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はじめに
一般にわが国で「高等教育機関」といえば,大学や短期大学,高等専門学校を指すケースが多いが,広義の意味では,専門学校(専修学校専門課程)を含めて使っている.周知のように義務教育後の高等学校への進学率は98%を超えており,2015年度の大学進学率(過年度卒業者含む)は51.5%(平成27年度学校基本調査)1)で,今日では高等学校卒業者の半数が4年制大学に進学する時代になっている.
戦前は50校に満たず,1949年の新制大学発足当時には200校程度だった大学数も,現在は700校を超えている.2015年度の「全国大学一覧」では,国立は86校,公立も86校,私立が603校,計775校となっている.
特に1991年の大学設置基準の大綱化(設置基準の緩和策)以降,1990年代から,私立大学を中心に大学数が急増していくことになるが,逆に短期大学への進学率は1990年代半ばを境に低下し,女子の4年制大学志向の高まりとともに,多くの短期大学が4年制大学(または学部や学科)への改組転換を図って,短期大学数は減少していく.ちょうど医療系の分野でいえば,それまで国立大学に併設されていた医療技術短期大学部が次々と医学部の保健学科などへと改組されていった時期と重なっている.
1990年代は,第2次ベビーブーム後の急速な18歳人口の減少期を想定し,大学設置については,国は原則抑制する対応策をとったが,実際は大学の大幅な拡張期であった.前述した短期大学からの4年制大学化が相次ぐとともに,地方自治体が運営する公立大学も次々と設置されていった.新設の大学設置については,地域での配置バランスが重視され,公立大学以外にも,校地の無償提供など地方自治体との連携や協力で地方にも新しい私立大学や既存の大学の新学部などが設置された.いわゆる地方での公私協力方式による大学設置である.学部学科の分野としては,国の政策と絡んで,原則抑制の例外の対象分野となった社会福祉系や看護・医療系の人材養成を目的とした学部学科,情報系や国際系の学部学科の設置が目立っている.
ちなみに1990年度の大学数は508校(国立96,公立39,私立372,放送大学1)だったものが,2000年度では大学数が651校へ増加し,2010年には758校へと増加している.増加の大半が私立大学である.しかし,一方の18歳人口は1992年の約205万人をピークに急減し,2000年は151万人,2010年は122万人と減少していき,2016年は119万人となっている.
そして今日,地方の私立大学を中心に定員割れが深刻化し,国立大学,公立大学も含めた大学の統廃合の必要性が叫ばれるようになっている.一方で,この大学の量的拡張は,入学希望者の全入時代の到来が喧伝され,入試の多様化とともに大学入学者の基礎学力の問題が顕在化し,入学後の学力の質の維持,向上に向けた取り組みが,キャリア教育のあり方とともに各大学の大きな課題になっている.
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