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Case
患者:49歳,男性.
主訴:発熱,腹部膨満.
現病歴:妄想の強い統合失調症にて,精神病院に30年ほど長期入院中の患者.入院中はそのほとんどを閉鎖病棟で過ごしていたが,明らかな内科疾患や外科的疾患での治療歴はなかった.半年ごとの検診でも異常は指摘されていなかった.しかし,今回の当院入院の約1カ月前から,腹満が生じるようになっていた.入院前日から37℃台の微熱が出現.軽度の腹部膨満感を訴えるも,全身状態は良好で食欲もあった.同日深夜から39℃台の発熱を認めた.悪寒戦慄はみられず,悪心・嘔吐なし,下痢・便秘もなかった.上気道症状などもみられなかった.めったにない発熱,軽度の低酸素血症,黄疸も認められたことから,当院に紹介搬送となった.
既往歴:統合失調症.輸血歴なし.
内服薬:炭酸リチウム(200mg)4錠/3,リスペリドン9mg/4,オランザピン20mg/2,ニトラゼパム10mg/眠前.
家族歴:特記事項なし.
生活歴:喫煙および飲酒歴なし.
入院時現症:身長165cm,体重70.4kg.全身状態はやや苦痛様である.血圧120/50mmHg,脈拍88回/分整,呼吸数19回/分,体温37.8℃,SpO2 96%(酸素3l).GCS:E4V5M6.眼球結膜に黄染あり,貧血なし.頸部表在リンパ節は触知しない.呼吸音は清・左右差なし.心音は整・雑音なし.腹部は膨満・波動あり,打診上で肝・脾腫を疑う.両下腿前面に圧痕浮腫あり.皮膚にクモ状血管腫なし.ばち状指なし.神経学的所見に特記事項なし.
入院時検査所見:血算;WBC 1,800/μl(Seg 83.0%,Lym 16.0%,Mono 1.0%),RBC 288×104/μl,Hb 9.6g/dl,Hct 26.6%,MCV 92fl,Plt 5.0×104/μl.生化学;Na 136mEq/l,K 3.5mEq/l,Cl 111mEq/l,Ca 7.6mg/dl,BUN 7mg/dl,Cr 0.7mg/dl,TP 5.1g/dl,Alb 2.7g/dl,AST 44IU/l,ALT 29IU/l,LDH 221IU/l,ALP 1,167IU/l,γ-GTP 616IU/l,T-Bil 5.7mg/dl,D-Bil 4.5mg/dl,Glc 98mg/dl,CRP 3.5mg/dl.凝固;PT(INR)2.22,APTT 45.0秒.
血清:HCVAb(-),HBsAg(-),HBsAb(-).
動脈血液ガス分析:pH 7.51,PaCO2 25.4mmHg,PaO2 90.8mmHg,HCO3- 20.0mEq/l,AG=5.
一般尿検査:比重1.006,pH 7.0,糖(-),蛋白(-),潜血(-),ビリルビン(-),ケトン体(-),ウロビリノゲン(+).
心電図:正常範囲内.
胸部X線:右横隔膜の挙上を認める.
腹水所見:細胞数150/μl,アルブミン1.2g/dl,糖144mg/dl,LDH 84IU/l.
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