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はじめに
1.大学教育
大学教育では「教育基本法」が根幹にある.教育基本法の第7条において,「大学は,学術の中心として,高い教養と専門的能力を培うとともに,深く真理を探究して新たな知見を創造し,これらの成果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与するものとする」と定められている.また,学校教育法第83条においては,「大学は,学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を教授研究し,知的,道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」,「大学は,その目的を実現するための教育研究を行い,その成果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与するものとする」と定められている.
2.理学療法学教育
理学療法士を養成するための教育基準は,「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」によって定められている.この規則では専任教員数や教員資格,教育環境(実習・演習室の広さ,設備,備品,臨床実習施設など),教育内容(カリキュラムと領域ごとの単位数)などが示されている.専任の理学療法士教員数は一学年の学生定員数に応じて定められており,一学年の学生数が40名以下の場合は6名以上,80名の場合は9名以上,120名の場合は12名以上となっている.また,理学療法士国家試験を受験するための就業年限は3年以上であり,教育内容として,基礎分野14単位,専門基礎分野26単位,専門分野35単位,臨床実習18単位の最低93単位が必要と定められている.
2015年4月1日から理学療法士養成施設の指定・監督権限が厚生労働大臣から都道府県知事に移譲され,「理学療法士作業療法士養成施設指導要領について(平成11年3月31日健政発第379号)」が廃止され,「理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインについて(平成27年3月31日,医政発0331第28号)」が制定されている.ここでは,専任教員の1週間あたりの標準授業時間数を10時間とすることや,各科目の単位算定方法,養成施設として必要な設備や備品の詳細が示されている.
3.理学療法学教育の変遷
理学療法学教育の変遷をみると,1963年に日本で初めて理学療法士養成施設(国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院)が開校された後,1979年に文部省管轄である金沢大学に3年制の短期大学部(医療技術短期大学部理学療法学科)が開設され,1992年には4年制大学として初めて広島大学に理学療法士養成コース(医学部保健学科)が開設されている.このような背景のなか,理学療法士養成施設としての専門学校,短期大学,大学が数多く設置され,1999年頃から急速に理学療法士養成施設が増加し,1999年に4,000名弱だった入学定員数は2008年には約13,000名に達している.その後もさらに少しずつ入学定員が増え,2016年5月時点で13,635名になっている1).
4.本稿の目的
理学療法学の教育体系が3年制または4年制の専門学校,3年制の短期大学,4年制の大学と多岐にわたる状況が続くなか,理学療法学に関連した大学院も増え,教育内容も多岐にわたるようになってきた.そのようななか,2014年9月1日付で,全国大学理学療法学教育学会は日本理学療法士協会から「大学院における理学療法教育の課題と将来展望」にかかわる調査業務の委託を受け,2015年3月末日に答申書が提出されている2).本稿では,この答申書(全数調査)の概要を紹介するとともに,大学における理学療法学教育の現状と課題について考えてみたい.
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