JIM 23巻2号 (2013年2月発行)

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特集　かゆみ大全

今月のQuestion & Keyword Index 23巻2号 , 2013年2月 , pp.107

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より早く，より的確に内容をとらえるために，QuestionとKeywordによるIndexをご利用ください．それぞれ各論文の要点を示す質問とキーワードで構成されています．

Question

Q1　抗ヒスタミン薬はすべての痒みに効きますか？　108

Q2　皮膚所見がないのですが，痒いところにステロイド外用は行ってよいか？　113

Q3　救急で蕁麻疹を診るときの注意は？　117

Q4　疥癬の診断の決め手は？　122

Q5　頭皮に痒みとフケを生じる病態は？　126

Q6　アレルギー性結膜炎の主症状とその対処法は？　129

Q7　神経線維の表皮内侵入メカニズムは？　132

Q8　アトピー性皮膚炎治療のコツは？　135

Q9　陰部に痒みを訴える患者での診察時の注意点は？　138

Q10　黄疸による痒みの緩和が困難なときには，どうすればよいか？　141

One more JIM 23巻2号 , 2013年2月 , pp.150-151

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Q1　皮膚所見のないときの瘙痒に対する対応は？

A1　皮膚所見のないときの瘙痒に対する治療は，抗アレルギー薬，抗ヒスタミン薬の内服を検討する．確認するべき既往疾患は，腎機能，肝機能，前立腺肥大，緑内障，小児の場合にはてんかん，妊婦・授乳婦などである．

【総論】

痒みの新しい考え方生駒　晃彦 23巻2号 , 2013年2月 , pp.108-112

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　かゆ（痒）みは「掻きたいという欲求をもたらす不快な感覚」と一般的に定義される，健康な人でも多少なりとも日常的に体験している感覚である．しかし，病態に伴って生じる慢性的な痒みは非常に苦痛で，しばしば生活の質を著しく害する．また，痒みが掻破を介して皮膚に炎症を生じさせ，その炎症が痒みを起こす物質を発生させるというように，痒みと掻破は悪循環に陥りやすい．この悪循環は，アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患による痒みのみならず，肝・腎障害に伴う全身性の痒み，神経障害に起因する（神経因性の）痒みなどのあらゆるタイプの痒みで生じうる．痒みのメカニズムは多様で，治療法もメカニズムに応じて異なる．

痒みの鑑別と原因疾患赤坂　江美子 23巻2号 , 2013年2月 , pp.113-116

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Case 1

多発性硬化症に瘙痒を伴った1例

患者：43歳，女性．

既往歴：36歳から多発性硬化症で加療中．

現病歴と経過：初診の数週間前から，肩から体幹上方にかけての瘙痒が出現したため当科受診．皮膚所見はなく，瘙痒の部位は限局していた．触ると瘙痒だけではなく不快な感じを伴う．多発性硬化症以外に瘙痒を伴う基礎疾患なし．瘙痒の部分が限局しているということ，皮膚所見を伴わないため，多発性硬化症に伴う皮膚瘙痒症と診断した．患者の希望もあり，瘙痒に対しては抗アレルギー薬の併用とした．多発性硬化症悪化時のプレドニゾロン内服時には瘙痒も軽快し，プレドニゾロン終了後もしばらく瘙痒は軽快する．

【よくある痒みの対処法】

慢性蕁麻疹上出　良一 23巻2号 , 2013年2月 , pp.117-119

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ガイドラインの策定

　蕁麻疹はきわめて日常的な皮膚疾患であり，日本皮膚科学会による皮膚科診療施設の受診状況調査では，患者の約5％を占める．皮膚科以外にもプライマリ・ケア医や救急室を受診することも多い．蕁麻疹の診療ガイドラインが整備され，現在，皮膚科専門医向けには2011年に改訂された日本皮膚科学会の｢蕁麻疹診療ガイドライン｣があり，アレルギー専門医向けには2010年に日本アレルギー学会が｢アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2010｣を策定している．また，一般臨床医の理解を助けるために｢アレルギー診療ガイドブック｣が日本アレルギー学会より発刊され，その中の蕁麻疹/血管性浮腫の項でもガイドラインを踏まえた解説がなされている．

痒疹，湿疹，疥癬小宮根　真弓 23巻2号 , 2013年2月 , pp.122-125

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　痒（かゆ）みを生じる皮膚疾患には，さまざまな炎症性皮膚疾患が含まれる．痒疹，湿疹は，湿疹皮膚炎群に属する代表的な疾患であり，痒疹はときに疥癬との鑑別が重要となる．皮膚瘙痒症は，皮疹がなく，痒みのみを感じる疾患であり，さまざまな基礎疾患を有する場合が多い．

頭皮の痒みとフケ菊地　克子 23巻2号 , 2013年2月 , pp.126-128

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　頭皮の痒みはよく遭遇する症状である．なんら皮膚疾患をもたない健常人でも，シャンプーができないなど，頭皮の清潔を保てない状況になれば，たちまち頭皮の痒みとフケに悩まされる．この場合は脂漏性皮膚炎と考えられる．フケは，頭皮から生じる落屑であり，頭皮に何らかの鱗屑を生じる皮膚症状を呈しているために生じるが（J1），炎症性変化が肉眼的には明らかでないこともある．脂漏性皮膚炎のほか，いわゆるかぶれである接触皮膚炎，頭皮に生じる尋常性乾癬，頭部白癬などでも落屑や痒みを生じる可能性があるため，頭皮に生じている皮膚所見をよく観察する必要がある．

眼の痒み高村　悦子 23巻2号 , 2013年2月 , pp.129-131

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アレルギー性結膜炎の主症状―眼の痒み

　スギ花粉による季節性アレルギー性結膜炎（J1），すなわち花粉症の眼症状としては，眼瘙痒感（目の痒み），充血，流涙，眼脂，異物感，眼痛，羞明などがあげられるが，なかでも患者自身が最もつらいと感じているものは，眼瘙痒感である．この症状は，I型アレルギー反応の即時相によって引き起こされる．すなわち，アレルゲンによる抗原抗体反応の結果，マスト細胞内に存在するケミカルメディエーターの1つであるヒスタミンが脱顆粒により結膜局所に遊離し，結膜の三叉神経のC線維の自由終末に存在するヒスタミンH₁レセプターに結合し，眼の痒みが生じる．

【困る痒みの対処法】

全身性皮膚瘙痒症高森　建二 23巻2号 , 2013年2月 , pp.132-134

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　全身性皮膚瘙痒症は，腎不全，肝障害，内臓悪性腫瘍など種々の基礎疾患を背景に発症する場合や内服している薬剤が原因で発症する場合などがあり，最も頻度が高いのがドライスキンが原因で生じる皮膚瘙痒症である．中高年齢者に多く認められ，瘙痒が強く，そのためQOLが著しく障害されることから痒（かゆ）み対策は重要である．

アトピー性皮膚炎尾本　陽一 , 水谷　仁 23巻2号 , 2013年2月 , pp.135-137

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　アトピー性皮膚炎（atopic dermatitis：AD）は，角層のバリア異常や乾燥，特異的なアレルギー反応を伴い，慢性再発性の瘙痒を伴う皮膚疾患である．抗原特異的IgEの上昇を認める外因性（獲得型）ADが主であるが，近年，抗原特異的IgEを伴わない内因性（自然型）ADが20％前後で存在することがわかってきた（JI）．ADの発症に表皮由来のサイトカインの関与が明らかになり，皮膚乾燥を防ぎ，アレルゲンを避けるだけでは皮疹は改善に乏しく，痒みを抑え，掻破による皮膚の破壊を防ぐことの重要性が再確認された．1999年免疫抑制薬タクロリムスの外用薬であるプロトピック軟膏^Ⓡが発売となり，小児への適用も拡大されたことや，2008年難治性成人ADに対しシクロスポリンの内服療法が保険適用を受けたことで，ADに対する治療の選択肢は広がりを見せている．ADの評価，治療について痒みを中心に解説する．

陰部の痒み池田　政身 23巻2号 , 2013年2月 , pp.138-140

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　陰部に痒みを訴える疾患には感染性から非感染性まで様々のものがある^1）．ここではこれらの疾患のうち主なものについて述べる．

緩和ケア領域における痒み山本　亮 23巻2号 , 2013年2月 , pp.141-143

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がん緩和ケア領域の痒みの対処法

　がん緩和ケア領域において痒みが問題になるケースは27％と報告されており，それほど頻度の高い症状ではないが，痒みは非常に不快な症状であり，症状緩和に難渋することの多い症状である．

　痒みのある患者の皮膚は乾燥していることが多い．皮膚の乾燥を防ぐために，適切なケアを行うことが重要である．すなわち，入浴・清拭後や就寝前に皮膚に油性成分の軟膏を塗布し，皮膚の乾燥を防ぐのである．ワセリンは皮膚の保護には有効であるが，単独で塗布するとベタベタと不快感が強いこともあり，尿素軟膏と混合して使用する（J1）と，べたつきが抑えられてよいという患者さんが多い．

【トピックス】

痒みと一般用医薬品（OTC薬）について渡辺　淳志 23巻2号 , 2013年2月 , pp.144-145

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　OTC（over the counter）薬による治療はセルフメディケーションであり，薬剤師または登録販売者（OTC薬のなかで低リスクと判断されたものを販売できる資格者）に相談したうえで行われます．

　炎症がひどい場合や数日の治療で改善がみられない場合，セルフメディケーションに不安がある場合は受診を勧めています．しかし，患者が医療機関の診察を受けず，OTC薬のみで治療するケースは少なくありません．そこで，本稿ではOTC薬の外用薬について紹介します．

痒みをやわらげる，掻かないためのアドバイス大久保　ゆかり 23巻2号 , 2013年2月 , pp.146-147

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　痒み治療の基本は，1）皮膚バリア機能の低下に対するスキンケア，2）環境整備と悪化因子の除去などのセルフケア，3）炎症に対する薬物療法，の3つである．

軟膏の塗り方伊藤　隆 23巻2号 , 2013年2月 , pp.148-149

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　皮膚疾患の7割は，皮膚科専門医以外の医師によって診療されているとさえいわれることから，実地医家にとってその診療科を問わず，皮膚病の治療に携わる機会は少なくないと思われる．皮膚疾患の治療に際して，外用療法は最も基本的で重要な手段であり，巧拙は治療効果にも大きく影響する．

Editorial

かゆみも含めた多様な問題に対応できる「総合診療医」を目指して伊藤　澄信 23巻2号 , 2013年2月 , pp.99

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　「かゆみは痛みの軽いもの」と習った世代には知識の大改訂が必要な時代になった．かゆみ特異的神経やかゆみに関する脳部位が特定され，透析患者のかゆみ治療薬としてκオピオイド受容体作動薬であるナラフラフィン塩酸塩（レミッチカプセル^Ⓡ）が発売された．10年前のかゆみの知識はもはや通用しない．

　日常診療でよく遭遇するかゆみは高齢者の皮脂欠乏性皮膚炎である．空気が乾燥する今の季節に多発する下腿を中心にした皮膚の乾燥によるかゆみに対して尿素入りクリームを乱発している．冬の空気の乾燥は皮膚角層のバリアも乾燥させ，皮膚表面に白い粉をふくような状態をつくりやすい．高齢者は角層細胞間脂質のセラミド，脂肪酸，コレステロールが減少し，さらに角層の層数が増加し，角層より下の生きた表皮から角層の表面までの水分の供給が少なくなるといわれる．

What's your diagnosis?[122]

胃外と思ったが意外に胃内にいました垣田　真以子 , 小田垣　孝雄 , 桂　敏明 , 小山　弘 23巻2号 , 2013年2月 , pp.103-105

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病歴

患者：40代女性．主訴：両下腿浮腫．

現病歴：X-7日頃から，とくに誘因なく右下腿優位に浮腫が出現し，徐々に増悪した．手指にも浮腫を自覚するようになり，体重は約3kg増加した．両下腿浮腫の精査目的にX日に当科受診となった．

既往歴：急性虫垂炎，夏型過敏性肺臓炎，腺腫様甲状腺腫．家族歴：特記事項なし．生活歴：飲酒は機会飲酒，喫煙は30本/日×20年間，4年前から禁煙．

JIMで語ろう

「漢方」は難しいか―一般医のための漢方入門寺澤　捷年 , 津田　篤太郎 23巻2号 , 2013年2月 , pp.152-160

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プライマリ・ケアの現場で，継続して患者の健康問題に対応する一般医にとって，「漢方医学」は常に気になる存在だ．しかし，漢方を学び診療に生かしてみたいと関心を抱きながらも，実際には「漢方は難しい」と考え尻込みしている医師も多い．

本誌では，漢方診療の第一人者である寺澤捷年氏と，病院総合医として活躍しつつ漢方にも造詣が深い津田篤太郎氏による対談を企画し，一般医向けに，わかりやすく日常診療における「漢方」の有用性，魅力，そしてその学び方についてお話ししていただいた．

異端とグローバルスタンダード　アメリカ医療はどこへ行くのか？・2

あえて共和党の医療政策について考える森井　大一 23巻2号 , 2013年2月 , pp.161-163

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「対案」はどこにあるのか

　かくしてオバマ大統領のAffordable Care Act（ACA）^＊1は国民の信任を得た形となった．さすがの共和党も，今回ばかりは「この話はもう終わった」とこれ以上の抵抗をしないことを宣言した．ここであえて，「共和党の対案とはなんだったのか」について考えてみたい．信任の意味を考えるにあたって，対案を検討せずに済ますことはできないからである．

　とはいえ，「そもそも対案なるものがあったのか」というところからこの問いを始めねばならない．なぜなら，多くのアメリカ人にとって，問題は「ACAが破棄されるかどうか」に集約されていたからだ．

メンタルクリニック便り・8

いまどきの「うつ」の背景市村　公一 23巻2号 , 2013年2月 , pp.164

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　前回はBPD（Borderline Personality Disorder，境界性パーソナリティ障害）と最近の「うつ」の女性に共通する「根っこ」の話を，私の作った冊子から引用させていただきました．もうすこし引用を続けさせていただきます．

みるトレ

Case 26 岩崎　靖 23巻2号 , 2013年2月 , pp.165-166

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Case 26

患者：72歳の男性．高血圧で内服治療中．1年ほど前から歩きにくいことを自覚し，半年前からしばしば転倒するようになった．物忘れや動作緩慢が目立つようになり，尿失禁も出現してきたため受診した．

現病歴：意識は清明で，構音障害なし．言語理解は良好で診察には協力的であったが，歩行や動作，質問に対する反応は全体に緩慢であった．対光反射は正常で，眼球運動に制限はなかった．筋力低下や感覚障害は認めなかった．腱反射は正常でBabinski徴候はなかった．歩行はやや小刻みな開脚歩行であった．筋強剛，静止時振戦はみられなかった．項部硬直や，髄膜刺激徴候は認めなかった．一般内科所見に異常はなかった．

検査所見：血液生化学検査に異常はなく，甲状腺機能は正常で，血清梅毒反応検査も陰性であった．初診時の頭部MRI像（図1a，b）を示す．

Case 27 鈴木　康倫 23巻2号 , 2013年2月 , pp.167-168

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Case 27

患者：71歳男性．

現病歴：3年前より健診で血圧高値，脂質異常を指摘されており，半年前に初めて医療機関を受診した．二次性高血圧を除外された後，降圧薬とスタチンが開始された．また，頸部血管雑音が聴取され，精査によって右内頸動脈狭窄と診断された．8日前に脳外科で右内頸動脈ステント挿入術が施行された．術後，徐々に悪化する腎機能についてコンサルテーションを受けた．脱水を示唆する病歴はない．入院後，新たに追加された薬剤はない．

身体所見：身長164cm，体重67kg，血圧132/55mmHg，脈拍81回/分・整，体温36.1℃．両側頸部に血管雑音を聴取する．腹部は平坦，軟で正中に血管雑音を聴取する．右1，4趾，左1趾足底，左4, 5趾外側に紫紅色の皮疹（図1）と両足背に網状皮斑とを認める．四肢に感覚低下は認めない．

血液検査：（術後1日目）WBC 5,950/μl（Eosino 4.4％），Cr 1.13mg/dl；（術後4日目）WBC 5,560/μl（Eosino 6.3％），Cr 1.25mg/dl；（術後8日目）WBC 5,120/μl（Eosino 9.2％），Hb 12.1g/dl，Plt 23.3×10⁴/μl，AST 11IU/l，ALT 12IU/l，LDH 185IU/l，BUN 25mg/dl，Cr 1.39mg/dl，Na 140mEq/l，K 4.1mEq/l，Cl 108mEq/l，CRP 0.1mg/dl．尿検査：蛋白（-），潜血（-），WBC（-），硝子円柱1＋，FE_Na 1.1％，FE_UN 40.6％，β₂ MG 155ng/gCr（＜600），NAG 9.4IU/gCr（＜10）．

Case 28 笠原　敬 23巻2号 , 2013年2月 , pp.169-171

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Case 28

患者：46歳，男性．

主訴：発熱，背部痛．

病歴：2型糖尿病に対しインスリン療法中であったがコントロール不良であった．入院10日前頃から左背部の腫脹と疼痛，38℃以上の発熱が出現し，8日前に他院に入院した．イミペネム・シラスタチンの投与が行われたが，左前頸部，左下腿部にも発赤，腫脹が生じ，発熱も持続するため当院に転院となった．

既往歴：糖尿病（上記），白内障．

身体所見：血圧126/82mmHg，脈拍66回/分・整，体温35.7℃，呼吸数15回/分，意識清明．齲歯多数．呼吸音・心音に異常なし．左胸鎖乳突筋に沿って7cm×4cm，背部左側に13cm×8cmの結節（図1），左下腿外側に6cm×6cmの緊満感・波動を伴う発赤・腫脹部位あり（図2）．

検査：末血：WBC 13,900/μl（桿状好中球19%，分葉好中球75%），Hb 11.0g/dl，Plt 38.4万/μl．

生化学：BUN 26mg/dl，Cr 1.22mg/dl, CRP 11.3mg/dl，Glu 326mg/dl，HbA1c 12.5%．

米国ホスピタリストの「無知の知」・8

ホームズになりきれなかった私石山　貴章 23巻2号 , 2013年2月 , pp.172-173

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　突然だが，診断学の真髄，それはDetective Work（探偵業，捜査）であろう．一応訳語を入れたが，どうにもいい日本語がない．ここではそのまま，Detective Workとして用いたい．いい日本語訳がない場合，使えるのはイメージだ．ここでは，名探偵シャーロック・ホームズを思い描いていただければいい（あるいは，名探偵コナンでももちろんよい）．

　今回は，「ホームズになりきれなかった私」，というお話である．タイトルからして，残念な匂いがプンプンする．まあ改めて述べるが，失敗談の暴露，というのがこの連載のコンセプトだ．企画当初の段階から，私にとっては残念な連載なのである．

JIM Lecture　外来で始める睡眠医療・2

睡眠治療の落とし穴―不眠症に対する投薬法栗山　真一 , 中山　明峰 23巻2号 , 2013年2月 , pp.174-177

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◆太古から人間は不眠に悩まされている．近年，睡眠医療が大変盛んになり，テレビ番組などで頻繁に取り上げられるようになった．そのためか，一般診療でも，配偶者のいびきがうるさいがどうしたらいいか，睡眠薬を使っているがそれでも寝られずどうしたらいいか，などの睡眠に関する相談を受けることもあるかと思う．一方，業者に勧められて睡眠時無呼吸症候群を疑う患者に対し簡易型検査を行い，CPAP（持続的陽圧加圧装置）治療を行っている医師も大勢いると思われる．ところが睡眠医療に精通していないため，その管理や対応に苦慮しているという声をよく耳にする．

　今回，本誌にて計6回にわたり，睡眠医療について基本項目よりわかりやすく解説することとなった．明日からの診療に役立てていただければ幸いである．

レジデントCase Conference

妊娠高血圧症候群にて緊急帝王切開後も持続する高血圧にて紹介となった21歳女性仲里　信彦 23巻2号 , 2013年2月 , pp.178-182

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◆妊娠中後期に発症する高血圧は，いわゆる妊娠高血圧症候群が多い．しかし，他の合併症や二次性の原因が隠れている場合もあり注意を要する．

シネマ解題　映画は楽しい考える糧[68]

「ブタがいた教室」浅井　篤 23巻2号 , 2013年2月 , pp.183

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この作品を観ずして生命倫理を語るなかれ

　興味あるテーマで気になっていたのですが，劇場に足を運んだりDVDを購入したりする気にはなりませんでした．テーマがテーマですから二の足を踏んでいたわけです．ところがある日，高橋昌一郎氏著「哲学ディベート〈倫理〉を〈論理〉する」で「命の授業」を取り上げた仮想ディベート^1）をみつけ，ぜひ鑑賞し取り上げなくてはならないと決心した次第です．はじめにテーマがあり作品をピン・ポイントで選択したのは初めてのパターンです．

　小学校の新任星先生は，担任クラスの6年生に対して「命の授業」を行うことを決めました．子豚を飼い大きくなったら皆で食べるというプログラムです．生徒に毎日の食事で命を「いただいている」ことを実感させることが目的でした．6年2組の生徒ら26人は子豚にPちゃんと名前をつけ可愛がり，愛情をもって賢明に育てます．いろいろなトラブルも起きました．そして卒業が近づき，子豚をどうするのかがクラスを二分する大問題になります．Pちゃんを食べるか食べないか．生徒らは悩み号泣し掴みあい収拾が付かなくなります．最終的な多数決では，食肉センターに送る13票，3年生クラスに飼育を引き継いでもらう13票．最終判断は担任の星先生の最後の一票に委ねられるのでした．

New Books

『ティアニー先生のベスト・パール2』―ローレンス・ティアニー（著）・松村正巳（訳）清田　雅智 23巻2号 , 2013年2月 , pp.106

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　物事を単純化することは，しばしば行動を誤らせる原因になる．現実世界では，単純化されたマニュアル的な対応だけでは通用しないことがしばしば起こる．しかし細かいことにこだわらなければ，おおむねマニュアルは使い勝手がよいことが多い．

　クリニカル・パールというのは，米国では昔から行われていた教育手段だという．日本でも，経験のある医師がしばしば臨床の“コツ”を伝えるという教育手段はあった．それは経験則として語られていたと思う．個人的な見解だが，日本で聞くその手の“コツ”というのは，しばしば誤用されて伝わっているものだったり，独善的な知識の場合もあると感じていた．それはその経験則が，何から導き出されているのか十分検証することがなかったからだと思っていた．私はそういう“コツ”を聞くと最初は疑いの目をもち，書物や文献によって検証して納得したものしか信用していなかった．

『誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた―重篤な疾患を見極める！』―岸田直樹（著）大曲　貴夫 23巻2号 , 2013年2月 , pp.147

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「風邪」の診かたは，医師にとっての一般教養

　研修医たちと接していると感じるのは，彼らが急性上気道炎（以下，本書に倣い「風邪」と表記する）の診かたを知らないということである．市中肺炎や腎盂腎炎，髄膜炎の診療は知っているのに，である．何とも不思議な状況であるが，無理もない．可哀想なことに，医学教育の流れのなかで，風邪を系統的に教わることはまずないのだ．こんなにありふれた疾患であるにもかかわらず，だ．

　おそらく多くの医師は，風邪自体を「そんなことは当たり前」として，そもそも医療上の問題として捉えていないと思われる．いわば医療化されることのない，体調不良の一種として捉えていることがほとんどである．しかし当事者である患者が風邪による症状に対して，民間療法では対処不能として医療を求めはじめた時，結果として施される診療の中身は，顔をしかめてしまうものが多い．

JIM Library 私の読んだ本

木村琢磨（編）もう困らない！高齢者診療でよく出合う問題とその対応―検査や治療はどこまで必要？患者・家族に満足してもらうには？―外来・病棟・在宅・施設ですぐに役立つ実践ポイント吉村　学 23巻2号 , 2013年2月 , pp.121

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　本書はとてもユニークで実践的な本である．高齢者診療に関わる「場」は外来，病棟，救急室，在宅，施設である．医師の修練の場の中心は今もなお病棟と外来が主だ．しかしこの執筆陣の医師らは全ての「場」をカバーしている点ですごいし，同じ医師がその「場」を高齢者の患者さんと共に動いて診療しているからこそ見えてくる「風景」をしっかり描いている．現代医療の最大の弱点であるFragmentation（細分化）の弊害を乗り越える1つのカギはこういうタイプの医師の登場であると思う．編者の木村先生をリーダーとする多職種の医療チームがこれまで積み重ねた「高齢者の臨床に伴うさまざまな論点に関する勉強会」で絞り出してきた臨床的な英知Clinical wisdomをこの本により享受できるのはとてもありがたい．

掲示板

第8回　若手医師のための家庭医療学冬期セミナー 23巻2号 , 2013年2月 , pp.143

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今回は，家庭医療学の枠を超えて，病院総合医，プライマリ・ケア医など多くの皆さんに参加していただけるようさまざまなワークショップと特別企画を準備しております．

皆さんにご参加いただけますと幸いです．プログラム等，詳しくはホームページをご確認ください！

テーマ　“彩（いろどり）”―家庭医，病院総合医，プライマリ・ケア医の各世代の医師が交わり，共に彩るセミナー

日時　2013年3月2日（土）13：00～18：30　3日（日）8：45～12：30

会場　東京大学本郷キャンパス（東京都文京区）

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バックナンバー 23巻2号 , 2013年2月 , pp.184

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寄稿ガイド 23巻2号 , 2013年2月 , pp.185

PDF(239KB)

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次号予告 23巻2号 , 2013年2月 , pp.186

PDF(627KB)

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基本情報

JIM
23巻2号
(2013年2月発行)

電子版ISSN：1882-1197 印刷版ISSN：0917-138X 医学書院

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第3位摂食障害における唾液腺腫脹木村琢磨,青木誠,高木洲一郎 JIM 10巻 10号 pp. 900 (2000年10月15日) 医学書院
第4位左胸の痛みとパチパチという胸部異常音を主訴に来院した若年男性鈴木彩,米波浩二,生坂政臣,亀谷学 JIM 10巻 7号 pp. 597,676 (2000年7月15日) 医学書院
第5位「不明熱」で相談される困った入院症例佐藤泰吾 JIM 23巻 6号 pp. 482-485 (2013年6月15日) 医学書院
第6位メンズ・ヘルスの意味藤沼康樹 JIM 18巻 2号 pp. 101 (2008年2月15日) 医学書院
第7位血便の診かた加藤英治 JIM 18巻 10号 pp. 874-879 (2008年10月15日) 医学書院
第8位気管支喘息・クループ安炳文 JIM 18巻 10号 pp. 832-837 (2008年10月15日) 医学書院
第9位肩こりの解剖と病態矢吹省司 JIM 19巻 4号 pp. 258-260 (2009年4月15日) 医学書院
第10位発熱＋頸部痛型岸田直樹 JIM 22巻 4号 pp. 316-324 (2012年4月15日) 医学書院