特集 プライマリ・ケアにおける精神疾患 generalistと精神科医のコラボレーション
【プライマリ・ケアでの精神疾患診療のポイント】
②不安障害の診療
宮岡 等
1
1北里大学医学部精神科
キーワード:
不安障害
,
抗不安薬
,
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
,
精神科
Keyword:
不安障害
,
抗不安薬
,
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
,
精神科
pp.466-470
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100358
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Question & Answer
Q:不安障害の治療で留意することは?
A:①不安障害の症状以外の精神症状や問題行動の合併に注意して診断する.②抗不安薬は副作用に注意しながら用いる.③適切な専門家を選んで紹介する.
1980年,アメリカ精神医学会からDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神障害の診断・統計マニュアル)第3版が出版され,DSM-Ⅲとして日本にも広まった.DSM-Ⅲは神経症という用語を排し,不安障害,身体表現性障害などの診断名を設けた.その後,DSM-Ⅲ,Ⅲ-R,Ⅳ,Ⅳ-TRと続く流れは従来の神経症診断を大きく変え,最近,精神科医になった者の中では不安神経症よりもパニック障害や全般性不安障害が,強迫神経症よりも強迫性障害が,抑うつ神経症よりも気分変調性障害のほうが耳慣れた言葉になってきた.
このような状況で,不安神経症が不安障害になって何が変わったのであろうか.診断においては,詳細に生活史を評価することが減り,横断面の症状のみから診断を付ける傾向が強まった.治療では,長期的なカウンセリングや精神療法の有効性を示すエビデンスはないとされ,薬物療法の意義が過度に強調されることになった.薬を変えるしか能のない精神科医を増やしたという皮肉が的を射ている面がある.
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