甃のうへ・第39回
ライフイベントの流れに逆らわず…
田邊 素子
1
1東北福祉大学健康科学部リハビリテーション学科
pp.772
発行日 2016年8月15日
Published Date 2016/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200638
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「理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください」.入試の面接官のときは明確な志望理由を求めている.「ケガをして担当の理学療法士が親身に…」,「身内が病気になりリハビリテーションを受けて…」,面接でよく聞かれる常套句である.しかし,自分はどうかというと「地元の大学に学科ができていいらしい…」と親に勧められたのが最初のきっかけである.他にも理由はあったが,とりあえず合格したので入学した.不合格なら浪人して,別の大学を受けようと思っていたので今の学生たちに威張れたものではない.
部活にアルバイトと楽しい学生生活と,大変な臨床実習を終え卒業し,病院に勤めた.その後結婚,夫の転勤話が出るころに父を亡くした.AIR DOや北海道新幹線がなかった当時,北海道の人間にとって本州は海の向こうの内地,日常的に行き来する場所ではない感覚があり,母を残すのはつらかったが,結局転勤についていった.就職した職場には大学院で学ぶ同僚が多く,自然と進学することになった.院生時代はライフイベントが多く,2人産み1人亡くし,また転勤・転職…体力もお金も時間もかかったが,学位を取得できた.面談で妊娠を伝えたところ驚きながらも辛抱強く指導してくださった恩師,支えてくれた家族に恵まれたためと思う.
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