理学療法ジャーナル 50巻8号 (2016年8月)

特集 社会の要請に応える理学療法教育

EOI(essences of the issue)
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 本誌では,この10年間に教育に関する特集を8本企画してきた.本特集では,社会の変化を踏まえた理学療法学教育に対する要請は何であるのか,ということを基軸として教育を取り巻く社会の動向やニーズ,特色ある理学療法教育について整理した.

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専門職が社会で果たすべき役割

 専門職(profession)とは,継続的な学びと公益的な実践に誓い(profess)を立てた者で,神学者,法律家,医療者などが該当する.専門職は,卓越した知識と技能を有し,高い倫理観のもとで,たとえ解決が困難な課題であっても真摯に対応しようとする態度を有し,広く社会に貢献する取り組みが求められる.

 専門職は社会と3重の契約をしていると言われる.1つ目にはよき市民であることで,2つ目には一人の専門職として個別の対象者へ十分な帰結と満足感を提供することで,3つ目には専門職集団として社会の要請に応えることである.集団には,病院・施設,教育研究機関,学会,協会などが該当する.専門職は社会に対してその要請に応える革新と発信を続け,社会は専門職に対して一般市民とは異なる行為を許容(医師であれば人体に侵襲的な処置を加えること)するなど適正に処遇・認知する.これらのことから,専門職には,① 高い自律性と倫理観,② 社会のニーズを察して要請に応える態度,③ 社会が必要とする新たな情報や解決方法の創造と実践,の3つが重要な要素となる1)

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はじめに

 一般にわが国で「高等教育機関」といえば,大学や短期大学,高等専門学校を指すケースが多いが,広義の意味では,専門学校(専修学校専門課程)を含めて使っている.周知のように義務教育後の高等学校への進学率は98%を超えており,2015年度の大学進学率(過年度卒業者含む)は51.5%(平成27年度学校基本調査)1)で,今日では高等学校卒業者の半数が4年制大学に進学する時代になっている.

 戦前は50校に満たず,1949年の新制大学発足当時には200校程度だった大学数も,現在は700校を超えている.2015年度の「全国大学一覧」では,国立は86校,公立も86校,私立が603校,計775校となっている.

 特に1991年の大学設置基準の大綱化(設置基準の緩和策)以降,1990年代から,私立大学を中心に大学数が急増していくことになるが,逆に短期大学への進学率は1990年代半ばを境に低下し,女子の4年制大学志向の高まりとともに,多くの短期大学が4年制大学(または学部や学科)への改組転換を図って,短期大学数は減少していく.ちょうど医療系の分野でいえば,それまで国立大学に併設されていた医療技術短期大学部が次々と医学部の保健学科などへと改組されていった時期と重なっている.

 1990年代は,第2次ベビーブーム後の急速な18歳人口の減少期を想定し,大学設置については,国は原則抑制する対応策をとったが,実際は大学の大幅な拡張期であった.前述した短期大学からの4年制大学化が相次ぐとともに,地方自治体が運営する公立大学も次々と設置されていった.新設の大学設置については,地域での配置バランスが重視され,公立大学以外にも,校地の無償提供など地方自治体との連携や協力で地方にも新しい私立大学や既存の大学の新学部などが設置された.いわゆる地方での公私協力方式による大学設置である.学部学科の分野としては,国の政策と絡んで,原則抑制の例外の対象分野となった社会福祉系や看護・医療系の人材養成を目的とした学部学科,情報系や国際系の学部学科の設置が目立っている.

 ちなみに1990年度の大学数は508校(国立96,公立39,私立372,放送大学1)だったものが,2000年度では大学数が651校へ増加し,2010年には758校へと増加している.増加の大半が私立大学である.しかし,一方の18歳人口は1992年の約205万人をピークに急減し,2000年は151万人,2010年は122万人と減少していき,2016年は119万人となっている.

 そして今日,地方の私立大学を中心に定員割れが深刻化し,国立大学,公立大学も含めた大学の統廃合の必要性が叫ばれるようになっている.一方で,この大学の量的拡張は,入学希望者の全入時代の到来が喧伝され,入試の多様化とともに大学入学者の基礎学力の問題が顕在化し,入学後の学力の質の維持,向上に向けた取り組みが,キャリア教育のあり方とともに各大学の大きな課題になっている.

大学教育の現状と展望 大西 秀明
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はじめに

1.大学教育

 大学教育では「教育基本法」が根幹にある.教育基本法の第7条において,「大学は,学術の中心として,高い教養と専門的能力を培うとともに,深く真理を探究して新たな知見を創造し,これらの成果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与するものとする」と定められている.また,学校教育法第83条においては,「大学は,学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を教授研究し,知的,道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」,「大学は,その目的を実現するための教育研究を行い,その成果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与するものとする」と定められている.

2.理学療法学教育

 理学療法士を養成するための教育基準は,「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」によって定められている.この規則では専任教員数や教員資格,教育環境(実習・演習室の広さ,設備,備品,臨床実習施設など),教育内容(カリキュラムと領域ごとの単位数)などが示されている.専任の理学療法士教員数は一学年の学生定員数に応じて定められており,一学年の学生数が40名以下の場合は6名以上,80名の場合は9名以上,120名の場合は12名以上となっている.また,理学療法士国家試験を受験するための就業年限は3年以上であり,教育内容として,基礎分野14単位,専門基礎分野26単位,専門分野35単位,臨床実習18単位の最低93単位が必要と定められている.

 2015年4月1日から理学療法士養成施設の指定・監督権限が厚生労働大臣から都道府県知事に移譲され,「理学療法士作業療法士養成施設指導要領について(平成11年3月31日健政発第379号)」が廃止され,「理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインについて(平成27年3月31日,医政発0331第28号)」が制定されている.ここでは,専任教員の1週間あたりの標準授業時間数を10時間とすることや,各科目の単位算定方法,養成施設として必要な設備や備品の詳細が示されている.

3.理学療法学教育の変遷

 理学療法学教育の変遷をみると,1963年に日本で初めて理学療法士養成施設(国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院)が開校された後,1979年に文部省管轄である金沢大学に3年制の短期大学部(医療技術短期大学部理学療法学科)が開設され,1992年には4年制大学として初めて広島大学に理学療法士養成コース(医学部保健学科)が開設されている.このような背景のなか,理学療法士養成施設としての専門学校,短期大学,大学が数多く設置され,1999年頃から急速に理学療法士養成施設が増加し,1999年に4,000名弱だった入学定員数は2008年には約13,000名に達している.その後もさらに少しずつ入学定員が増え,2016年5月時点で13,635名になっている1)

4.本稿の目的

 理学療法学の教育体系が3年制または4年制の専門学校,3年制の短期大学,4年制の大学と多岐にわたる状況が続くなか,理学療法学に関連した大学院も増え,教育内容も多岐にわたるようになってきた.そのようななか,2014年9月1日付で,全国大学理学療法学教育学会は日本理学療法士協会から「大学院における理学療法教育の課題と将来展望」にかかわる調査業務の委託を受け,2015年3月末日に答申書が提出されている2).本稿では,この答申書(全数調査)の概要を紹介するとともに,大学における理学療法学教育の現状と課題について考えてみたい.

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内山 本誌ではこれまで,臨床実習のあり方や卒前・卒後教育という,いわば組織のなかで理学療法士をどのように育てるかを中心に議論してきました.しかし言うまでもなく,理学療法は国民のニーズがあって初めて成り立つものです.社会の要請ということを考えた場合,この専門職を志そうとする本人と父兄が1つ目の大きな社会の要請者であり,理学療法サービスを受ける患者や利用者,あるいはその家族が2つ目の要請者と言えます.3つ目には病院経営者や他職種の方々.さらには理学療法機器メーカー,医書出版社,人材育成に携わる一般企業など大きく4つのグループに分けられます.

 本日はこれらを踏まえ,社会が求める理学療法士,理学療法学教育について広く話を進めていきたいと思います.まず,今私たちに何が求められているのか,お一人ずつお話しください.

特色ある理学療法教育

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岩手リハビリテーション学院の特徴

1.岩手の風土に培われた養成校

 岩手リハビリテーション学院(以下,本学)は,東北では,弘前大学医療短期大学(2000年大学に移行),国立仙台病院附属リハビリテーション学院(2004年改称,2008年閉校)とともに1980年に開学し,37年目を迎える(表).開学以来35年間岩手県に唯一の理学療法士養成校として,岩手県の理学療法士需要を支え,岩手県理学療法士会の会員数の約6割が本学出身者であることからも,岩手県に根強い養成校であると自負している.

 近年全国的な養成校増加に伴って,本学入学生は岩手県出身者が91.3%を占め,卒業時の岩手県内就職内定率においても73.5%と,出身・就職ともに「岩手」という学生が増加を示している.このような現状を踏まえて理学療法学科(以下,本学科)の臨床実習では,学生ができるだけ一度は地元地域以外の施設で行うように取り計らっている.生まれ育った環境と異なる地域で生活し臨床実習の経験をすることは,客観的に自身の環境を見直す機会となり,学生が社会人として「自立」する一助になると考えている.

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特色のある科目の紹介(PTスキル)(表)

 「PTスキル」という授業は,1〜3年生の学年の壁を越えた縦のつながりに基づく演習活動である(1〜3年必修科目,通年).この演習による行動目標は,課題遂行(グループ討議・活動)を通じて,積極的に行動し,アクティブラーニングの学習態度を身につけることである.また,医療従事者として必要な創造性,共感性,洞察力,判断力,適応力などの資質を養うことである.また,繰り返しとなるが同学年の交流にとどまらず,1〜3年生の縦の交流も積極的に行い,理学療法士として必要なコミュニケーション能力を高めることが最大の目的である.

 演習活動は各学年の学生が所属しているアドバイザー(1,2名の教員が各学年6〜8名を受け持ち,学習支援や実習訪問や研究指導を行う)グループを基本として行う.各学年の学習目標は,1年生が理学療法の概要を理解すること,2年生は理学療法の臨床場面で実施する検査の知識・技術の獲得をし,評価・治療の概要を理解すること,そして3年生は,障害の評価・治療を行うための知識・技術・思考能力の獲得である.毎回の授業では,実施した内容や反省点,次週への目標を記録する「シャトルカード」を用いてアドバイザーとのコミュニケーションを図っている.

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視覚に障害を持つ医療系学生のための教育高度化改善事業(表)

 筑波技術大学(以下,本学)は視覚と聴覚に障害をもつ学生のみが学ぶわが国唯一の国立大学法人である.視覚障害者のみ学ぶ保健科学部には保健学科理学療法学専攻と鍼灸学専攻および情報システム学科がある.これらの学科専攻は視覚に障害をもつ学生の職業自立を考慮して設けられている.教育の特徴として,アカデミック・アドバイザー教員を配置し,学習支援体制を充実するとともに,少人数のクラス編成を行い,視覚資料等の工夫により学生の理解増進に努めている.

 本学は視覚障害者を対象とする高等教育機関として,技術革新や情報化,国際化が進む社会にあって,それらの変化に柔軟に対応できる専門的医療技術者および情報技術者の養成をめざすとともに,健康や福祉に貢献できる専門家を育成している.保健学科では,視覚障害による情報授受障害を克服するため,補償能力を高め,豊かな人間性を養い,さまざまな状況に対処できる理学療法士を養成している.

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本学における教育の特徴(表)

1.Active learningの推進

 医療専門職は,日々進歩する医科学に対応するため,養成機関卒業後も生涯にわたる自己学修を求められる.しかし,従来型の講義を受身的に聞く学修は自己学修能力の育成に有効ではない.そこで,本学ではより能動的な学修方法を導入している.

 本学のカリキュラムでは,必修専門科目は28科目56単位で構成されているが,このうち講義科目として設定されているのは,5科目5単位のみである.それ以外の科目は,実習または演習科目である.特に,筋骨格障害理学療法学,神経障害理学療法学などの臨床理学療法学の科目では,問題基盤型学修(problem based learning:PBL)あるいはチーム基盤型学修(team based learning:TBL)を積極的に取り入れている.PBL,TBLは,学生が小グループで討議を行う演習を中心に進められる.グループ学修の過程で自己学修習慣を形成し,さらに医療専門職に必須のコミュニケーション能力を向上させることもねらいの1つである.

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建学の目的

 専門学校社会医学技術学院(以下,本学)は,1973年当時,意志と意欲をもちながらも昼間の養成校に通うことができない人のために,夜間のコースで理学療法の学びの場を提供することを目的に開校された(表).私立の養成校がまだ数校しかなかった時代で,初めての夜間の学校だった.

 創立者である下河辺征平(医師),渡辺昭二(理学療法士)両氏の,授業料は抑えても可能な限り質の高い教育をとの思いは,一般財団法人の運営となった今も引き継がれ,学生にできるだけ勉強する機会と場所を提供しようと心がけている.骨標本や筋肉の模型,検査測定用具は,申請すればいつでも無料で貸し出し,学生たちが空き時間に自主的に勉強できるよう取り計らっている.昼間部でも社会人経験者が20%ほど在籍しているため,彼らの真摯な取り組み方は若い学生のよい見本になり,このような学生同士の交流を促すことが,学生たちの精神的成長を促すことにつながっていると感じている.

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沿革

 わが国で理学療法士および作業療法士の専門教育機関として国立病院・療養所附属のリハビリテーション学院が1963年に国立療養所東京病院に開校されたのを皮切りに,東名古屋病院附属リハビリテーション学院(以下,本学院)は1979年に東海地方として初めて国立療養所東名古屋病院に開設された.国立病院・療養所には1982年までに9校が設置されたが,2004年に独立行政法人へ移行したことにより閉校が相次ぎ,現在は国立病院機構(National Hospital Organization:NHO)に唯一の養成施設である.

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本校の特徴(表1)

 中部リハビリテーション専門学校(以下,本校)は,1982年「医療法人珪山会」によって設立され,2014年には「学校法人珪山学園」に移管された.建学の理念は「自立・健全」である.

8.建学の理念『人格尊重』 田中 良
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「公私協力方式」による学校運営

 徳島医療福祉専門学校(以下,本校)では,その運営の形態を「公私協力方式」とよんでいる.本校は,徳島県,徳島県医師会,勝浦町などの協力を得て1993年に開校した.開校以前の勝浦町は,徳島県の山間部に位置する過疎化が進む町だったが,現在は学生が往来する活気ある町へと姿を変えている.地域の行事への積極的参加はもとより,学校防災計画の策定においても,徳島県経営戦略部総務課,勝浦町企画総務課,地域自主防災組織など地域の関係機関と密接に連携している.

 学生の約4分の1が自動車通学かバイク通学である.また寮生のほとんどは自動車かバイクを所有している.当然のことながら交通事故の危険に対処する必要に迫られる.日ごろから安全運転の啓発に努めているほか,所轄の小松島警察署と連携し,年1回,警察官による交通講話を実施している.

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本学の特徴

 東京都内で同一法人に大学と専門学校をもち,大学が東京都多摩市にあり,専門学校が東京都中央区にある.大学と専門学校間の移動に2時間程度を要するため相互交流の頻度は少ないが,スポーツイベントや大学祭での学生交流と,授業での教員交流は行われている(表).

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本専攻の特徴

 長崎大学医学部保健学科理学療法学専攻(以下,本専攻)は,前身である医療技術短期大学部から2001年10月に改組・開設され,定員は18名である.本専攻では,保健学科の教育理念である「生命や人間の尊厳に基づく心豊かな教養を備え,広く社会に貢献できる資質の高い医療専門職の育成」を踏まえ,特に障害科学・理学療法治療技術学の修得,科学的根拠に基づいた思考能力の育成,チーム医療に貢献できる人材の育成をめざしている(表1).

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 養成校2年目の後期試験の再試験も無事(合格)終了し,実家への帰省のための学割をもらいに学生課を訪れたときのことである.私が入室するなり女性職員が「塩塚君,何教科?」と尋ねてきた.一瞬,「何のこと?」と思いながらも再試験の手続きのこととすぐに理解した.「もう終わっています」,「今日は学割をいただきに来ました」と不機嫌な顔で答えた.私が学生課を訪れるときは,決まって再試験の手続きと支払いであったためにこのような誤解を与えたと思う.こんなに誤解されるほどに再試験を受けてきた自分が少し情けなくなった.

 国家試験も無事に「ギリギリ?」で合格して,理学療法士になって今年で35年目を迎えた.就職は山梨県内の病院に5年,そして6年目から地元の現病院で勤務している.1990年代のいわゆる“リハビリバブル”の時代があり,現在の疾患別リハビリテーションに変更され,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のそれぞれの専門性が従来と比べてなくなってしまった.一人あたりの収益も大幅に減収となったが,2000年の介護保険施行や回復期リハビリテーションが創設され各療法士の受け皿は大きくなり,筆者卒業時の3,000名程度から現在は約13,000人もの理学療法士が働いている.前述の“リハビリバブル”の時代と同じように一人の理学療法士あたりの収益をあてはめれば医療費に占めるリハビリテーション料は大きく増額されているわけであり,国としてもそれを抑制する方向に診療報酬を改定することは当然であろう.新人であろうが経験30年であろうが単価は同じである.しかし,養成校の急増とともに現在は1学年定員数13,000人といわれ,国家試験により毎年約10,000人が資格を取得している.近年,各方面より「新人理学療法士の質の低下」の声がある.入学定員数増,大学と専門学校との学生の質の格差,臨床実習の問題には実習自体の質の問題と時間数の減少などがあるが,一番大きいのは実習指導者(教育者の質の低下)にあると思う.

甃のうへ・第39回

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 「理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください」.入試の面接官のときは明確な志望理由を求めている.「ケガをして担当の理学療法士が親身に…」,「身内が病気になりリハビリテーションを受けて…」,面接でよく聞かれる常套句である.しかし,自分はどうかというと「地元の大学に学科ができていいらしい…」と親に勧められたのが最初のきっかけである.他にも理由はあったが,とりあえず合格したので入学した.不合格なら浪人して,別の大学を受けようと思っていたので今の学生たちに威張れたものではない.

 部活にアルバイトと楽しい学生生活と,大変な臨床実習を終え卒業し,病院に勤めた.その後結婚,夫の転勤話が出るころに父を亡くした.AIR DOや北海道新幹線がなかった当時,北海道の人間にとって本州は海の向こうの内地,日常的に行き来する場所ではない感覚があり,母を残すのはつらかったが,結局転勤についていった.就職した職場には大学院で学ぶ同僚が多く,自然と進学することになった.院生時代はライフイベントが多く,2人産み1人亡くし,また転勤・転職…体力もお金も時間もかかったが,学位を取得できた.面談で妊娠を伝えたところ驚きながらも辛抱強く指導してくださった恩師,支えてくれた家族に恵まれたためと思う.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

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 Neuropsychiatric inventory(NPI)は,1994年にCummingsら1)によって開発された認知症者における精神神経症状の代表的な評価指標であり,信頼性と妥当性が検証され,精神疾患やパーキンソン病などのほかの神経疾患者における精神神経症状の評価にも用いられている.

 原典のNPI1)は,患者または被介護者の主介護者に対してインタビュー形式にて実施される評価で,認知症者に認められやすい10項目(妄想,幻覚,興奮,うつ,不安,多幸,無為,脱抑制,易刺激性,異常行動)の精神神経症状の設問によって構成される.設問10項目に睡眠異常と食行動異常の設問2項目を加えた合計12項目版のNPI2)も報告され,目的に応じて使い分けられているが,より一貫性のある結果とより一義的な解釈を得るために10項目版のNPIの使用を推奨している報告もある3)

1ページ講座 理学療法関連審議会・協議会

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■はじめに

 全国リハビリテーション医療関連団体協議会(以下,協議会)は,2013年1月21日に,わが国のリハビリテーション医療の発展と国民の保健・医療・福祉の向上に明確な形で寄与するとともに,結束して積極的な政策提言などを行うことを目的に設立されました.協議会は,リハビリテーション医療に関連する10団体で構成され(表1),定期的に構成団体の代表者が集まっています.現在,協議会の代表はリハビリテーション病院・施設協会の栗原正紀会長が務めています.

入門講座 症例を担当するということ・6

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はじめに

 診療情報の共有と二次活用は,チーム医療を推進するうえで重要な課題の1つである.診療録や診療に関する諸記録が電子化したことで,情報共有手段は進歩し続けている.一方,個人情報保護,守秘義務などの観点から,診療情報の扱いには細心の注意を払う必要がある.本稿では,理学療法士の立場で診療情報に関する法律や規定の理解を深めるとともに,医療の安全性と質の向上に役立つ記録と報告のスキルを紹介する.

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はじめに

 近年の幹細胞研究の進歩はめざましく,胚性幹細胞,組織幹細胞,造血幹細胞などのほか,昨今京都大学のグループによって線維芽細胞に数種類の遺伝子を導入し,胚性幹細胞に類似した万能性を有する人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS)が世界で初めて創出された1).しかし,胚性幹細胞やiPS細胞のような万能細胞の臨床応用には倫理性,安全性など検証しなければならない点が多数存在する.

 一方,比較的,倫理的問題の少ない体性幹細胞移植は既にいろいろな疾患に対して臨床研究が開始され,一定の成果を出しつつある.

 そこで今回,体性幹細胞源(ソース)として用いられているなかでも皮下脂肪組織由来の細胞群(adipose-derived regenerative cells:ADRCs)に注目し,この細胞を用いた循環器領域に対する臨床応用の可能性について報告する.

 また本稿では,心疾患のリハビリテーションの現状と再生医療との関連についても概説したい.

臨床実習サブノート 臨床実習のリスク 地雷を踏むな!・3

心不全 笹沼 直樹
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疾病・障害の医学的リスク

 心不全はその発症経過や病態により急性・慢性心不全,右心・左心不全,収縮・拡張不全などに分類される.それぞれの経過や病態により注意すべきポイントや病態増悪に関与するリスク要因が異なるため,経過や心不全の原疾患を正確に理解しておく必要がある.

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要旨 [目的]人工股関節全置換術例の自覚的脚長差に対する補高が,下肢荷重率の均等化に有用か否かを明らかにすること.[方法]術後2週の段階で5mm以上の自覚的脚長差を有する人工股関節全置換術例28例を対象とした.研究デザインはランダム化クロスオーバーデザインとし,先に補高挿入条件・後に補高非挿入条件で術側下肢荷重率の測定を行うA群14例と,先に補高非挿入条件・後に補高挿入条件で荷重率の測定を行うB群14例に,無作為に割り付けた.補高非挿入条件・補高挿入条件の2条件で,快適立位姿勢における30秒間の術側下肢荷重率を測定した.補高挿入条件では自覚的脚長差に合わせて非術側足底へ補高を挿入した.[結果]荷重率はA群で補高非挿入条件42.9±5.0%,補高挿入条件47.1±3.0%,B群で補高非挿入条件45.1±5.2%,補高挿入条件48.2±4.1%であった.分割プロットデザインによる分散分析の結果,交互作用および先行条件による主効果はなく,補高の有無による主効果のみが有意であった(p<0.01).[結論]自覚的脚長差に対する補高の使用は,荷重率の均等化に有用であることが明らかとなった.

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次号予告

文献抄録

編集後記 内山 靖
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 第50巻第8号をお届けします.

 わが国は,超高齢・少子社会を迎えるにあたり,社会保障制度のみならず,国民の働き方や居住地域での過ごし方などにも見直しを迫られています.情報通信技術の発達に伴い,国際化やグローバル化も進展し,“新しいものに素早く適応する”という能力がこれまで以上に生きる力として重要になっています.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
50巻8号 (2016年8月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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