木村琢磨（編）もう困らない！高齢者診療でよく出合う問題とその対応―検査や治療はどこまで必要？患者・家族に満足してもらうには？―外来・病棟・在宅・施設ですぐに役立つ実践ポイント

　本書はとてもユニークで実践的な本である．高齢者診療に関わる「場」は外来，病棟，救急室，在宅，施設である．医師の修練の場の中心は今もなお病棟と外来が主だ．しかしこの執筆陣の医師らは全ての「場」をカバーしている点ですごいし，同じ医師がその「場」を高齢者の患者さんと共に動いて診療しているからこそ見えてくる「風景」をしっかり描いている．現代医療の最大の弱点であるFragmentation（細分化）の弊害を乗り越える1つのカギはこういうタイプの医師の登場であると思う．編者の木村先生をリーダーとする多職種の医療チームがこれまで積み重ねた「高齢者の臨床に伴うさまざまな論点に関する勉強会」で絞り出してきた臨床的な英知Clinical wisdomをこの本により享受できるのはとてもありがたい．