講座 IT機器・ICTとリハビリテーション・第1回【新連載】
スマート化する社会における医療・ヘルスケアイノベーション—「国民の健康寿命が延伸する社会」の実現に向けて
東 博暢
1
Hironobu Azuma
1
1株式会社日本総合研究所 戦略コンサルティング部 融合戦略クラスター
pp.506-511
発行日 2015年6月15日
Published Date 2015/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200241
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はじめに
わが国が抱える最大の課題の一つとして急速に進む少子高齢化が挙げられる.総人口は,2030年には11,522万人(高齢化率31.8%),2050年には9,515万人(高齢化率39.6%)と推計1)されており,世界に類をみないピッチで少子高齢化が進んでいる.
国民医療費は,2012年度(平成24年度)には29兆円を超え,生産人口の減少も加わり,財政面でも逼迫した状況を迎えている.わが国の人口動態中,最大集団である団塊の世代〔1947〜1949年(昭和22〜24年)までの3年間に出生した世代〕の全員が要介護認定率の上昇が始まる75歳以上,つまり後期高齢者となる2025年(いわゆる「医療の2025年問題」)には,国民医療費は52.3兆円に上ると試算2)されている.今後さらに医療費が財政を圧迫するとともに,医療介護等従事者の人材確保の面でも深刻な状況を迎えることが予想される.
また,地域単位でみると人口の地域偏在化,低密度化がいっそう顕著となり,無医村,無医地区が増加する等,ミクロ面でも課題が山積し,わが国の医療,介護,福祉,保健,ヘルスケア分野(以下,まとめて医療分野と記す)は,いまだかつてない難局を迎えているのである.
深刻化する超高齢社会において,このような未曾有の難局に立ち向かい,課題解決を図るためにも,医療分野での情報通信(ICT)の利活用は,医療従事者の負荷軽減,患者に対する医療の質の向上を鑑みると必要不可欠である.
本稿では,「スマート化する社会における医療・ヘルスケアイノベーション」と題し,医療分野にICTがもたらす変化を概観する.
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