忘れられない患者さんに学ぶ
障害を持つ人々から学ぶ
初山 泰弘
1
1国立身体障害者リハビリテーションセンター
pp.963
発行日 1995年11月15日
Published Date 1995/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901655
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国立身体障害者リハビリテーションセンターは,急性期治療に続き治療訓練が必要とされる人や,社会復帰のための訓練が必要と判定された身体障害者手帳所有者らが紹介または委託され訪れる.そのような人々に対して,同一敷地内にある国立職業リハビリテーションセンターと協力し,医療から職業訓練に至る包括的なリハビリテーション・サービスを実施している.対象者は切断,脊髄損傷,脳性麻痺,糖尿病による視力障害,先天聾,頭部外傷,脳血管障害など原因も障害もさまざまである.最近は運動機能と言語の障害,腎疾患と視力障害など複合の障害を伴う人々も増えている.
このような中には,予想もしなかったような訓練効果を発揮する例もある.両大腿近位部,右前腕部を切断された30歳の女性は,病院に入院した当初はうつ状態で,肥満気味の体の移動もままならなかったが,間もなく機能訓練によってベッドから車椅子への移乗が可能となった.次に水泳訓練を受けた結果,アジア太平洋地域の国際身体障害者スポーツ大会に出場するまでに上達した.大会で同様な障害を持つ人々と出会い,本人の社会復帰への意欲が強まり,帰国後,ケースワーカー,作業療法士,義肢装具士などの支援を受け,自動車運転用補助具を用い訓練の結果,運転免許を獲得することができた.社会復帰後,支援を受けながらも自力でドライブクラブに参加しているし,数年後同様な障害の女子高校生が入所した際にはカウンセラーとしての役割も果たしてくれた.
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