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養成校2年目の後期試験の再試験も無事(合格)終了し,実家への帰省のための学割をもらいに学生課を訪れたときのことである.私が入室するなり女性職員が「塩塚君,何教科?」と尋ねてきた.一瞬,「何のこと?」と思いながらも再試験の手続きのこととすぐに理解した.「もう終わっています」,「今日は学割をいただきに来ました」と不機嫌な顔で答えた.私が学生課を訪れるときは,決まって再試験の手続きと支払いであったためにこのような誤解を与えたと思う.こんなに誤解されるほどに再試験を受けてきた自分が少し情けなくなった.
国家試験も無事に「ギリギリ?」で合格して,理学療法士になって今年で35年目を迎えた.就職は山梨県内の病院に5年,そして6年目から地元の現病院で勤務している.1990年代のいわゆる“リハビリバブル”の時代があり,現在の疾患別リハビリテーションに変更され,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のそれぞれの専門性が従来と比べてなくなってしまった.一人あたりの収益も大幅に減収となったが,2000年の介護保険施行や回復期リハビリテーションが創設され各療法士の受け皿は大きくなり,筆者卒業時の3,000名程度から現在は約13,000人もの理学療法士が働いている.前述の“リハビリバブル”の時代と同じように一人の理学療法士あたりの収益をあてはめれば医療費に占めるリハビリテーション料は大きく増額されているわけであり,国としてもそれを抑制する方向に診療報酬を改定することは当然であろう.新人であろうが経験30年であろうが単価は同じである.しかし,養成校の急増とともに現在は1学年定員数13,000人といわれ,国家試験により毎年約10,000人が資格を取得している.近年,各方面より「新人理学療法士の質の低下」の声がある.入学定員数増,大学と専門学校との学生の質の格差,臨床実習の問題には実習自体の質の問題と時間数の減少などがあるが,一番大きいのは実習指導者(教育者の質の低下)にあると思う.
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