストレイン型の左室肥大を,胸部X線写真では左4弓の突出を認めた.

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■僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症の1例

 患者:45歳,女性.

 小児期にリウマチ熱の既往がある.20歳ごろより心雑音を指摘され,35歳ごろ,労作時の動悸,息切れが出現した.このため近医にて加療を受けていたが,徐々に症状が増悪してきたため,当科を紹介された.当科受診時の聴診所早として,1音の増強,opening snapを認め,拡張期ランブル,収縮期逆流性雑音を心尖部領域に聴取した.心電図では心房細動および左室肥大を,胸部X線写真では左第2,3,4弓の拡大を認めた.

肥大型心筋症・拡張型心筋症 山本 邦彦
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■症例1 肥大型心筋症

 患者:55歳,男性.

 胸痛および意識消失発作を主訴として当科受診.受診時,聴診にて駆出性収縮期雑音,および心電図にてストレイン型の左室肥大を認めた.

心膜液貯留 山本 邦彦
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■急性心外膜炎による心膜液貯留の1例

 患者:54歳,女性.

 微熱,感冒様症状,および左胸の刺すような痛み,呼吸困難を主訴として当科受診.受診時,頸静脈の怒張を認めたが,奇脈(J1)は明らかではなかった.検査所見としては,胸部X線写真にて心拡大,心電図にて低電位差,電気的交互脈が認められた.

腹部エコー

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 今や腹部エコー法は画像診断法の1つとして重要であるとともに,卒後初期研修の必修科目となったといっても過言ではない.ただし,不幸にも実習の機会がなかったり,指導者がいないと独学ではなかなか学びがたいものである.また初心者は技術の到達点を高く設定してしまい,そこまでたどり着かないといけないかのような錯覚に陥ってしまう.しかし実際にはエコー技術の奥は深く,そんなに簡単にはたどり着けないのである.

 「腹部エコーは第2の聴診器」ということばがある.聴診も最初は大してできなくても聴診器は使ったはずである.腹部エコーもそれと同じで,どんどんエコーを使っていこう.ただし聴診器は耳に入れてしかるべきところに当てるだけでそれなりに格好はつくが,エコーは使い方が聴診器より少しだけ複雑である.これをマスターすればその後は実地で学び,すぐれた指導者につけば上達できる.いくつかの典型的な所見の部位を覚え,それに従って腹部全体を観察できれば最初はそれでよい.そこで以下に腹部エコーを行うときの一般的手順を記す.

肝硬変 秋本 伸
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■症例(図1a~e)

 患者:74歳,女性.20年前子宮手術時に輸血の既往あり.食欲不振を主訴に受診.初診時の超音波検査で肝硬変と診断.肝機能検査でGOT>GPT,膠質反応高値. HCV抗体陽性,腫瘍マーカーは陰性.

胆石症 秋本 伸
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■症例(図1)

 患者:50歳,女性.

 食後の間欠的な上腹部痛を主訴に受診.腹痛は右背部にぬけるように放散し嘔気嘔吐は伴わなかった.初診時の超音波検査で胆嚢結石と判明した.胆管に拡張はなく,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.

膵癌 秋本 伸
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■症例(図la~f)

 患者:57歳,男性.

 感冒様の微熱と倦怠感を主訴に受診.肝機能異常と黄疸を指摘され超音波検査を施行して,膵頭部腫瘤を発見.超音波ガイドに経皮胆管ドレナージ(PTCD)を行い減黄の後,膵頭十二指腸切除術を施行した.

腹水 秋本 伸
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■症例(図la~c)

 患者:41歳,女性.

 腹部膨隆と腹満感を主訴に受診.打触診で腹部に波動を触知する.血液生化学検査所見に異常はない.ただちに行った超音波検査で腹腔内に大量の液体貯留(無エコー域)が見られ,骨盤内所見とあわせて卵巣疾患に伴う腹水貯留と診断し産婦人科に入院となった.

忘れられない患者さんに学ぶ

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 国立身体障害者リハビリテーションセンターは,急性期治療に続き治療訓練が必要とされる人や,社会復帰のための訓練が必要と判定された身体障害者手帳所有者らが紹介または委託され訪れる.そのような人々に対して,同一敷地内にある国立職業リハビリテーションセンターと協力し,医療から職業訓練に至る包括的なリハビリテーション・サービスを実施している.対象者は切断,脊髄損傷,脳性麻痺,糖尿病による視力障害,先天聾,頭部外傷,脳血管障害など原因も障害もさまざまである.最近は運動機能と言語の障害,腎疾患と視力障害など複合の障害を伴う人々も増えている.

 このような中には,予想もしなかったような訓練効果を発揮する例もある.両大腿近位部,右前腕部を切断された30歳の女性は,病院に入院した当初はうつ状態で,肥満気味の体の移動もままならなかったが,間もなく機能訓練によってベッドから車椅子への移乗が可能となった.次に水泳訓練を受けた結果,アジア太平洋地域の国際身体障害者スポーツ大会に出場するまでに上達した.大会で同様な障害を持つ人々と出会い,本人の社会復帰への意欲が強まり,帰国後,ケースワーカー,作業療法士,義肢装具士などの支援を受け,自動車運転用補助具を用い訓練の結果,運転免許を獲得することができた.社会復帰後,支援を受けながらも自力でドライブクラブに参加しているし,数年後同様な障害の女子高校生が入所した際にはカウンセラーとしての役割も果たしてくれた.

漢方診療室・5

のぼせ感を訴える43歳,男性 三潴 忠道
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 ■漢方診断(証の判定)の要点は,第1に病位(三陰三陽)と虚実をしっかり把握すること.次に複数の証が候補の時,先表後裏(表証から治療)を原則,先急後緩(急激な証が先)を応変の措置と考え,方剤(証)を決定する..

基本情報

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JIM
5巻11号 (1995年11月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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